現場からの発言〈正論・異論〉
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老人医療NEWS第91号 |
札幌市療養病床協会主催・北海道病院協会後援
「市民公開シンポジウム」
これからの療養病床の行方〜入院患者ご家族の声をもとに考える〜の報告と、その際実施したアンケート報告
療養病床はまさに大変な時期に遭遇している。ご存知のように療養病床は従来の三十八万床(医療療養病床二十五万床、介護療養病床一五万床)を五年後には一五万床に削減することを国は提案している。病院もとても厳しいが病院に入院している患者様ご家族が一体どういう思いをしているのだろうか、その実情を調査し、それをもとにして二〇〇七年四月二十一日に札幌市で市民公開シンポジウムを行った。
当日は市民を含めて三〇〇名以上の方が集まり、まさに熱気あふれるシンポジウムとなった(会場は二八〇名で満杯)。京都からもご多忙の中、財団法人仁風会理事長 清水紘先生にもご参加いただいた。ご協力いただいた皆様に感謝したい。
その内容は、四月二十二日の北海道新聞が一面に大きく掲載してくれたし、最近発行された六月号のbestNurse(北海道の看護雑誌)にも、アンケート結果とシンポジウムの内容が詳細に掲載されている。また、結果は小冊子にし、国、北海道、札幌市の行政や医師会関係者にもできるだけ送付した。
札幌市療養病床協会は病院四十二施設、有床診療所八施設が加入している。アンケートは療養病床を多く持つ一五の病院の協力を得て二〇〇七年一月に行われた。アンケート配布数四一四〇入院患者ご家族(医療療養、介護療養を含む)であり、回収数は二七四三(回収率六十六.三%)と予想以上に高いものであった。また、ご意見欄には二七四三名中一〇五一名(三十八%)の方が記載してくれた。
アンケートの統計の部分の一部を紹介したい。「療養病床が削減されることについて」は、「反対する」が九十四.三%と大半であった。また、「療養病床が削減された場合、どの施設への入所を希望されますか(複数回答)」では、介護老人保健施設四十七.二%、介護老人福祉施設三十八.二%が多く「自宅に帰る」はわずか二.二%であった。このことは「現在の病状、状態でご自宅での介護は可能ですか」、という設問には「不可能である」が九十四.五%に達していた、ことでも示されていた。
私は一〇五一名からのご意見を数回読ませていただいた。まとめると
@介護療養病床の廃止、療養病床削減に驚きと怒りをもたれているご意見が非常に多かった。
A在宅に帰ることはほとんどのご家族が困難と述べている。その理由として(複数回答)*容態が変化した時に対応できない(六十五%)。*自宅の設備に不安(四十五%)。*自分も高齢(三十八%)。*自分も病弱(二十九%)。等が多かった。
B老人保健施設に転換するにしても、医療が十分サポートしてくれる体制を強く望んでいた。医療のサポートの少ない施設は非常に不安である、と多くの方が述べていた。
C国は高齢者に対する政策、態度を根本的に変えてもらいたい、という意見や、今回の介護療養病床廃止、療養病床削減は高齢者や障害を持つ者への軽視である、と言う怒りの意見も少なくなかった。 (19/7)