巻頭言
|
老人医療NEWS第90号 |
医療制度を巡る改革案が毎日のように紙面を賑わし、毎年の報酬改変も常態化しつつある。日本リハビリテーション病院・施設協会では、臨床の立場から制度や報酬改定への提案を続けてきたところであるが、その提案が場当たり的で長期の展望に沿ったものになっていなかったのではないかとの反省があった。平成十八年度の改定で、その感を強く持ったため、日本リハビリテーション病院・施設協会は基本的なリハビリテーション(以下、リハ)の展望づくりを行っている。最終案には至っていないがその骨子を紹介したい。
一.医療の新たなパラダイムが必要ではないか
これまでの医療は、急性疾患の診断と治療、専門医による臓器別治療が基本となっていたと考えられる。高齢者の増加等により、疾病とともに障害や生活にも配慮した医療と、慢性化状態にも専門的で適切な対応ができるサービスが求められることとなった。
これからは、疾病と障害と生活に、多くの職種からなるチームで、継続して効率的に対応するいわば慢性期医療モデルの確立と従来の医療モデルとの融合が期待される。
二.リハ医療のサービス内容
上記で述べた医療におけるリハであるが、リハほどさまざまな理解や実践が存在する分野はない。麻痺などの身体機能の回復に限定する考えもあれば、レクリエーション・スポーツ的なものまでも含める理解もある。慢性期で障害の回復が期待できないことは了解しても、リハの支えがないと障害の増悪も明確であり、慢性期のリハを含めるとその概要は多種多様となってゆく。そこで、リハ医療サービスの方法として、@機能回復アプローチ、A代償的アプローチ、B予防的アプローチ、C機能維持アプローチの四カテゴリーに整理することを提案している。
三.急性期・回復期リハ、維持期リハについて
急性期・回復期のリハは課題も明確である。しかし、圧倒的な対象者がいる維持期リハは介護保険の範疇にあって報酬等が絡み、従事するリハ専門職も少なく、体制や援助方法にも課題が山積みしている。
療養病床では障害の重いグループへのリハとケアのあり方が、老健では短期集中リハの質が課題となる。最も大きな課題は、在宅生活を支えるリハのあり方である。今回、診療所等が核となり、通所リハ、訪問リハ(訪問リハステーションも検討課題)、訪問看護などの機能を備え、サービスをコントロールしながら、チームで、二十四時間三六五日の生活を支える「在宅リハセンター」構想を提案している。
四.地域リハ支援体制について
障害を抱えて生きることを、保険サービスのみで支えきることは不可能である。地域住民からの支援を含め、地域全体の理解や支援システムの構築なくして医療サービスとしてのリハも生きてこない。そのような意味で、これからは、地域リハ体制づくりが正念場を迎える。 (19/5)