こぼれ話

老人医療NEWS第83号

養護ホームでも介護保険が使えます
鳴門山上病院理事長 山上久

今回の改定で養護ホームについてもかなりの改定が行われる。今までは養護ホームで介護が必要となった場合、措置として施設で対応していたが、今回の改定で養護ホームでも入所者の介護ニーズには介護保険サービスで対応することとなった。

養護ホームは措置で入所する施設であることに替わりないが、居室については一〇・六五平米以上の個室での処遇が基本となる。職員の名称も生活指導員が生活相談員、介護職員が支援員に変更されることもあり、養護ホームでも介護は介護保険で提供するものという位置づけが強化されることとなった。

要介護、要支援の認定を受けた入所者の介護サービスの利用の仕方としては、@個人契約型で運用する施設では入所者が個々の居宅サービス事業所と契約し、介護保険サービス等を受けるかたちとなる。このときの自己負担について低所得者へは措置費の上乗せが行われる方向である。A養護ホームが特定施設型として「外部サービス利用型特定施設」の指定を受けている場合は、ホームが入所者と契約し、外部の事業者にサービス提供を委託する方法もある。この経費等に対しては、介護保険から特定施設費が支払われるが、逆に相談員がケアハウスと同様に一人減となる。

平成十八年九月三十日までは経過措置もあり、それを含めると下の図のようになる。

これは、以前この紙面でも述べた様に養護ホームは「措置費で入所できるケアハウス」であるともいえる。全国の半数近くの養護ホームが老朽化の進んだ公設公営の施設で、国は行政改革の一環として、養護ホームの民間移管を全国で推進しており、徳島県内でも当法人の施設以外に二カ所が民間移管された。以前に比べ補助金等は減少したが融資制度等もあり、地域に根ざしたケアシステムの一つとして考慮されてはどうだろうか。

私どもはこの一年、市から民間移管を受けて、全室十四平米以上のトイレ付き個室ユニットケア型の六十床の養護ホームを運営してきたが、ケアハウスと同様なアメニティの提供でADLの改善やQOLの向上が明らかに見られた。一番基本的なプライバシーである排泄のため全室にトイレを設置した。多人室で排泄自立の出来なかった方々が個室内では下着のままトイレ利用が可能になり、自尊心・意欲も上昇、ADL全般も改善され、排泄自立の重要性を再認識した。

今回の長期療養制度の大変革もあり、この六年以内に本体の病院や介護老人保健施設の改築、システムの再編に迫られている。その際、設計にはこの養護ホームでの経験や将来の療養病床の転換を考慮し、居住生活スペースの基本は個室ユニットケアで、病棟の特性に応じ、医療設備、トイレなどの水回り、そして出来るだけフロア単位での浴室や訓練室の配置などを考えたい。(18/3)

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