現場からの発言〈正論・異論〉
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老人医療NEWS第83号 |
制度に振回されずに老人の専門医療を考えたい
が、しかし・・・
介護保険制度ができたおり、六対一、三対一看護・介護基準は否定され、六対一、四対一になった経緯がある。六対一、五対一も六対一、六対一もあるが、おそらくほとんどの会員病院は、六対一、四対一以上の人員配置をして、よりよい老人医療を実行しているであろう。
当院においてもしかり、約六対一、三・五対一の配置をしている。それでもインシデント・アクシデントケースはあり、たとえ注意を払っても払っても転落、転倒、車椅子や便座からのずり落ち、食物誤嚥などは、一瞬のうちにおこる。介護保険制度上は行政に事故報告が必要であり、ご家族への連絡・説明、報告書の作成なども人員配置の如何に関わらず必要なことである。たとえ、これらの煩わしさはあるにせよ、どうすれば安全で満足してもらえるケアが提供できるのかと日夜、努力している。
今回、経過型は八対一、四対一にするという。これは一見、医師・看護師を減らしても介護スタッフを手厚くすれば、サービスは低下しないという理屈だろうが、ただ単に三対一看護・介護の数合わせの理論で、安全、安心が保てるのだろうか。まさか、サービスが低下したところをねらって、またぞろ介護報酬を減額しようという、浅ましい魂胆ではあるまい。もしもそうなれば、現場は次第に働く意欲をなくし、ひいては一段とサービスの低下につながるという悪循環に陥りはしないかと危惧される。
その上、医師や看護師が得られにくいところ、介護スタッフが得られにくいところなど、地域差は依然として存在し、世間の景気がよくなると介護職が他の産業に流れやすいなどの社会的因子もわれわれにとっては厳しい条件の一つである。
ことさらの問題は、老人の専門医療を考える会に入会して老人病院機能評価の高いレベルをめざしたり、日本医療機能評価機構の認定を受けたり、ISOの取得を努力したりすることと、国の制度の方向とは相反していることだ。ひたすら最低の人員配置基準で経済効率のみを追及するほうが経営リスクを回避できる仕組みは、どう考えても間違っている。
以前、学者先生達は、老人あるいは利用者の立場に立って良いサービスを提供することこそ経営の原点であると力説された。良心ある経営者達はそれに賛同してこれまで努力を重ねてきたが、結局は机上の空論に踊らされていたに過ぎなかったのだろうか。
なにはともあれ、困難な諸問題を抱えながら新制度がスタートする。それぞれの地域で、各介護施設・医療機関が果たすべき役割をしっかりと把握した上での対応をしなければ、地域社会における存続が危ぶまれる時代が到来した。
「えらいやっちゃ、えらいやっちゃ、よい、よい、よい、よい。踊るアホウに踊らせるアホウ、同じアホなら踊ったらソンソン」
ここは一つ、無為に踊らずに、たとえ老人の居場所はどこであれ、これからも老人のためになる老人医療を考え続けていきたい。もっとも尊敬する恩師がいつも言っていた「病人を食い物にするな。老人を泣かせるな」という教えを忘れずに。(18/3)