アンテナ

老人医療NEWS第82号

本当に介護療養は不要なのか

平成十八年四月の介護報酬改定は、マイナス〇・五%、十月改定分を含めてマイナス二・四%と公表されている。介護療養については、今回公表の介護報酬の議論以前に、平成二十四年度で廃止、それまでに老健施設や有料老人ホーム、あるいはケアハウスなどの居住系か在宅に転換させるという大方針がある。また、転換するまでの経過型の報酬は公表されていない。さらに、医療保険の療養病床についても、同様に未公表の段階である。

昨年十月改定があまりにもドラスティックで経営的な影響が大きかったが、介護療養の廃止は事業継続の危機である。

医療療養と介護療養双方から医療必要性が高い入院患者を医療保険適用に移行し、逆に医療必要性が低い入院患者は、一旦介護療養病床に移行し、その後、転換か廃止に追い込もうとしている。

現行の療養病床は、入院患者一〇〇人当たり医師三人、これに医療療養で看護職が患者一〇〇人に二〇人に加え、介護職も二〇人、介護療養では看護及び介護とも十七人が最低基準である。

再編成では、まず医療療養が看護及び介護とも二十五人で、入院患者一〇〇人に対して合計五〇人の看護介護職員となる。また、医療必要度が低いとされる経過型介護療養型医療施設については、医師を二人とし、看護を十三人、介護を二十五人とする案が示されている。

このようなラジカルな案を、無理矢理実行するとは、とうてい考えられないが、そこはそれで厚労省は開始時期を遅らせ、各種の激減緩和措置や提案の一部修正により、転換を推し進めるというマジックショーをみせるのであろう。

それにしても、わが療養病床をみるにつけ「この病床がはたして不要なのか」と自問自答し続けるしかないありさまだ。廊下幅も二・七メートル以上もある。もちろん四人部屋でも一床当たり八平方メートル以上あり、平均要介護度は四・二である。急性肺炎も骨折の術後の患者様も、特養や老健施設あるいは急性期病院からの転院も随時引き受けている。昨今は一度断れば紹介患者が激減する。毎日の回診、懸命の看護、機能低下しないためのリハビリテーションも実施している。自分で言うのも何だが、地域の人々から当てにされ、評判も決して悪くない。

老健施設も併設しているが、どう考えても、この病床は病院で、老健施設でいいとは思えない。

ただ「介護療養は他の施設と比較した場合、平均的な療養環境で見劣りする施設が少なくなかったことと、ケアの面でも賞賛されることもなく、特に、介護保険制度創設後の五年間において目に見える改善がなされていないという印象があり、なにしろイメージが悪い」と酷評されると、そんなものかと、反論する元気もでない。

おまけに、医療報酬における慢性期入院医療の評価については、特殊疾患入院施設管理料や超重症児、日常生活障害および認知症加算などを包括化し、医療必要性区分とADL区分による評価を導入するそうだが、本当に実態を反映できる科学的方法論なのか、納得できない。

このような散発的情報しかないが、日本中の療養病床が、一夜にして不安のどん底に突き落とされたのではないかと思う。それにしても、療養病床について議論している人々は、一〇〇とは言わないが五〇病院ぐらいは訪問していただいているのであろうか。とても疑問だ。長年、老人の専門医療を追求してきたわれわれの病院が、不要というのであれば、われわれの存在意義はない。 (18/1)
前号へ ×閉じる
老人の専門医療を考える会 JAPAN ASSOCIATION FOR IMPROVING GERIATRIC MEDICINE