こぼれ話
老人医療NEWS第80号
頭の痛い話
ナカムラ病院理事長 中村英雄

本欄への執筆を仰せつかり何を書こうかと考えた挙句、利用者の皆さんに忌憚のない御意見を戴く御意見箱を題材にしようと考えた。

当院では平成三年六月から御意見箱を設置しており、いただいた御意見に当方の回答を付して、各病棟を始め院内に設置した掲示板に貼って公開している。

まずはそのQ&Aを過去にさかのぼってみてみようとしたが、あいにく、平成十三年六月以降のものしか残っていなかった。

そこでふと思い出したのが、平成七年八月に札幌市で行われた第三回介護力強化病院全国研究会において、当時の相談室のスタッフが発表した「御意見箱」である。

当時の発表原稿をみると、平成三年六月から平成七年八月までの五年三ヶ月の間に頂戴した御意見の分析であり、現存するものと奇しくもその期間が同じであったので、六年の歳月を隔ての意見内容・意見数の比較をすることとした。

意見内容による分類は前回調査に従い、クレーム・要望等については「看護・介護」、「食事」、「接遇」、「環境」、「利便性」、「その他」とした。

また暖かい評価や支援、励ましは適切な表現とは思わないが前回同様「感謝」とした。

前回調査時の病床数は二七〇床から三一〇床であった。今回は四一〇床と入院患者数が多くなっているのだが、意見総数は少なくなっている。

「看護・介護」は医療も含むが特に深刻なものはなく、件数は比率にすれば前回と殆んど変わらない。

「食事」は大幅に減少している。以前から同じ業者に委託しているが、給食委員会など、協調した対応が功を奏しているのであろう。

「接遇」は半減している。

「環境」は前回と今回の間に病棟の殆んどを新築したのだが前回より増えている。

においについてが五件、空調の寒い、暑いが三件、飾ってある花が枯れているが三件、(全館禁煙にしているが)便所でにおいがしたなど煙草に関して三件、感染症対策に関してが二件となっている。

「利便性」は院内表示が判りづらいなどだが大幅に減、「その他」に関しては入院生活における個別的要望や、記入した面会票を個人情報保護法の観点からきちんと処理するように等、大幅に増えている.

もっともこれらの増減については前回との間に分類の基準におけるズレがあるかもしれない。

ともあれクレーム・要望等は前回よりも減り、「感謝」は増加という結果を得た。

ところが本年十月から介護保険病棟において居住費・食費として利用者負担が大幅に増加する。

その分クレーム・要望が増加することも考えられ、減収と共のダブルパンチとなりかねない。

頭の痛いことである。

クレーム・要望等
感謝
看護・介護
食事
接遇
環境
利便性
その他
小計
平成3年6月から平成7年8月まで
21
29
18
17
21
5
111
22
133
平成13年6月から平成17年8月まで
14
5
6
20
4
21
70
39
109

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