現場からの発言〈正論・異論〉
老人医療NEWS第80号
サービス委員会の取り組み
旭川三愛病院院長 豊泉武男

今年五月二日、北海道新聞の「介護に想う」というコーナーに二つの投書が掲載されており、その記事の切り抜きが院内に設置している、ご意見箱(投書箱)に入っていました。

恐らく当院を利用されているご家族かどなたかが、この記事を職員に読んでもらいたいとの想いで投函したのではないかと推測しております。

一例目は、老健の認知症棟に短期入所で利用した母親を迎えに行った時、担当看護師から自宅にいるときの母からは全く想像できない問題行動があったとの説明で衝撃を受け、さらに、その後の施設利用はやんわりと拒否され切ない気持ちになった。すぐケアマネジャーに相談して他の施設を利用したところ、そのような問題行動もなく今では満足している。母にも問題はあったと思うが、前の施設側に非は全くなかったのか。看護介護のプロである施設職員は高い知識や技術を持っているのではないか。家族や利用者に不安や悩み、苦しみを与えない介護を強く望みたい、という内容でした。

二例目は、ホームヘルパー利用者からの投書で、ベッドから車椅子に移動するとき、ヘルパーはズボンの後ろ側を下着ごと持ち上げるので局所に食い込む。介護する側にとっては腰を痛めない楽な介護方法かもしれないが利用者にとっては苦痛で嫌なもの、という内容でした。

当法人では今年一月、全事業所でISO9001の認証を受け、その活動の一つに全事業所から委員を選任し参加しているサービス委員会があります。この委員会では顧客満足度の向上を目指して、接遇や身だしなみの啓蒙、外部講師による講演会、アンケート調査など様々な活動を活発に行っており、このご意見箱もサービス委員会が事業所内の各所に設置し、管理しています。

今回の新聞記事投函に対しても委員会で協議を行い、記事の拡大コピーとともに病院及び老健の看護介護責任者や居宅介護支援事業所・ヘルパーステーションの責任者がそれぞれの立場からの感想を掲示しました。直接の反応は余りありませんでしたが、多くのご家族やお見舞いの方が読んでいる姿を見受けました。それ以上に多くの職員が真剣に読んでいる姿に驚くとともに、私たちが行っている仕事を一人一人が見つめなおし、患者さんやご家族がどのように感じているのかを考えてもらうよい機会になったと思っています。

アンケートの結果や投書に対する回答は基本的には患者さんやご家族に対してのメッセージですが、同時に職員に対してのメッセージでもあります。

顧客満足の調査や向上については多くの病院が取り組んでいるかと思いますが、患者さんやご家族からの本音の部分を如何に引き出し、どう改善に結びつけることができるかを、どの病院も悩み苦労されているのではないでしょうか。

当院のように長期に渡り患者さんやご家族とお付き合いをさせて頂く病院としては特に大切なことと考え、このサービス委員会の活動が活発に、そして長く継続するよう応援したいと思っております。(17/9)

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老人の専門医療を考える会 JAPAN ASSOCIATION FOR IMPROVING GERIATRIC MEDICINE