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老人医療NEWS第79号

介護報酬改定と医療療養

介護報酬改定の十月一日改定の 内容が公表された。内容的には簡素なものであるが、これを正確に理解しろといわれると、まったく自信がない。

介護保険財源も潤沢ではなく、費用の増大になんとかブレーキをかけたいという主張もわからなくもないし、保険料の引き上げも難しいということもわかる。しかし、食費や居住費の利用者負担ということで、利用者の負担増と介護保険施設の収益減は明らかであるので、どう考えても全面的に賛意を表することはできない。   

過去一年間の厚生労働省の動きや介護報酬部会の議論を振り返ってみると、どう考えても介護療養型医療施設は、徹底的なキラワレ者に祭り上げられてしまったように思うのは、単なるひがみ根性であろうか。

民営化、規制緩和、行財政改革という大きな波の中で、介護保険制度は結果として、規則と税金のかたまりのような特別養護老人ホームを文字通り擁護することに終始した。かわいそうなのは老人保健施設で特養と同一視された上に、「個室・ユニットケアではない」とばかりに、冷たくあしらわれてしまったように思う。もちろん、介護療養型医療施設は「ケア水準が低い」と判断されたふしがある。

何も認めないというか、個室・ユニットケア以外、ケアの質の向上について何も考慮しないというか、できないというか、ケア面より財政面だけの対応に終始しているともいえるだろう。ただし、介護保険施設三類型の連携プレーもおそまつだったし、真剣に活動してくれる同志も少なかったように思う。この点は大いに反省しなくてはならない。

敗者は黙するのは当然なのかもしれないが、老人の専門医療の確立と充実を目指してきた我々にとっては、聴く耳をもたないかのような行政の対応にやりきれなさを感じる。ただ、済んでしまったことをグズグズいっても生産的でないので、なんとか懸命に対応していきたいと思う。

重要なことは、今後の介護報酬改定と診療報酬改定の関係である。保険局の関係者は「介護保険は介護保険での議論だ」などとまったく無関係だといわんばかりだが、各新聞には「食費の利用者負担は十月から」とか「四月から」あるいは「医療療養病床のみ」といったリーク記事だか、憶測だかわからないことが書かれている。

おまけに高齢者医療保険制度の議論がわけのわからないまま進んでいるので、情報が錯綜している。現時点ではこの先どうなるかを知っている人はいない状態である。

それにしても最近の厚生労働省は変だ。課ごとには方針があるのだが局と局の調整は行われていない。昔から「局あって省なし」といわれてきたが、これが一層ひどくなった。それでも、介護保険施設の食事が全額利用者負担となり、医療保険は現行のままというのもスッキリしないし、十月以降、医療と介護の病床を合わせ持つ病院や診療所は、大混乱だ。

ひとつだけハッキリ主張したいのは、医療保険の世界で療養病床のみの利用者全額負担は、おかしい。どうゆう理由にせよ。一般病床か療養病床かを強制的に選択させ、その後療養病床のみとか、高齢者のみにするのは反対である。一般病床と療養病床が明確に区分されているわけでもないし、回復期リハビリテーション病床などは、療養も一般でいいことになっている。

国民の合意があればよいというのであろうが、制度を乱立させ、その制度間の調整も十分できないのに、財政的な枠組みからの発想で、ご都合主義的に制度変更するのは、是非やめて欲しいというのが国民の合意だ。 (17/7/31)
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老人の専門医療を考える会 JAPAN ASSOCIATION FOR IMPROVING GERIATRIC MEDICINE