こぼれ話
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老人医療NEWS第77号 |
以下は、私が尊敬する一人で、世界にPOSを広めた心臓病学の大御所ウィリアムハースト先生の一文「良い教師の条件とは」であります。
[A]と(B)は、私が勝手に抜きました。例えばそこに、医師と患者、医師と看護師、親と子、夫と妻など種々入れてみても不思議に合うように思います。なぜなら、コミュニケーションスキルの基本とあるべき姿が凝縮されているからです。皆さんは、AとBにどんな言葉を入れるでしょうか。是非一度試してみて下さい。
(1)よいAとは「学習の精神」をもっていなくてはならない。その「精神」の表し方は、Aによって異なるが、それは本物でなければならない。
(2)よいAは自ら課題を知っているべきだが、その課題についてすべて知ることは明らかに不可能である。知らないものははっきり明示するべきで、そうすると、それが皆に理解される。Aは強い見解と信念をもっていなければならないが、それを変えるべきだということが証明された時には、たとえそれがAのもつ一番強い見解であったとしても考えを変えることができなければならない。
(3)よいAは自分のBの将来の長期的な発展、つまり、彼が十五年後にひょっとしてするかもしれないことに関心がある。これに即して要求されることは、Bが研究しようと計画する領域の傾向を必ず知っていることである。よいAはBが選んだ世界に生き、ある役割をこなし、またそれを変えようと準備する段階において、Bを援助しなければならない。
(4)よいAは、自分のしていることに喜びを持っている。もし楽しんでいないなら、Aとしての寿命は残り少ない。
(5)よいAの影響というものはAがいなくなったときに感じるものである。自分が優秀なAであることを確認したくてもAとBとの関係ができてから、十年後にその情報を集めないとわからない。その時点ではAが実際に教えた多くの事柄を、Bは思いだせないかもしれない。しかし、BはAの全体像の、ある一定の姿は思いだせる。そうしたAの姿はBの勉学意欲を高め「学習の精神」を啓発するような励みとなるだろう。
(6)よいAは、Bをひきつけ、挑戦する。Aは、このひとつのテクニックを使って一人のBをひきつけるかもしれないし、また他のBを他のテクニックでひきつけるかもしれない。つまり、Aは多くのテクニックを使う。彼の人格がBの人格とぶつかった時に、Aはどのような教育テクニックを使うか決めるのである。一度、彼がBをひきつけたら、次に彼は、Bに挑戦をするという事になる。よいAは何をすべきかということをピンと感じて行動する。もし結果が適当でないなら、Aはそのことをまたピンと感じ、くり返し違ったテクニックを使ってやり直してみる。
(7)よいAはBを尊敬する。そして、Bはそのことがわかる。
(8)よいAは忍耐強くなければならない。AはBに一群の「事実」を受け入れて問題の解答を発見するように励まさねばならない。もしAが答えを話してしまうならば、Bが答えを発見するという喜びは薄らいでしまう。よいAはBに発見の喜びを経験させるように指導するものである。
(9)よいAは何度も失望を覚悟しなければならない。数々の感情的、個人的な傷を受けることが多いと思う。もし、そのようなことが起こらなければAはBから遠い存在であり心情的なかかわり合いは、余りにも浅いものであるといえよう。
(10)よいAは、Bたちの声を聞く―実際によく聞かなければならない。その場面でBはAに変わり、AはBに変わるのである。
(11)何よりもよいAはBの学習の邪魔にならないようにしなければならない。(17/3/31)