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老人医療NEWS第74号
病床再編成と専門医療

 われわれは、平成二年の老人病棟入院医療管理料導入以降、介護報酬を含めて診療報酬改定の影の立役者は、急性期でも一般病院でもない介護力強化病院であり、療養型病床群であり、療養病床であったと考えている。しかし、厚生労働省の進める医療制度改革の中心的課題が「質の高い効率的な医療提供体制を構築するための機能分化、重点化、そして病床の収れん化」という奇妙な言い方の病院病床削減にあることは、あまりに明らかである。急性期病床は六〇万床程度などといわれているが、今は約三十六万床の療養病床が、いずれ四〇万床程度まで増加するとしても、どちらでもない一般病床が二〇万床程度残ることになるといわれている。

 老人専門病院のほとんどが療養病床を選択しているので、差し当たり不安はないが、急性期病床にもなれず、さりとて療養病床にもなれない病床が大量にあるということは、注意しておいた方がよい。

 民間病院にとって急性期病院になるハードルは、そう簡単には乗り越えられるものではない。いわゆるケアミックスにしたいと考えても、既存の建物では療養病床の基準がクリアできないとか、建築投資額が高く、療養病床の低単価では建築コストの回収が出来ないといったこともある。また、医師をはじめ看護職が制度を理解できないばかりか、自らの行なっている医療や看護と、現実との間のギャップが解消できないといったこともある。

 それで登場したのが、四病院団体協議会が提唱していた「地域一般病棟」の考え方が反映されたものといわれている亜急性期入院医療管理料だ。だが、療養病床サイドからみれば結局、中途半端なものでしかない。

 一般病床数の一割以下、六・四u以上、二・五対一の看護配置で七割以上看護師、一日二〇五〇点、九〇日限度等という内容とともに、この病床に入院する患者を病院の平均在院日数の計算対象から除外できるのがメリットとされているが、すでに療養病床に転換している病院からみれば「何を今更じたばたしているのか」ということにならざるをえない。

 平均在院日数が二十一日前後の一般病院では、この亜急性期入院医療管理料算定の病床を十五床設置するだけで、平均在院日数が十七日以内にできるといったことも可能であるといわれているが、結局、急性期病床とするために無理やり一部を療養病床に転換するということを行わなくてもすむ病院があるということでしかない。

  このようなことから亜急性期入院医療管理料は、一部の民間病院にもてはやされているが、病床再編にはずみがつき、急性期病床数が増加するかどうかは、もうしばらく様子をみる必要があろう。ただ、最後まで、一般病床にしがみつき、あわよくば急性期病床を少しでも確保したいと考える病院が、結局、急性期になれず、医療療養病床になだれ込んでくることを想像しておく必要はある。

 民間病院で急性期にしたいという気持ちはよくわかるし、包括化点数に不安があるのもよくわかる。しかし、世の中は、急性期も包括化点数に向かっており、在院日数は急激に減少している。結果として、急性期競争の負け組が療養病床だと思われるのは不愉快だ。

  少なくとも療養病床であるわれわれ老人専門病院は、早くから包括化、定額化を受け入れ、今では特殊疾患療養病棟や回復期リハビリテーション病棟の整備を進める一方で、介護療養病棟の質の向上にも努力していることを認めて欲しいのである。

 このことが、広く理解できるよう、今後とも一層力を結集するとともに、老人の専門医療の必要性を強く主張したいのである。

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老人の専門医療を考える会 JAPAN ASSOCIATION FOR IMPROVING GERIATRIC MEDICINE