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老人医療NEWS第71号 |
マイナス一%の平成十六年診療報酬改定は、内容的によくできた改定だと思うが、こと老人医療にとっては何も変わっていないといえる。ただし、リハビリテーション関係で若干の改善があったことは、高く評価したい。
それと亜急性期入院管理料は、よく考えられた新点数だと思うが、あいまいな「亜急性期」という言葉は使用して欲しくないと思った。その理由は、サブアキュートとポストアキュートの区分とか、慢性期における急性期とか、急性期であるが安定期な状態といったことが、完全に整理できないからである。厚生労働省の担当者は「準急性期的な医療」と説明しているが、急性期後とか慢性期の急性憎悪といった患者さんを対象としていることは明らかである。
この亜急性期は、全日病が要求してきた「地域一般病棟」を具体化したものであるとされている。この点数を算定するであろう病床数は二万床程度ともいわれ、最大でも五万床を超えることがないと考えられる。かつての「その他病棟」を一般病床と療養病床に大きく区分し、まず回復期リハビリテーション病棟、ついで特殊患者病棟とつづき、点数を包括化する一方で、一般病床の中をいくつにも区分するという方法論は、それなりに理解できる。しかし、こうなると各病院がどのような病棟編成にするかということが重要にならざるをえない。
病院側からみれば、いろいろな選択の余地は増えたようにみえるが、その実、療養病床からみれば選択可能なものは回復期リハビリテーション病棟のみである。それゆえ、療養病棟の機能分化とか、われわれが長年主張しつくしている高齢入院患者の特性に応じた包括評価については、今回の改定では、手がつけられなかったことになる。
前回のアンテナのスペースで療養病床は改定しない方が良いと主張したが、診療報酬改定の関係者に伝わったようである。次回の改定は、平成十八年ということになり、介護保険も医療保険も同時改定になる。同時に改定しないために起こる混乱を考えれば、次回に山積みされている問題を解決する改定を行った方がよいことは明らかである。
ただ、老人医療の関係者、とりわけ本会のメンバー間でも、次回改定をどうするのかといった意見が一致しているわけではない。それゆえ、今後一年以内に、新しい方向性をわれわれ自身が示すことが必要であると考えている。まず、診療報酬が老人と一般に区分されているが、高齢社会で、入院患者の医療を二つに区分する意味があるのかどうかといったことがある。つぎに、介護保険制度がどこまで老人医療を取り込むのかといったことの原理原則を明らかにすること。その上で、再度高齢入院患者の特性に応じた包括評価のあり方を真剣に検討したい。
比較的長期に渡る高齢者の入院医療は、当会の活動の成果もあって、この十年間は、かなり前進することができた。今後は高齢社会の財政負担が重くのしかからざるをえないので、ケアの質を向上することが難しくなるのであろう。
リハビリテーションへの資源配分を多くすることは大切である。その一方で、痴呆性患者さんに対する適切なケアを確保・向上させる努力もおこたれない。医学・医術部門における科学技術の進歩は、これからも続くことであろう。しかし、人が人をケアするという点でいえば、技術面での進歩を最大限に取り入れながら現状の質を確保する努力がより大切であることを理解するべきだ。改定や変化を考える場合、まず維持することが重要だと考えて欲しい。