現場からの発言〈正論・異論〉
老人医療NEWS第69号
病院機能評価と監査
善常会リハビリテーション病院理事長 岡田温

 ISOか病院機能評価か、あるいは両方かという議論がある。平たく言えば、ISOは目標設定を自分たちで定め、クリアするようにする。一方、病院機能評価は最初に目標設定がなされ、それらをクリアできるようにする。従って、極端な話、ISOの目標設定を病院機能評価のそれより低く設定すると、ISOでよしとしても病院機能評価ではよしとしないことがあるわけで、それならば病院機能評価でいこうという具合になる。

株式会社で行われる監査において、内部監査と外部監査がある。内部監査は企業の内部組織が経営管理目的のために行う監査を指す。監査とは元来帳簿記録と実際の状態の照合、例えば使途不明の使い込みの発見など財産の保全を行うものであるが、内部監査の場合、経営管理に役立つよう資源の効率的な運用の監視・機能評価(業務監査 会計監査以外の監査)も含まれている。監査役監査も法的な立場に立てば、監査役は株式会社の組織をなしているので、内部監査に含まれる。

  外部監査は企業の外部者が行う監査で、内部監査に対応する。具体的には公認会計士監査(証券取引法)を意味している。この監査は財務諸表が適正に損益及び財政状態を表しているかどうかの見地で行われる(適法性監査という)。但し、公認会計士は商法上、会計監査人として株主のための適法性監査も行うが、これなどは法的には内部監査と言える。以上は会社法に基づくが、大会社(資本額五億円以上又は貸借対照表上負債額合計二百億円以上の株式会社)はすべて該当するが、小会社(資本額一億円以下の株式会社)にはすべて適用されるのではなく、例えば監査役について言えば、小会社での職務権限は会計監査に関するものに限定される(業務監査は含まれていない)。

  現在、申込みから一年待ちとされるほど各医療機関が病院機能評価の申請に殺到しているが、果たして病院機能評価とは会社法で言えばどんな位置付けになるのだろうか。

  我が国の医療機関を会社法上の株式会社に仮に置き換えた場合、多くは「小会社」の範疇に位置付けられよう。上述のとおり、小会社の場合、監査役の職務権限は会計監査に関するものに限定され、業務監査は含まれていない。病院機能評価は業務監査の色彩が濃いように思われ、その意味では小会社の業務監査の代理に当たる存在ではないかと考える。また、「大会社」における社外監査役の役割を果たしているとも考える。

  会社法でも相次ぐ不祥事から、監査役職務権限の強化がなされており、特に経営管理上の整備が遅れていると言われる医療サービス業においては、病院機能評価の実質的な「評価」権限の拡大は将来的にもっと図られると考えたほうが賢明である。

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老人の専門医療を考える会 JAPAN ASSOCIATION FOR IMPROVING GERIATRIC MEDICINE