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老人医療NEWS第67号 |
世の中で変化しないものはない。空気や水、太陽や月といった自然も、正義や愛あるいは家族といったものさえ変わる。まして、行政や社会システムは、変わることが常識というか、前提となっている。
今年8月22日、介護療養型医療施設連絡協議会が「日本療養病床協会」に名称変更した。この会の前進は介護力強化病院連絡協議会であり、本会のメンバーが中心となって設立したものである。
わが国の老人医療制度は、ここ30年間で、毎年のように変化してきたといってもよい。めまぐるしいというか、その時々にどこかを修正しないと都合が悪くなったり、一部分を修正すると全体との整合性がなくなり、再度修正するという繰り返しであったようにも思う。
特例許可老人病院制度、介護力強化病院制度、入院医療管理料、看護力強化病院、療養型病床群、そして療養病棟などという多量の単語が生み出されたが、今となっては、これら全てを正確に説明することのできる人は少なくなった。何も、「かたりべ」ではないのだからどうでもよいことだが、「よくもまあ、こんなにいじりまわしたな」というのが感想だ。
さて、今回の「日本療養病床協会」への衣替えにはいくつかの理由があると思うが、療養病床の急増と介護療養型医療施設の人気低迷がある。正確にはわからないが、今年の秋には、30万床程度の医療保険療養病棟と13万の介護保険療養病床ということになる。こうなると3対1で医療保険の療養病床が多くなるばかりか、これ以上介護保険病床は増やさない方針なので、益々この傾向が強くなる。
次に、介護療養型医療施設に対して厚生労働省老健局は、どう考えても冷たい。特養の個室・ユニット以外は政策的に意味がないのかどうかわからないが、介護に関する医療部分を冷遇して欲しくない。
こんなこともあって「日本療養病床協会」になったのかもしれない。ただ、名称が変更されても中身が変わらないのでは何にもならない。中身の変化とは何かが問題となるであろう。
介護保険制度実施以降、今日までの3年半の時間で、当会所属の病院病床はどのように変化したのであろうか。このことを順にみていくと、それがそのまま療養病床の行方を占うことになると思う。
介護保険制度実施で、全て医療保険に残った病院もあれば、そのほとんどを介護保険に移行した病院もあった。どちらが良いかはそれぞれの考え方であり、各病院の理念と関連していた。
その後、いくつかの病院は回復期リハビリテーション病棟を目指したし、また、いくつもの病院が特殊疾患療養病棟入院料を算定した。そしてある病院は、ホスピス(緩和ケア病棟)や障害者病棟へと変更していった。
それぞれの病院が、それぞれの信念にしたがって、それぞれの航路を選択したといってもよい。ある意味で、このようなことは当然であったと思う。なぜならば、いずれもが老人の専門医療をつきつめてみれば、そのような選択になるということであるからだ。
ただ、回復期リハも特殊疾患もホスピスも病床数としてはわずかであり、療養病床からの転換という意味では「狭き門」である。回復期リハでは急性期病院等との連携が、特殊疾患では患者の状態像の変化が、そしてホスピスでは病床利用率が、問題とならざるをえない。
それでも当会会員は、この狭き門を進んでいくことは確実であろう。次回のマイナス改定が予定されているのであるなら、このような努力をせめて邪魔しないで欲しい。(2003/7/31)