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老人医療NEWS第64号
介護報酬改定

 介護報酬改定の全体が明らかになった。まず、今回の改定にご尽力いただいた各位にお礼を申し上げたい。長引く経済不況で国民生活は、各所に歪みが生じている。二・三%の引き下げ(在宅〇・一%、施設四%)ということについて、喜んでいるわけではないが、昨年の診療報酬改定が二・七%減というショッキングなものであったので、三年間で四%程度はやむをえないという感触はあった。

 老人の専門医療確立の旗手を自認する我々としては、介護職員三対一の廃止という、医療サービスの質を低下させることに強い憤りを表明しているのであって、介護報酬の引き下げについては、「絶対反対」であるとはいってこなかった。考えるまでもなく、老人の専門医療は、スタッフの数と質、そしてチームワークにより確保できるものであって、少ない人数で多数の患者さんをケアすることはできない。このようなことから、今後とも我々は、マンパワーの強化について主張していきたい。

 三対一廃止後は、四対一が最高ということになるが、我々は四対一を最低と考えている。この意味は、三対一以上の配置を行っている病院は、今後ともこの状況を維持するということである。国の基準職員がどうであり、我々は必要必然の職員の配置を続けたいと考えているのである。

  四対一介護配置の改定単位を要介護一から五まで順にみると、二七・一%、二〇・五%、三・七%の減で、要介護四が一・〇%、五が四・七%の増である。一方、三対一と新しい四対一の報酬を比較すると、要介護一は実に三一・三%の減で、二は二四・九%、以下九・一%、四・七%、一・二%の減である。これは、どのように考えても、療養型介護療養施設サービス費では、要介護一と二は入院させることはないということであろう。また、四と五を若干増加させたのは、三対一廃止に伴う激変緩和措置であろう。このことを十分認識しないといけないのであろう。

 今回改定の目玉として従来の集団療法しか認めないという差別的なリハビリテーションを、一八〇度転換して、個別的なものを認めたことがあげられる。また、ADL加算三〇単位も額というより、ADLリハビリテーションの重要性が認められたということを高く評価したい。

 これで急性期、回復期、維持期というリハビリテーションの体系が正しく整理されたと思う。ただ、蛇足になるが、医療保険と同様に二五〇単位ということが、過小評価であるということだけは、主張しておきたい。

 重度療養管理の新設もよいと思う。これは、医療を必要とする患者さんに適切な処置と医学管理を行うことに対する評価であると思うが、説明文にある「介護保険と医療保険制度の狭間で患者の受入先がなくなることを防ぐため」とあることに関して、一日一二〇単位を新設すれば、こういうことがなくなるという判断に、背筋が寒くなる。

  このほか、いろいろな単位が引き下げられているが、どのように判断するかは、今後の施設や事業者の対応を十分に吟味してからでないと、なんともいえない。特に、訪問介護については、スタッフの教育や医療機関等との連携およびサービスの向上に努力して欲しい。株式会社の参入が、結局は利益を拡大しただけであるのであれば、大問題だと思う。

 介護報酬は改定され、今後三年間(場合によっては二年間になるかもしれないが)継続することを考えれば、今回の改定は、及第点をつけることができる。

 これからの最大の心配は、三対一であった病院が、介護職員を少なくしようとすることである。我々はスタッフの増員、職員教育、コミュニケーションの改善、リハビリテーションの徹底などの課題を三年後に向けて再度努力していきたい。

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老人の専門医療を考える会 JAPAN ASSOCIATION FOR IMPROVING GERIATRIC MEDICINE