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老人医療NEWS第63号 |
厚生労働省は、昨年九月に「二十一世紀の医療提供の姿」(試案)を公表した。それに引き続き本年三月に坂口大臣を本部長とする「医療制度改革推進本部」を設置し、検討を進め、八月に中間まとめを公表した。内容は、盛りだくさんであるが、基本的には、昨年の試案をベースにしている。
この中で、医療機関の機能分化・重点化・効率化という観点から、病院病床の機能分化の促進がうたわれており、別添として「病院病床の機能分化(イメージ)」が示されている。この図では、医療保険適用療養病床の機能の明確化、十五年八月末の病床区分届出という文字があり、その下に矢印がついていて、介護等への転換、介護・福祉との連携強化。在宅をベースにした地域医療の提供という文字がある。
別に目くじらを立てるわけではないが、どうみても、イメージは鮮明であるとしか思えない。つまり、病院病床は、一般病床、療養病床、その他病床等という区分から、急性期、回復期リハビリテーション、長期療養・在宅療養という三区分が念頭にあり、療養病床は、回復期リハと医療の必要度の高いもののみを対象とする医療保険適用か介護保険適用、さもなければ転換型老健施設という四区分に収れんさせようとしているとしか考えられない。
それは、そうなのかもしれないと思うが、どうもスッキリしない。医療の実践者からみると、というより、医療保険適用の療養病床という立場からみると、今後は大量の療養病床が行き場を失うようにしか思えない。急性期で生き残れない病床が療養病床を選択することは、まちがいないであろう。介護保険適用になりたくても、もう介護に移行できない地域もある。こうなると医療保険にとどまざるをえないが「機能を明確化」されればされるほど、行き場がなくなるはずである。では、転換型老健施設かといえば、そんな決断ができるのであれば、ずっと以前に行っていたはずである。
今後明らかなことは、医療保険適用療養病床の受難である。
では、介護保険適用はだいじょうぶなのであろうか。
これは、これで変なのである。十一月十八日の社会保障審議会介護給付費分科会の資料では「医療保険適用の療養病床との基本的な役割分担と整合をどう考えるか」とか「要介護度の低い入院者や、医療の必要性の比較的低い者が多いことを踏まえ、要介護度の高い者の入院を評価すべきか」などと書いてある。よくわからないが、いいたいことは「医学的管理下における重度介護者に重点化した施設が介護保険適用の療養病床だ」ということであろう。
ここでまた、である。介護保険病床の重度介護者以外はどうするというのであろう。それは別の施設か在宅で対応すればいいのではないかということであろう。いろいろ読み合わせてみると、なにがなんだかわからなくなってしまう。全体としての問題とは、なんなのかといえば、医療費が大変だということであり、どうも老人医療費が原因らしい、それも長期入院だというステレオタイプの主張があり、そうだ病床を減反すればいいのだということになり、そのターゲットが医療保険の療養病床であるのだろう。しかし、考えてみれば介護の療養病床だって、要医療・重介護に限定しておけばいい。特養や在宅に重点化すればいいではないかということになっているように思えてならない。
でもである。今の状況は、結局のところ、厚労省自体に、療養病床を明確に区分したり、医療と介護と住み分ける理論が不在なのではないか。そして、腰も決まってないようにみえるのは、うがった見方なのか。