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老人医療NEWS第62号 |
十四年十月から、医療保険適用の一般病床で入院医療の必要性が低い利用者に対して、入院基本料の基本点数を特定療養費化することになった。経過措置を設けて、今後六ヶ月間は、九十五%の特定療養費分を保険者が支払うことになっている。
この制度については、本来、一八〇日以上自らの都合で入院している利用者に対して、病院側が「特別な料金」を自由に徴収してよいという仕組みを応用したものである。つまり、病院が自由に料金設定してもよいことになる。しかし、「療担規則及び薬担規則並びに療担基準に基づき厚生労働大臣が定める提示事項等」及び「選定療養及び特定療養費に係る厚生労働大臣が定める医薬品等」の制定に伴う実施上の留意事項について、という長々した表題の保険局長通知で、こまごまとしたルールを決めている。特別料金については、患者への十分な情報提供が前提で、料金の額などについては、情報を文書で提供すること。その額が社会的にみて妥当適当な範囲の額であり、最終的に一〇〇分の十五に相当する点数をもとに計算された額を標準とする。さらに、これらの詳細について、地方社会保険事務局長に報告するということになっている。
また、一八〇日超であっても、なんと以下の十四項目のいずれかに該当すれば、この制度の対象外だというのである。それは次の通りである。
(1)難病患者等入院診療および、(2)重症者等療養環境特別加算を算定する患者。(3)重度の肢体不自由者、脊髄損傷等の重度障害者、重度の意識障害者、筋ジストロフィー患者、難病患者等。(4)悪性新生物に対する腫瘍用薬(重篤な副作用を有するものに限る)を投与、または(5)悪性新生物に対する放射線治療を実施している状態。(6)ドレーン法又は胸腔もしくは腹腔の洗浄を実施している状態(当該月において二週以上実施していること)。(7)人工呼吸器を使用、または、(8)人工腎臓又は血漿交換療法を実施している状態。(9)全身麻酔その他これに準ずる麻酔を用いる手術を実施し、当該疾病に係る治療を継続している状態(当該手術を実施した日から起算して三〇日までの間に限る)。(10)末期の悪性新生物に対する治療または、(11)呼吸管理を実施している状態。(12)常時頻回の喀痰吸引を実施している状態(当該月において一日あたり八回、夜間を含め約三時間に一回程度以上実施している日が二〇日を超えること)。(13)肺炎等に対する治療を実施している状態。(14)集中的な循環管理が実施されている先天性心疾患等の患者。
これだけ例外を設けてしまうと、何に該当するのかを調べるだけでも大変だ。おまけに(3)については、難病患者等で障害を持つ患者以外でも、「障害老人の日常生活自立度(寝たきり度)」判定基準のランクB以上も除外することになっている。こうなると、動きまわる痴呆性疾患患者で、一八〇日以上の患者以外は、対象者がいないのではないかと考えざるをえない。療養病床でも、病院は病院であり、ランクJや、ランクAの人をみつけるだけでも大変である。
一八〇日超の人々は、約五万人程度といわれるが、除外してみると半分程度になるのではないか。そして、そのうち、動きまわる痴呆患者は、一万人程度なのかもしれない。この人々に対しては、療養病床や一般病床で一八〇日超になると、特定療養費の対象となることになる。
しかし、精神病床は対象にならない。つまり、精神病床への移動ということも起こるかもしれない。ただ、特別料金を自由化するとどのようなことになるかは、わからない。