こぼれ話
老人医療NEWS第60号
医療改革のヒント
いばらき診療所ひたち医師 照沼秀也 

 最近うちの診療所で出費を減らそうなんていう試みが出てきました。不思議だなと思っていたら、会議に出た若いスタッフから、「こんなに全部の数字を見せられたらやっぱり無駄を無くそうという気になりますよ」というなんとも単純な答えが返ってきました。

 実は最近、当院の組織替えを少し行ったのです。その大きな柱はお金の流れをすべてオープンにするというものと、理事長の任期を一期4年、最大2期までとするものです。誰がいくらもらっているかとか、診療所が毎月いくら利益があって、こうした利益からボーナスが出るんだなとか、いろいろなことをわかりやすく話す会議を公開で行うことにしたのです。もちろん出席するスタッフ全員に発言権はありませんがそれぞれの地区の代表者が集まって病院内のいろいろなことを話しています。スタッフの中で関心のある方はオブザーバーで数名参加してくれています。またそういうスタッフが参加しているといいことは、みんながうそを言わなくなることです。いろいろありましたが、よかったな思ったことは、妙なかんぐりが少なくなったことです。少しキザですが、信頼感というのはオープンの裏返しなのかなと思えてきました。

 今、医療改革なんて言っていますが本当に国民が信頼してくれる医療制度を作れるのでしょうか。医療事故の問題や医療費の問題、医療保険の問題等、問題を挙げるときりがありません。でもよく考えてみるとすべてに言えることは透明性、とかガラス張りといわれているようなオープンなシステムを作り上げることなのかも知れません。

 たとえば医療事故にしても医療が一〇〇%の確実性でおこなわれるなんて思っている患者さんはいません。人間のやることに間違いはつき物、だけど、「私の先生は親切丁寧にやってくれる」とか、「一生懸命やってくれる」みたいなことを信じて命を預けてくれます。さらにたとえ間違ったとしても、ハムラビ法典のようなことはしません。許してくれるのです。このことに医療人はもっと真剣に答えなくてはいけません。間違ったときに、ごめんなさいは人間として最低のルールです。正直に誠実に謝るべきです。

 医療費の問題だってそうです。まずは無駄を省く、これから始めるべきです。たとえば患者さんが全額自分の貯金から医療費を払うとしたら、レシートをきちんと作ってお渡しすべきです。レセプトの開示は当たり前のことになりますし、その元帳になるカルテ開示も当たり前になるはずです。すごく当たり前ですが明朗会計が一番信頼されるでしょう。

 とはいっても国民皆保険制度はよくよく考えるとすばらしい制度です。しかし競争の原理がありませんし、やはりお役所的で、ある公立系病院のサービスはよくないとも聞いています。この際健康保険制度そのものを民間にオープンにしてたとえば自動車保険の強制保険と任意保険みたいにしたら少しは保険会社の景気もよくなり雇用も生まれるのではないでしょうか。いつまでもクローズドにしていると、そのうち国民は社会保険制度の無駄に気づいちゃうぞ。(2兆円もあるってほんと?)

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老人の専門医療を考える会 JAPAN ASSOCIATION FOR IMPROVING GERIATRIC MEDICINE