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老人医療NEWS第59号
介護保険と医療保険の療養病床

 介護療養型医療施設と療養病床との関係については、平成十三年九月一日現在、療養病床等の総数は三十五万九千床で、うち介護保険適用は十一万九千床であり、残りが医療保険適用であった。

 同年十二月十日に開催された第三回社会保障審議会介護給付費分科会では、入院医療の必要性が低い長期入院患者への対応案が示された。それに関連して、次期介護保険事業計画に盛り込む介護保険施設数の参酌標準の基本的考え方が明らかにされた。この案では、現行の「平成十六年度における六十五歳以上人口のおおむね三・四%」を「十九年度における六十五歳以上人口のおおむね三・二%」に引き下げる一方、新たに痴呆対応型共同生活介護等の利用者数の目標を〇・三%とし、合計では三・五%と、現行を〇・一%上回る数値が示された。

 新しい目標数と現行計画数を比較すると、介護老人福祉施設は二万人近く増える一方で、介護療養型医療施設については、現在の十九万四千床を十三万八千床とし、差し引き五万六千床減少させることになる。これは、「療養病床等における長期入院患者のうち退院の可能性が高い者の数を勘案」するためであると説明されている。

 また、分科会に事務当局から病院病床を転換し、老人保健施設を開設する「転換型老人保健施設」を特例で設けることを検討する案が示された。この提案は、(1)医療資源の有効活用と介護基盤整備促進を図る観点から、病院が既設の療養病床の転換により介護老人保健施設を開設する場合に、施設及び構造設備について一定期間の特例措置を設ける。(2)特例が受けられるのは、病院の既設の療養病床が病棟単位で病床転換を行う場合で、(3)人員基準・運営基準及び介護報酬については、現在の病院等併設の介護老人保健施設と同様とするというものである。

 入院医療の必要性が低い六ヶ月以上の長期入院で退院の可能性が高い利用者については、介護老人福祉施設、介護老人保健施設、グループホーム等にて受け入れることとする一方で、医療保険適用の病床で入院期間が六ヶ月以上で入院医療の必要性が低い利用者に対しては、いわゆる病院のホテルコストを請求することになった。具体的な内容は、百八十日を超えて入院している患者に係る入院基本料の基本点数の八十五%を特定療養費として給付するというもの。ただし、(1)難病患者等入院診療加算を算定する患者、(2)悪性新生物に対する腫瘍用薬を投与している状態、(3)人工呼吸器を実施しているなど、患者の状態によっては対象から除外される。また、患者のたらい回しを防止する観点から、患者は退院証明書を発行してもらい、医療機関は患者の入院履歴を確認することが入院費用支払いの要件となる。なお、激変緩和のための給付率、対象入院期間については二年間の経過措置を設け、完全実施は十六年四月からとし、十五年三月までは九十五%が、それ以降十六年三月まで九十%が特定療養費として給付され、十六年四月から八十五%にする。

 つまり、介護療養型医療施設の計画数を現在から差し引き五万六千床削減する。その代わり「転換型老人保健施設」の特例を新たに設け療養病床から五万床を転換させる。その一方で、医療保険適用の病床で入院期間が六ヶ月以上で入院医療の必要性が低い利用者に対しては、患者負担を強化するというものである。

 このように医療保険適用と介護保険適用の療養病床の整合性確保は、一応の整理がなされたことになる。しかし、医療保険の七十歳未満一部負担三割への強化や、七十歳以上夫婦二人年収六百三十万円以上の二割負担、あるいは高額療養費の引き上げなどが、介護保険制度にどのような影響を与えるかが大問題であろう。

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老人の専門医療を考える会 JAPAN ASSOCIATION FOR IMPROVING GERIATRIC MEDICINE