現場からの発言〈正論・異論〉
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老人医療NEWS第56号 |
小生、ひょんなことから在宅医療をはじめて5年になりました。亡くなった患者さんや、どうしても在宅で見れなくなった患者さんを含めて、1000人を少し出るくらいの患者さんを見させてもらいました。
その間、診察をしながら、なんとなくもやもやしたものが在宅医療のイメージの中にありました。
といいますのは、在宅医療では何をしたらいいのかとか、どういう患者さんを診たらいいのかという、まことに基本的な問題だったのです。
在宅医療でどんな患者さんを診たらいいのかという問題ですが、答えはとってもシンプルなものでした。
昨年末、必要に迫られて統計処理したときのことでした。はじめはまったく気にせず、いつものように機械的に主疾患別で分けていたのです。少しだるくなってぼおっと円グラフを見ていたときのことです。なんとなく見づらいなという気がして、思い切って手間隙のかかる順に患者さんを分けていきました。すると、手間隙のかかるほとんどの患者さんに痴呆症がかぶっているのです(約6割)。ガンの患者さんも割合的には多く、3割ぐらいの方々がガンでした。また、リハビリの必要な患者さんも1割ほどいました。その他にも稀な疾患の患者さんもいましたが、あまり多くはありませんでした。
また、どういうことをしたらいいのかというのもとても簡単なことでした。これも患者さんが教えてくれました。
最近になってのことです。いつも話の長いおばあさんの診察に伺ったときのことです。いつもどおりに一通り話を聞き終えて、血圧を測って診察を終わりにしようと思ったのですが、たまたまその日は暇だったので、脈や眼瞼、口の中や足のむくみまで丁寧に診察をしたのです。するととっても喜んで、「ありがとう、ありがとう」って何回も言うのです。
多少痴呆症が入っていることを差し引いても、喜んでもらえるのは悪くないなと思い、それ以降は「喜んでもらえる作戦」を在宅の診療に伺った際はとることにしました。
また、ターミナルの患者さんに点滴をするのはどうかな?という話もありますが、テレビでお相撲を見て喜んだり、飲めないはずのトマトジュースを飲んで「うまい」と言って喜んだりする姿を見ますと、中心静脈栄養を入れるのもわるくないなと感じております。
また、医療経済的に見ますと、病院や施設とちがって、建物の減価償却をしなくてよい点や、診療所と申しましても、わざわざ診療所を建てなくてもビル診ででも十分です。この場合はもうイニシアルコストは限りなくゼロに近くなります。
もうひとつの面白い点は在宅医療の主体者が家族、もしくは本人だということです。つまり、病院のような転倒事故に対する管理責任などは発生しないということです。
さて、ここまでお話すると、そろそろ皆さんも在宅医療をはじめたくなったころと思います。
レッツ ゴー ザイタクイリョウ
追記*在宅医療に関心のある方の飲み会をはじめました。関心のある方はご連絡ください。 (13/9)