こぼれ話
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老人医療NEWS第52号 |
海の舟の上からの魚釣りが、私の趣味である。釣暦は34年にもなってしまった。
東京湾を中心にした子舟による海釣りの歴史は古い。四季おりおりの様々な魚が、具体的には、
春は、キス、めばる、中鯛、そして大鯛。
夏は、いなだ、スズキ、平政。
秋は、カツオ、メジマグロ、カマス、小鯛。
冬には、黒ムツ、あこう、ヒラメ、ほうぼう、等。
水深5メートル位から500メートルを超える深さまで、竿も他の道具立ても全く異なった技法で釣ることができる。それぞれ、独特の楽しみ方があり、舟酔いさえ解決できれば、一年中楽しめる趣味である。
今回は新年号でもあり、真鯛釣りの話をしたい。釣り方は大きく2つあり、1つは昨今、釣り人口が増えた理由の1つである、コマセ釣りである。大人数で鯛の遊泳層の上で、皆で同時にコマセをまき、鯛を浮き上がらせ、同時に食い気をおこさせコマセの中に鉤のついたエサを食わせて釣る方法である。重いおもりが必要で、竿等もごついものとなってしまう。私が昔から続けているもう1つの釣り方は、小舟に少人数で独特な糸巻きとガイドがついている手ばね竿を使い、生きたエビエサに鉤をつけ、軽いおもりを使用して、鯛の目の前で躍らせて食いつかせるという方法である。魚の重さや動きを直接指で感じながら糸をたぐったり、時には出してやったり、魚とのやり取りをする。4キログラムを超える大鯛の時には、竿そのものに尾手糸なるものをつけて、海中になげるというスリリングな楽しみもある。
あたりがあり、合わせをして鯛の硬い口にがっちりと鉤をかけ、糸をたぐりながら、最後に網ですくいあげ、舟の中に入れるまで、長くても10分間位のプロセスを楽しむために、朝早くから1日中海の上で竿をしゃくり続けるという辛抱も要求される。「ボーズ」という1枚も釣れない日もある。昔は真鯛釣りにはしばしばあったが、日本近海で釣れる魚が少なくなっている中で真鯛だけは確実に増えているのである。20年位前より、鯛の稚魚を放流し続けているのである。毎年、神奈川県で100万匹、千葉県で80万匹放流されているという。しかし、1〜2センチメートル位に成長した稚魚をそれぞれの港の養殖網などの中で5〜8p位まで育てる(この間4〜5ヶ月)。これくらい大きくなると簡単に他の魚のエサにならないのである。最近の1年間で500〜600グラムに成長し、1.5キログラムになるのに4年間位かかる。1.5〜3キログラムまでを中鯛と呼び、味も一番よく市場価値も高い。ちなみに築地の市場では明石の鯛が一番高く、時に他の倍近いこともある。真鯛のうろこは年輪と同じように年を刻み、50歳を超えることが知られている。10キログラムを越す鯛がそうである。運がよければ釣ることはできるが、私はまだ9キログラムまでである。
昨年から真鯛の大釣りが続いている。近いうちにぜひ出かけたいと思っている。鯛の一番おいしい時は桜鯛の時と初冬。冬眠体制に入る前にエサを食べ続けている今頃といわれている。 (13/1)