こぼれ話

老人医療NEWS第49号

コーヒータイム
鳴門山上病院 理事長 山上久

当施設のホールの喫茶コーナーで患者様とご一緒していたときに、大学生の頃、いろいろな方にコーヒーに関する蘿蓄を教えていただいたことを思い出したので書いてみます。

コーヒーの味を決める要素を順に述べると、

@豆の種類

ブラジル、キリマンジャロ、ハワイアン・コナのように生産地で分けられていることが多く、産地による特徴があります。しかし、ブルーマウンテンパウリスタなどはブラジルのパウリスタ地方で栽培され、本来のブルーマウンテンとかなり感じの違う味になっているものもあります。また、ビーペリなどのように、良質の豆だけを選び出したものもあります。

A豆の収穫法・乾燥・焙煎法

赤い実の中にコーヒーがありますが、ブラジルなどの大量生産地では実が熟さない内に機会で刈り取り、水圧で豆を分離、強制乾燥していますが、昔ながらの方法で人の手で熟した実から豆をとり、自然乾燥させているところもあります。

俗にコーヒーは煎りたて、挽きたてがおいしいと言われていますが、これは昔の収穫・乾燥法での話です。現在の水洗・強制乾燥法では、芯が乾いておらず、焙煎直後は味が安定せず、数日置いた方がおいしいといわれます。

焙煎は煎る深さにより、アメリカン、フレンチ、イタリアンなどに分けられ、深煎りのイタリアンローストが一番カフェインが多いと思われています。本当はフレンチローストのカフェインが一番多く、アメリカンではまだカフェインが十分出ておらず、逆にイタリアンでは炭化しているため少ない状態です。また、この炭化の味が苦みです。じつはコーヒー自身の味は苦味ではなく、甘味と酸味です。

B挽き方

挽き方はすりつぶしと切り刻みの二つに分かれ、それぞれの機械がグラインドミルとカッティングミルです。家庭用の手回しミルはグライントミルで、電動ミルはカットミルです。挽くとき大切なことはシルバースキンの処理です。シルバースキンとは、コーヒー豆の縦の割れ目まで巻き込んでいる渋皮で、混ざりやすいのですが、カットミルでは静電気と風圧でかなり除去されます。

C点て方

同じ豆でも点て方によりかなり味が異なり、こだわられる方が多いところです。点て方としてペーパーやネルドリップ、パーコレータ、サイホン、エスプレッソなど数え切れないほどの道具がありますが、豆の蒸らし、温度、速度などが味に大きく影響します。一般的に蒸らす時間が短いと、まろやかさがなく、尖った味になると言われます。ゆっくりと蒸らすため、ポットの湯の注ぎ線をいかに細くするかにこだわり、アラジン社のポットしか使わない人もいます。また、ペーパードリップでは1つ穴と3つ穴があり、前者の方が蒸らす時間が長いとこだわる方もいます(メリタ社とカリタ社の違い)。

また、エスプレッソなどの高温での抽出法ではシルバースキンによる渋みがでやすく、渋皮の処理をいっそう気をつける必要があります。

いろいろ方法はありますが、ネルドリップで5人前後を点てるのが一番簡単にまろやかな味になるようです。

特殊な点て方として水だし法(ダッチコーヒー)があります。点滴式に時間をかけて水をポタポタと注ぎ抽出する方法と、水と豆を混ぜ合わせ数時間置いた後に一気に濾し出す方法があります。熱処理をしていないため豆独特の甘い香りが抽出液に移るため、アイスで飲まれることを勧めます。

学生時代のこだわりを思い出しながら少し書いてみましたが、実は今一番愛飲しているのは自販機の缶コーヒーです。(12/7)

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