現場からの発言〈正論・異論〉
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老人医療NEWS第106号 |
地域連携
先日市内の公的病院の院長が訪ねて来られた。新任の挨拶もあったが、急性期病院として更に機能集中していくため、後方受け入れ病院との連携を深めたいとの趣旨であった。それまでにも地域連携室を通じて相互の連携はあったが、始めて直接顔を合わせてお互いの実情を知り合い、どのような連携が可能か話し合った。院内も見学してもらい、遅まきながらこちらからの訪院もお約束願った。
病院の機能分化と集中そして他院との連携の重要性が叫ばれ、それぞれの病院が地域の中で役割を定め、その機能に磨きをかけてはいても、いざ連携となるといろんな事情が絡みぎくしゃくすることも多い。当院はケアミックス型で一般病床はあるが、療養病床が中心で、二年前に救急告示も返上した。手術室の使用も極端に減り、そうなると自院で対応困難な疾患の発症で急性期病院にお願いすることも多くなったが、最近公的病院の地域連携室の対応が非常によくなったと感じている。時間外でも快よく引き受けていただける。そのありがたさを実感しているだけに、急性期病院からの入院依頼には出来るだけその期待に沿いたいと思うが、在院日数短縮や神経難病で未だ症状安定せず現在の自院のマンパワーでは対応困難とお断りせざるを得ず、心苦しい思いをすることもある。最近の入院依頼の病態像をみても、医療機能アップの必要性を感じている。
地域連携がしっかり機能していくには急性期だけでなく療養病床もその機能を分化していく必要がある。大腿骨骨折や脳卒中だけでなく、地域連携クリティカルパスによる連携は今後拡大されるであろうし、神経難病や在宅では困難な終末期の看取りも療養病床の重要な役割である。それぞれ連携先から信頼して任される専門性に富んだ機能が必要であろう。
機能分化が進む程に重要なことは、その情報を如何にそれぞれの医療機関や地域の人々が共有出来るかにある。前回の医療法改定で都道府県が医療機関の診療情報を住民に知らせるよう義務付けられたが、現在の情報では表面的な所しか解らない。各医療機関もホームページや診療情報案内などで自院のPRは出来ても信頼度は定かでない。
住民がいろんな情報を得ていただくことは当然だが、やはり重要なのはかかりつけ医であり、病院なら地域連携室のMSWや主治医の役割である。他院の情報は同じ地域にあっても意外とわかりにくい。私共では地域連携室のスタッフに病院や施設の情報収集に、又医師にも出来るだけ地域の勉強会や集会に出席し近隣の先生方と顔見知りになるよう努めてもらっている。当院では取り組めていないが急性期病院のように地域連携医会など開業医との連携が持てればなおよいと思う。
当院では医療母体を持たない介護施設との連携に力を入れており、連携先の特養などの勉強会に講師を送り連帯感を深めている。
いずれにしても、機能分化が進めば地域連携の重要性は更に増大する。急性期と在宅との川中にある我々は、連携先の医療機関や施設、そして何より患者さんや家族の方々の信頼を得られる機能を持たなければならない。