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老人医療NEWS第104号

療養病床はどうなるのか

民主党が圧勝した。政権が変った。後期高齢者医療制度は見直すし、療養病床は削減しないというのが民主党のマニフェストにあるので、そうなるのであろう。しかし、これから先どうなるかは、まだ分からない。
  まず、後期高齢者医療制度については「老人保健制度に戻す」などという大声だけが聞こえるが、戻せばよいというものでもないだろう。一九七三年に老人医療無料化をしたものの、老人医療費が急増し、財政問題が生じた。もっとも大変だったのは、国民健康保険の保険者でもある市町村だった。
  「国の制度なんだから、国民健康保険制度自体を国営にするか、県が直営したらどうなんだ」「これから急増する高齢者の医療費を財政力基盤が弱い町や市におしつけるのか」それはそれは、大変な反対運動が全国の市町村長らによって、展開された。そんなこともあって八三年からは老人保健法が本格実施された。が、この制度もマイナーチェンジを繰り返してみたものの、まずは健康保険組合のパワーがなくなり、企業に高齢者の医療費の一部を負担させることに明らかに限界が生じてきた。結局は、高齢者に負担をお願いしたり、医療費支給年齢を引き上げたり、市町村以外の地方自治体の責任ということで着地点を見つけることにした。だが、財源問題は解決することはできないにも関わらず「国から地方」という流れで、後期高齢者医療は、国から地方自治体の責任という事にし、公費を投入することでやっとまとまった。
  二〇〇八年四月に高齢者医療確保法が施行されたが、福田元首相の発した「名前が悪ければ、長寿医療制度にすればよい」の一言で制度に対する信頼は急激に萎んでしまった。おまけに、後期高齢者医療制度の診療報酬への評判はあまりにもひどいものであった。
  こんなわけで、後期高齢者医療制度を見直すことは、必然と言えば必然だが、問題はどう見直すかである。
  ただ、老人保健法に戻せば良いという単純なものではないし、この七年間で、我が国の状況はあまりにも大きく変化してしまっている。正確に言えば、戻りたくても戻れないと
いう状況だろう。
  このように考えてみると、療養病床についても必然と言わざるをえない。民主党が「療養病床は削減しない」というのであるから減らされないと国民は信じていることになる。〇九年の介護報酬改定で、介護保険施設も一安心したようだが、〇六年の引き下げの影響もあり、介護保険施設数の増加が、手控えられているように思う。なぜならば、新たに投資しても回収できないリスクがあるからである。
  このような介護保険施設の状況は、療養病床についてもあてはまるように思う。これから療養病床を新設するのは、制度のゆくえが明らかでない分不安だ。それでも、急性期病床の生き残りに敗れた一般病床からの転換組の流入が予想される。
  特別養護老人ホームは、いくら建設しても「不足だ」という。そして老健施設も「すぐには入れない」という。もしそうならば、療養病床を減らすと、行き場のない人が増えるということになるだろう。
  問題は、介護療養型医療施設の廃止問題だ。この廃止を廃止するかどうかは、民主党のイニシアティブである。ただ、どうやってやるのかという手続論もよくわからない現状では、どうなるのか全く理解できない。
  当然、介護療養も療養病床なので「療養病床を減らさない」ということは療養病床を強権的に老人保健施設にしないと理解するのであろう。しかし介護療養の廃止を廃止するとは民主党のマニフェストには書いていない。どうなるのだろう。
   *へ ん し ゅ う 後 記*
  十一月十四日東京厚生年金会館で第三十二回全国シンポジウムを開催する。テーマは、「医療と介護の絆を考える これでよいのか介護保険!」。座長は当会の齊藤正身会長。詳細は当会ホームページをご覧の上、皆様のご参加をお願いしたい。

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