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老人医療NEWS第102号 |
本年四月十三日付で厚生労働省老健局老人保健課が「要介護認定の見直しに伴う経過的措置の『第一回要介護認定の見直しに係る検証・検討会』における議論について」という事務連絡を出した。その内容は、本日、見直し後の要介護認定方法の検証を行う検討会が開催され「今回の要介護認定方法の見直しに伴う経過措置の案をお示ししたところであり」、「今後、可能な限り早急に当該経過措置の関する通知を発出するので、御承知いただきたい」というものであった。
その後、四月十七日付で「要介護認定等の方法の見直しに伴う経過措置について」老発〇四一七〇〇七号老健局長通知が出された。その内容は「要介護認定等の方法の見直し直後において、利用者に引き続き安定的なサービスの提供を可能とする観点から、見直し後の要介護認定等の方法の検証期間において、要介護認定等の方法の見直しに伴う経過的な措置を市町村において実施できることとするものである」というものだ。
どういうことか良く理解できないが、四月一日から要介護認定の方法を変更したが、利用者や認定調査員への周知徹底が不足しているし、要介護認定の公正性や透明性の観点から再度検証し、それまでの間は経過措置を実施するといっているのであろう。
経過措置は、すでに認定を受けている人で、更新時に要介護度に変更が生じた場合で、申請者が希望すれば更新前の要介護度に戻すことができるというものである。
何とも奇妙な話だと思う。認定方式の変更は、今回が三回目であるが、なぜか今回は「要介護度が低く出る傾向がある」、「介護費用抑制のため認知症の人々の要介護度を低くしようとしているのではないか」という一部の人々の主張が、国会の場で野党議員から質問され、なんとも腰ぬけのような経過措置を出したということらしい。
選挙前であり、年金問題の追及も後期高齢者医療制度に対する反発も一段落したかの時期に、要介護認定システムがヤリ玉にあがったといってしまえばそれまでだが、老健局の対応は、すばやかったように思う。
経過措置は、検証がすむまで続けられるということから、どのくらいの人数が更新前の要介護度に戻す申請をするのかわからないが、どのようになるのかに注目したい。要介護度は、ひとつの判断であり、なにも絶対的なものではない。また、以前より低くなるか高くなるかといったことでいえば、システムの問題もある一方で、本人の状態が変化している場合が多く、以前の要介護度とまったく同一でなければならないというものではない。介護保険の利用者だけの利益を考えれば、高い方がよい場合もあるが、低い方が有利ということもある。低くなって要支援になってしまうと介護保険施設が利用できないとか、支給限度額が下がるとサービスを自ら少なくせざるをえなくなる。逆に、支給限度額に対して五割程度のサービスを利用している人々は、要介護度が下がれば利用者の一割負担は少なくなる。
厚生労働省が定めている基準の全てが公正で透明性が高いかどうかということになれば医療療養の医療区分も、急性期のDPCも看護必要度も、それ以外にも超重症心身障害児や障害判定などいろいろある。
何か基準を決定しないと、仕組がうまくできあがらない。医学の世界で判断基準が多くの人々によって研究され、それこそ世界中で使用されている。老人医療の世界も同様である。
批判されたので経過措置を導入するのはかまわないが、要介護認定システムは、今後どうするのかといったことも、そろそろ考えて欲しい。 (21/5)