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老人医療NEWS第101号 |
今年四月一日より介護報酬が改定され、介護人材確保の実質的な第一歩が踏みだされた。しかし、三%の引き上げだけで対策が十分であるとは考えられない。
うわさの範囲だが、自民党・公明党も何かしなければならないと考えているらしいし、民主党も何とかしたいと議論しているらしい。総選挙前である。そして、大混乱が予想されている。政治は政治でいろいろな議論があることは承知しているが、失業率が高くなり、生活不安が拡大している現状では、何とか政治が安定し、金融機関をはじめとする企業の信用と業績が好転することが国民から強く求められていると思う。
しかし、まずは総選挙のゆくえであり、なにしろ当選するための選挙戦を有利に展開しなくてはならない。総選挙がきびしければきびしいほど、有権者の要求には「なんでもいたします」というのがキャッチフレーズになる。その一方で、所属する政治団体には「選挙戦を闘える政策が必要だ」と要求するという状態になっているようだ。
医療関係者や医療団体が、政治家に活発にアプローチするというのは日常的なことであるが、最近は、政治家や政党から「意見をききたい」「現状をご教授下さい」というような、あまりの低姿勢に驚くばかりだ。
注意しなければならないのは、選挙前の顔が、医療以外にも全方向に向いているであろうことと、多分、実効性がない政策でも安うけあいされかねないことである。
可能なのかどうかはわからないが「特別養護老人ホームの再築時や新築時の補助金を復活させる」「介護人材確保対策のため介護職員を雇用している事業所に新たに直接補助金をだしたらどうか」「介護療養型医療施設の廃止を延期してはどうか」「いずれにせよ介護報酬引き上げは、介護保険料引き上げになってしまうので、有権者に迷惑がかからないようにすることが必要だ」。
これらは、永田町周辺の議論で、霞ヶ関の厚労省にも打診があるらしい。いずれにしても、なんでもありの世界で、これまでの制度改革はなんのためであったのか疑問になる。ただし、ひょうたんから駒がでたらどうなるかも考えておく必要がある。
特養への補助金復活は、あるほうがいいのかもしれないが、またまた社会福祉法人との経営格差が生じてしまい、これまでの方針と逆になるばかりか、民間活力を活用しない方針になってしまう恐れがある。
介護保険事業所への直接補助金というのもあり得るのかもしれないが、補助金で、行政がパワーアップすることは好ましいことではない。
介護療養型医療施設の廃止の延期も、やろうと思えばやれるのであろう。しかし、その後のことはどうするのかまったくわからない状態では、なんとも判断できない。
介護保険料の引き上げに慎重なのは懸命な判断だといえそうである。しかし、これらの事柄はすべて財政発動が必然であり、すでに多額の公債を発行している現状で、さらに公債残高を積み上げることが、いつまで可能なのか、いつかはツケは支払わなければならないであろう。そして、消費税引き上げと、これらの施策との関連がどうなるのかを十分検討する必要があると思う。
医療費に対してよりは、介護保険の方が政治家は関心が高いようであるし、高齢者の票がどれだけ多いのかもわかる。しかし、選挙目あての財政発動オンパレードに対して、単純によろこぶことはできない。来年の診療報酬改定財源はどうするのか、そして、三年後の医療・介護報酬の同時改定の財政対応をどうするつもりなのか、十分検討する必要がある。
安易な財政発動をエサにし、選挙後は知らん顔の政治家はダメだ。(21/3)