現場からの発言〈正論・異論〉
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老人医療NEWS第103号 |
ルームキーパーの導入
千里リハビリテーション病院が開設して早一年半が過ぎようとしている。二十年病院運営をしてきて、いろいろ思うところを盛り込んだ病院つくりをしているがなかなか理想どおりにはいかない。工夫のひとつとしてルームキーパーを導入してみた。よく看護師や介護士から「もっと患者さんのもとに行きたいが時間がない」という声が聞かれる。たしかに彼らの仕事は膨大であり、個室が多い病院などでは当然部屋数が多く、トイレや個別浴槽なども増え、療養環境はどんどん良くなる反面、清掃やごみ捨てなどの業務も増えている。
こういった看護、介護業務には患者さんに直接かかわる直接看護と、記録やカンファレンスなどの間接看護がある。それらの業務のなかで看護師、介護士などの専門職でなくても出来る業務をはずせば時間の余裕ができると考えたので、ルームキーピングの専門業者を外注で導入した。ルームキーパーさん達の仕事は、病室内、洗面台、トイレ、浴室の清掃、ごみ捨て、ベッドメーキング(シーツ交換)、タオル、洗面用具などの備品設置などである。
実際にルームキーパーを導入して看護師、介護士の業務にどのような変化があったかを調査した。元来の業務では介護士一人の一日業務時間四八〇分中の一七〇分を掃除、ベッドメイク、ごみ捨てに費やしている。ルームキーパーはそれらを三〇〇分かけて行っている。この結果から平均一日一七〇分を直接看護、介護やカンファレンスなどの時間に充てることができる。結果としてトイレ誘導や、入浴、食事介助、散歩、会話など患者さんに余裕をもって関わることができるようになった。
ルームキーパー導入を、実際スタッフたちがどのように感じているかアンケート調査を行った。@看護師、介護士が専門家としての本来の職務に専念できやすくなった。A仕事に対する意欲が出る。B余裕をもって業務に当たることができる。C清掃の専門家が行うためきれいな仕上がりになる。などとメリット面の回答が多いが、委託費用がかかるというデメリットもある。
今回の介護報酬改定では、介護保険関連施設の介護職員給与に充てるための改定が行われた。しかし、スタッフ人員を規定定数以上配置してがんばっている病院や施設ほど、期待されているような給与アップは難しい。また他の職員とのバランスもあり、介護職員だけを給与アップするわけにはいかない。そのうえ、二年後にはどうなるかわからないという不安要素も大きい。
元をただせば今回の改定は介護職員不足解消のための処置であるが、報酬の安さももちろんだが、国家資格を持つ介護福祉士がやりがいのある仕事ができているかどうかということも仕事が続かないことの大きな要因になっているのではないかと思う。看護師、介護士を外国から受け入れることも一つの方法かもしれないが、人員不足を解消できるほどのこととは思えない。
それよりも、仕事の内容を振り分けて、看護師にしかできない仕事、介護福祉士が行うべき仕事以外を他の人員で行い、仕事に対するモチベーションを上げるほうが意味があるのではないかと思う。時間的、精神的余裕があってこそチームアプローチは成り立つと思う。
効果がはっきりしない報酬改定より「この業務に対する委託費」というような明らかになるものに報酬をつけてほしい。(21/7)