老人の専門医療を考える会 - 全国シンポジウム - 内容
第34回 医療と介護の「絆」を考えるIII -介護の現場から医療に期待する-   平成22年11月27日 東京研修センター
シンポジウム冊子(PDF版:5.2MB)

  
13:30 開会挨拶 齊藤正身 老人の専門医療を考える会会長
13:35 講演 「介護保険部会の審議から」
  齊藤正身 介護保険部会 委員
講演スライド(PDF)
14:15 休憩
14:25 プレゼンテーション(1)「特別養護老人ホームの立場から」
  奈良 高志  文京大塚みどりの郷 施設長
講演スライド(PDF)
14:40 プレゼンテーション(2)「ケアマネジャーの立場から」
  崎山 賢士  日本介護支援専門員協会 居宅介護支援事業所部会 部会長
講演スライド(PDF)
14:55 プレゼンテーション(3) 「小規模多機能施設の立場から」
  佐野 眞一  鶴巻高齢者複合施設ケアタウンあじさいの丘 居宅サービス部 次長
講演スライド(PDF)

15:10

プレゼンテーション(4) 「グループホームの立場から」
  長井 巻子  医療法人社団三草会 在宅支援統括事業部 副部長
講演スライド(PDF)
15:25 休憩
15:40 シンポジウム:医療と介護の「絆」を考えるIII 〜介護の現場から医療に期待する〜
  シンポジスト:奈良高志、崎山賢士、佐野眞一、長井巻子
  座長:斎藤正身(老人の専門医療を考える会会長)
16:30 閉会挨拶 藤井 功 老人の専門医療を考える会副会長
 
開会挨拶 齊藤正身 老人の専門医療を考える会会長
大川

 本日、総合司会を務めさせていただく、南小樽病院の大川博樹と申します。どうぞよろしくお願いします。北は北海道から南は鹿児島まで、全国から集まっていただきまして、お忙しい中、本当にありがとうございます。

 老人の専門医療を考える会第34回全国シンポジウムの大きなテーマは、前回までに引き続き「医療と介護の“絆”を考える」としており、パート3は「介護の現場から医療に期待する」ということで、シンポジウムを開催したいと思います。

 まず、老人の専門医療を考える会会長、霞ヶ関南病院理事長の齊藤正身よりごあいさつ致します。よろしくお願いいたします。

齊藤

 皆さん、こんにちは。今、ご紹介がありました、齊藤でございます。今回の第34回全国シンポジウム、前回までと引き続き同じ題で「医療と介護の『絆』を考える」となっておりまして3回目となります。前回のお話は、「地域で安心して暮らしたい」という題でさせていただきました。今回は、ご意見が多くありました、敷居の高さや壁を感じやすい介護サービス提供者の医療にたいするイメージから「介護の現場から医療に期待する」を題とさせていただきました。今回はシンポジストとして、特別養護老人ホーム、ケアマネジャー、小規模多機能施設、グループホーム、それぞれの立場から現場で働かれている4名の方々に発表していただこうと思っております。

 一昨日、介護保険部会が部会長預かりという形ではありますが、終わりました。介護保険部会の審議について委員として出席させていただきました。団体の代表ではなく、長く介護保険制度にかかわってきたことが理由なのでしょうか、そういったことから参加させていただきました部会について、今日は私見も含めてお話させていただきます。

 この会場は、老人の専門医療を考える会の事務局に併設の会場となっております。まだこちらに移ってきてからそれほど日が経っておりませんが、このような大きな会場もとれるようになりましたので、事務局の方からは何かあればいつでもご利用下さいと宣伝するようにと言われております。是非ご活用いただければと思います。よろしくお願い致します。

 それでは4時半までという時間になりますが是非いろいろなものを得ていただくということを中心に進めていきたいと思いますのでよろしくお願い致します。どうもありがとうございました。

 
講演「介護保険部会の審議から」
齊藤 正身 (介護保険部会 委員)

 介護保険制度の動向について、社会保障審議会の介護保険部会が一昨日終了しましたので、そのことを中心にお話させていただこうと思っています。

 今回、社会保障審議会の介護保険部会というのは、任期は2年ということで平成22年5月31日から始まりました。先日のまとめが終ったというだけであって委員としての仕事は今後もあるのかと思いますが、介護保険関連では介護保険部会と、もう1つ、介護給付費分科会というものがあります。介護給付費分科会はまさに介護報酬のことを中心に話し合っていく場ですが、制度の改正、介護保険の制度をどう改正しようかという時にはこの部会が活動するということで、久しぶりに活動が始まったということであります。

 第25回からということで、5月31日から始まりましたが、先日の11月25日までに13回にわたって部会が進められました。委員は28人で、いろいろな立場の方々です。サービスを利用される側、あるいはサービスを提供する側、そして学識経験のある方々、各種団体の長の方々、そして今回の特徴としては、経済、医療経営なども含めた委員の方々で、いつもより多くの方々が参加されていた感じでありました。

 第25回から進められていって内容は細かく書いておりませんが、第26回地域包括ケア研究会は、前回の介護保険制度改正の時に地域包括ケアが大事ということが出まして、小規模多機能など、いろんなサービスが生まれました。もう一押ししようということもあり地域包括ケアシステムというのが今回提唱され、これからは介護保険を地域単位でより一層考えていこうということです。わかりやすく言えば、地域によってあまりに差がありすぎます。それは都市部とそうではないところの差も勿論ですし、地域によってサービスの質、量がまったく違います。それを一律の制度の中で動かしていくのは如何なものかという基本的な考え方があって、ある程度、地域に柔軟性をもたせて運営できるようにしていったらどうかというのが今回の主旨だったと思います。

 しかし、本来は財政の問題が一番大きいような気がします。私たちの介護保険部会は5月31日から始まって進められていったのですが、途中から何となく、それまでは夢を語れる雰囲気が多少あったのが、段々そうでもなくなってきて、それはお金がないから無理です、今後の情勢次第です、という話が非常に多くなり、なんとなく窮屈な議論になったように思います。実際、それは第37回、一昨日の総まとめの最後に老健局の局長がご挨拶の中で窮屈な議論になったことを申し訳なく思っているというようなことを言われていました。まさにそうだったと感じます。厚生労働省自身も感じていたのではないかと、厚生労働省の立場に立ってという意味ではないですが、その辺は同じような意識だったように思います。

 このように何回も議論を重ねていったのですが、私の立場は、本来老人の専門医療を考える会の会長をとして出たかったのですが、そうではなくて個人として出てほしいというということで、学識がどこにあるか自分ではよくわかっていませんけれども学識経験者として、ニュートラルな立場で話をしてほしいと言われ、そういう気持ちで終始いたつもりです。私は介護保険という制度が始まる時に、皆さん方がよくご存知のケアマネジャー、つまり介護支援専門員という資格制度を作る、あるいは要介護認定のツールを作るというところで国の委員をつとめていて、10年ぶりに委員としての復活でした。10年ぶりに国の委員になったということもあり、ある意味、責任を感じておりましたので今回はお受けしたのですが、もともと介護保険制度に関わりを持つきっかけになったのは、「公的介護保険制度を作るにあたって何としても大事なことはリハビリテーション前置主義」という言葉を、その当時の担当の方からお聞きして、それだったら手伝ってもいいかと、そういうような意識もあったものですから今まで関わってきました。

 介護保険の中にリハビリテーション、地域リハビリテーションの考え方、地域の皆で関わりを持ちながら、そういう意識を持って介護保険には携わってきたものですから、リハビリテーションについての提案なり意見というものを、私は部会の中で何回かさせていただきました。特に8月23日と8月30日は、資料を提出させて頂いて、お話をさせていただいたのですが、28人もいると1人3分くらいしか毎回話せません。一回手を挙げて、次に二度目に手を挙げても指してもらえません。一回にどれだけ話すことができるか。一回目の時に自己紹介があったのですが、自己紹介も3分以内にと言われ、3分で話したのですが、その中で高齢者のリハビリテーションについてお話をさせて頂きました。終ってから気付いたことですが、リハビリテーションという言葉を使ったのは28人中、私一人でした。それほどリハビリテーションということに対して、それどころでないと皆さん思っていらっしゃったのかもしれません。

 しかし、私の基本的な考え方はどういうことかというと、介護保険という制度は決してお世話の保険ではないとずっと思っています。お世話をする保険ではない、その方が自立をしていってそのために援助をしていけるのか、サポートしていけるのか、そういうものだと思っていました。だから、唯一リハビリテーションが今あることを改善できる、そういう大事な役割をもっているものと思っていました。そういう意味で発言をしたのですが、リハビリテーションについての発言に対してはあまり反応がなかったのがちょっと寂しかった、裏を返せば、言うとおりになるのかなと思ったりしながら話はしていました。

 さて、その話はまた後ほどするとして、介護保険制度見直しの基本的な考え方というのを今回出したことになりますが、まとめとして、どんなことが出てきたのかいうと、まずは第5期の介護保険事業計画に向けた制度の見直し。これが今回の部会の仕事だったのですが、この見直しに関しては見直していくのか、一つが地域包括ケアシステムの実現に向けた取り組み、基本は地域包括ケアシステムというものに置くこと。このシステムをどのように理解するか非常に難しいところも実はあるのですが、新たに出てきたものではなく前々から言われていたことではあります。それに向けてどう取り組むかということと、もう一つの柱が、給付と負担のバランスをはかることです。サービスをどう給付していくのか、それに対してどう負担していくのかを見直していこうということが今回の大きなポイントであります。

 しかし多くのことは、この給付と負担のバランスをどうはかるかということに終始したように思います。そうなった理由の一つとしては、この部会が始まってからですが6月22日に閣議決定され、ペイアズユーゴー原則というものが出てきて、まず財政があり、サービスを使ったらそれだけの負担があるのは当たり前だというような主旨で、それが社会保障に当てはまるということが出てきてから、少し部会の話合いがトーンダウンしていったような、委員の人達が決してそれにすべて賛成していたわけではないのに、何となくそれが当たり前のように進んでいったように思われます。ただ、私も委員の1人ですから、部会で話し合ったことについて「私はそんな気はなかった」と言うつもりはもうとうありません。やはり委員の1人として責任は負っていきたいと思っております。

 今回その中で、具体的には持続可能な制度をどう作るかということ、これが財政負担のあり方になるわけですし、それから地域の実情に応じたシステムの確立、地域包括ケアシステムということもありますが、今まで国主導できていたものを介護保険者の機能や自治体の役割を強化する、そちらのほうを今回、制度の中にうまく盛り込んでいくことができないだろうかということ、それから良質で効率的な給付のあり方。私の印象だけかもしれませんが、非常に難しかったように思います。良質で効率的な給付とは何をもっていうのか非常に難しいです。委員1人1人の立場によって、良質とか効率的という意味合いが違う、受け止め方が違うということを、今回13回出席しながら改めて感じました。

 地域包括ケア推進のためにというスライドの下にあることは、介護保険部会が始まる時に宮島局長から、こういうことを今回は話し合ってほしいということで、出て来たわけですが、実際にはどのような話になっていったのかというと、現状の課題として要介護認定をどうするか、支給限度額はこのまま残すものか、要介護認定も廃止という話も出ました。サービスの再編、医療と介護の役割分担、まさに今日の話に繋がるかもしれませんが、処遇の改善については今のような考え方でいいのか、安定した経営基盤を作るにはどのようにしていったらいいのか、こういうことが具体的には部会の中では出てきたように思います。ただ結局、このことも財源はどうするのかということにどうしてもなりがちであって、もう少しじっくり色々な話をしたかったというのが本音でありますし、介護保険制度、年明けの国会に合わせて一通りの取りまとめが出ましたが、その制度を変えなくても柔軟に対応していけるようなことがいくつもあると思うので、そういうことに関して個人的には関わっていきたいと思っています。

 さあ、この財源は?ということになるのですが、ここが先ほど言った、将来に渡って安定的に制度を運営し、また高齢者の暮らしを支えるために必要な給付の拡充をする際には、平成22年6月22日に閣議決定された財政運営戦略に記されたペイアズユーゴー原則に沿って必要な負担像に見合った財源を確保することが求められる。こんなことが書いてありました。どういうことかというと、ペイアズユーゴー原則というのは下に書いてある通り、歳出増または歳入減を伴う政策の新たな導入、拡充を行うという、何か新しいものを作ったり、それを充実させようとした時には、それは原則として恒久的な財源を確保するものとする。導入、拡充をするときにはそれだけお金がかかり、負担もかかる。財源確保の為に、それだけ負担をしてもらわないといけない、そういうことを言ってきたわけです。

 おそらく初めは、私たち委員にとってはそういう話から入っていなかったので、ある意味、寝耳に水だったところもありますし、経済学者さんたちは社会保障だって例外ではないのだという言い方をされている委員の方々もいたりして、なかなか意見に一致を見ることができなかったように思います。このあとお話しをしますが、出された介護保険制度の見直し案に関しては両論併記というような形で納めざるをえないということが結構ありました。ペイアズユーゴー原則でいくべきだという意見もあれば社会保障にペイアズユーゴー原則をあてはめるのは如何なものかという意見もあり、両論併記のような形で出てくることも随分あったように思います。この介護保険制度の見直しについてということで、今日一つ一つ説明をしていく時間はございませんし、おそらくこれからあと1週間くらいしたところで部会長が整理をした形で公表されると思います。公表する前に委員には1回送って下さるそうですが、送られたものに意見を言っても修正はありませんと言われたので、なんで送ってくるのかよくわかりませんが、そういう話でありました。

 この見直しについてですが、要介護高齢者を地域全体で支える為の体制の整備、まさに地域包括ケアシステムの構築ということで1番から8番までの項目が示されています。一つ一つのことを今日はなかなかお話できなくて申し訳ないですけれども、いろいろ変えていこうということがあります。もう1つは、こちらのほうが具体的に話しやすいでしょうか、サービスの質の確保・向上については、今日は介護支援専門員の協会のほうからもシンポジストとしてお見えですが、ケアマネジメントについて、ここではとても議論が白熱というより、早い話が、今までケアマネジャーさんがケアプランをたてたり関わったり、負担なしできていたわけです。それが介護保険制度の根幹に流れていた考え方で、本来は公的な機関がやっていいような仕事なわけです。それが、自己負担してもらうようにしようという話が唐突に出てきました。これに対しては反対される委員のほうが多く、反対、賛成というよりも、そんなにすぐ「うん」と言っていいことではないのではないかという意見が多かったように思います。まだまだ議論がつきないところかもしれません。

 それから要介護認定についてですが、家族の会と高齢者に関わるサービスを受ける側の方から「要介護認定は廃止すべきだ、そんなものはいらないのではないか」、あるいは「要介護認定はもっと簡素化すべきだ」、そして、事務費が非常にかかりますから「そういうものも見直していくべきではないか」と色々な意見が出てきました。しかしここは概ね要介護認定について今回はいじらないだろうと、というか、いじれないだろうというのが、実際に私も合議体の長をしていますから感じますし、要介護認定に関わる人達はおそらく、今変えないでというのが本音です。去年変わったばかりですから、ここでまた認定の手法が変わって訳がわからなくなるのはちょっと困るということもあります。

 それから要介護度を5段階、7段階を3段階にしたほうが簡単でいいということ、私も、もともとそのように思っていた時期がありましたが、これはなかなか大変なことで、早い話が、松竹梅みたいな3段階になってしまうわけです。3段階になると何が起こるかというと1段階ごとの金額の差が大きく出ます。そうすると今までは2〜3万円くらいの差、5万円以内の差だったものが、3段階になると10万円くらいのお金の差になってきてしまいます。そうすると、皆、要介護度3を下さいと言います。そういう話になってしまいますので、そうはいかないだろうというのが1点あります。

 また、要介護認定なしでいいのかというと、本来介護保険という制度は冒頭でお話したように、どう自立していくかということ、その手助けをということがその根幹の考え方であり、その考え方からずれて、とにかくサービスを受ければいいと、たくさんやってもらえればいいという感覚になるということは怖いことです。そういう意味でも認定を今すぐなしというわけにはいかないだろうということがあります。認定のあり方というのは今後続けて考えていくことは必要だろうと思います。

 ちなみに、部会でプレゼンテーションさせていただいたのですが、今年の6月にドイツに行ってきて、向こうの要介護認定の担当をされていた先生とお話をしたのですが、ドイツは3段階で、日本と大きな違いは現金給付があるということです。例えばデイサービスに通う時に、行くまでの往復を家族が代わりにするということになると、その分のお金が出る。実際に発生した介護についてお金が出ていくシステムになっているわけですけども、ドイツはなんと今、3段階をどうやったら5段階に出来るかという話をしている。やはり差がありすぎて問題が多くあります。それと認知症の人に対しての評価をもっときちんとしたいというようなことで、各々どこの国も非常に悩むところではありますが、そういうことも話の中には出てきましたし、私も話をしました。

 要介護認定に関して1つだけ、どうしても考えなければいけない、と私が個人的に思っていることは、どこの国でも、日本以外の国でも要介護認定を受けたらサービスを受けるのは当たり前です。あるいは現金給付を受けたりします。日本はとりあえず要介護認定を受けておこうという人が非常に多いという現実があります。これはすごく事務費がかかっています。私の住んでいる市では要介護認定一人頭にかかる費用は1万円から2万円だと言っていました。そうすると1つの合議体で1回40名の方を認定、審査をして、その中で実際、今サービスを使っておらず医療保険の施設に入っている、医療機関に入院している、あるいは、在宅にいるがサービスを使っていない。けれど有効期限がきたからとりあえず取ろうという人達が、例えば40名を1日で審査をすると40名のうち少なくとも最低5、6名はいます。それを全部合わせていくと、私の市では12の合議体がありますから、毎週のように60人くらい、60万から120万のお金が余計にかかっていく。それを年間通して考えていけば、この金額たるや、すごいことになるだろうということを考えなければいけない。

 どうしてそうなっているかというと、地域によってはとりあえずと思うところもあるし、もう一つは実は要介護の人に手当てみたいなものが出る。昔からそういうシステムがあるから、それを要介護認定というツールを使って判断をし、その人たちには手当てが出るというような、サービスを使っていなくてもお金がもらえるというようなことがあります。まさに現金給付になってしまっています。こういうがありますから整理をしていかないといけません。もしそうであれば、要介護認定を基準にして手当てを出すことはやめてほしい、他の方法で手当てならまだわかりますが、これは市町村の考え方ですから、その辺は調整が必要だと思うところです。

 その他、情報公表制度に関して、今までお金を払って情報公表になっていたのが、これは無料になるようです。費用はかからない。これは、ほぼ委員全員一致していますので、情報公表制度に関してはお金はかからなくなるとういうことはあります。そして3番、介護人材の確保とし質の向上、4番、給付と負担のバランスは非常に難しいところです。それから5番、地域包括ケアシステムの構築等に向けて保険者が果たすべき役割。今日は目次しか出しておりませんので、中身が出てきたらご確認いただければと思います。この地域包括ケア推進、システムの構築に向けて、ということに関してはここに書かれているような、例えば訪問看護と訪問介護の連携の下で行う24時間対応の定期巡回、随時対応サービスの創設、訪問看護と訪問介護を一緒に同じところからいくようにしようということ、その主旨は非常にいいことかと思いますが、定期巡回、随時対応サービスというのが、どうもまだはっきりしないところがあります。なかなか直接いっているわけではないということと、人によっては24時間、頻繁に人が変わって知らない人が夜中に家に入ってくるのが困るという話も出てきたり、決して直接入ってくるわけではなくて連絡だけだということ、よく私自身も把握しきれていないのですが、そういうサービスを作ろうということや、介護保険事業計画における医療サービスや住まいに関する計画との更なる連携、実はこの医療サービスとの連携が、今回は介護保険部会で話し合う大きなテーマでした。それには少し時間が足りなかったのと、これから制度を変えなくても連携を深めることはきっと出来ると思うので、より一層これからやっていかなければならないと思うところです。

 そして、利用者負担や保険料の見直し、こういうものを通じて24年度、診療報酬と介護報酬の同時改定がありますから、その同時改定に向けて各々の役割分担や関係職種の連携、サービスの調整などについて更に議論を進めていきましょうということに今回はなりました。ですからまさに今日の話と一緒で介護と医療の絆を考えましょうということが今残ってきたものです。

 実はリハビリテーションに関しても色々な意見を言わせていただきましたので、そのことについて後ほどお話をしていきますが、リハビリテーションに関わる、携わる色々な職種の役割、あるいはどう連携をとっていくかということをこれから作っていかなければと思っています。

 介護保険制度が創設されてから10年が経過しました。より一層、制度が複雑化してきたということは、どなたも認めて下さることで、それに対して利用者にわかりにくいシステムになっている。これは私から言わせると利用者にわかりにくいどころではなく、サービス提供側もわかっていない、わからない、そういうシステムになってしまっている、これを出来るだけ利用者や家族にわかりやすく利用しやすい制度にしようというのが今回の主旨なわけですが、13回の部会に参加して非常に感じていることは、これだけ複雑化してくると簡単にはわかりやすくできないというのが実感です。やはり一つ一つ丁寧に見ていかないとわかりやすくはならないなと思います。その複雑化したものをわかりやすいシステムにしていくことも大事ですが、それよりも、その複雑化しているものを、どうわかりやすく説明していくか、そういう役割を私たちは担っているのか、私たちがその制度を知らなければいけない、今回の同時改定までまだ時間がありますから、その間に十分議論をしていくべきだと思います。

 さて、この地域包括ケアシステムというものですが、これはどういう制度なのか、どういうことを言っているのかということがここに出ています。地域包括ケア研究会のまとめたものですが、これはニーズに応じた住宅が提供されることを基本とした上で、これも初めは、こういう言葉はなかったのですが新しく加わってきました。ニーズに応じた住宅が提供される、ここでいう住宅というのは、自宅だけではなく、第三の住まいといわれるようなものも合わせてのことですが、それがあったとして、その上で、医療、介護、予防だけではなく、福祉のサービスや、そういうものも含めた生活支援サービスが日常提供できるようなイメージをされています。

 ですから、将来的には障害者のことも含めて地域包括ケアシステムの中で社会保障が動いていくようにしたいというのが今回の考え方だろうと思いますが、この地域包括ケアの圏域というのが、概ね30分以内に駆けつけられる圏域と言われています。言いかえると中学校区、この30分以内と初め出た時に、30分以内というのはどのくらいの距離なのか、30分というのは歩いてなのか、走ってなのか、車なのか、いろいろ話が出ましたが、歩いて30分以内、そのくらいの地域ごとに考えようとなりました。ですが、すぐそんなことできるか、救急医療は別ですが、それ以外のものが、その地域ごとの中学校区にすべて置ききれるか、なかなか難しいだろうというのが皆さん思うことだと思います。

 しかし、2025年にはきっとそういうものが出来ているはずだと、そのためにこれから作っていこうというのが今回の地域包括ケアシステムの考え方です。そうなっているはずとここに書いてありますが、なる為にはどうしたらいいか、そのためにはどうなるかというのがここに書いてある内容でして、生活上の安全、安心、健康を確保するということは勿論ですが、出来る限り住み慣れた地域や故郷での在宅生活を継続する、エイジング・イン・プレイスという考え方、これはご自宅でなくても、だからといって急にお子さんが住んでいる地域に移るということではなくて、今まで住んでいた地域のなかで住まいは変わっても引き続き住み続けることが出来るような、そういうもの、そういうイメージ、これをエイジング・イン・プレイスと言うそうですが、そういったところで生活が継続出来るようにしようではないかと、そして介護保険施設というのは、リハビリテーションが充実した在宅復帰支援機能だとここではうたっています。介護保険施設の本来機能、介護保険施設というのは特別養護老人ホーム、老人保健施設、介護療養型医療施設、全部を含めて老人保険施設というわけですが、ここでは老人保健施設の本来機能はリハビリテーションが充実した在宅復帰支援機能。以前は介護保険施設の保健は老人保健施設のことしか書いていなかったです。それが、介護保険施設の本来機能は、と書いてありますから、25年後には特別養護老人ホーム、あるいは介護療養型はないものだという風にきっと考えて作ったのかなと私は思っているのですが、どうなのでしょうか。とりあえず、こういう言い方をしています。ですから、老人保健施設が中心になって施設というのがこれから展開されていき、あとは住まいの中でどのように医療や介護を提供していくかということがイメージとして出てくるのではないでしょうか。それがケアが組み合わされた集合住宅に繋がってくるのだろうと思います。

 それから、サービスのあり方としては在宅限界を高めるサービスの例、在宅限界を高めるという今まであまり聞かなかった言葉、どんなに重い状況になっても出来るだけ家で暮らせるようにという意味が在宅限界ということになるわけですが、そこに24時間、365日、短時間巡回型、小規模多機能、居宅介護の複合型の事業所、これから提唱されていくイメージとして、おそらくこの複合型の事業所がどんどん増えてくるだろうと思います。そういう意味では、病院や診療所が中心になって介護系のサービスをもっていたり、そういうところが手を挙げてくるところが増えてくることは考えられます。

 そして保護型から自立支援、予防型へ進めていくことが大事です。実はこのケアの標準化の保護型から自立支援型、予防型に移っていくというところにリハビリテーションが大事だといえるということであります。介護保険制度とリハビリテーション、ここから先は、私がプレゼンテーションしたものをそのままお持ちしました。そもそも介護保険制度においてリハビリテーションはどう位置づけられているのかということが第一条、第四条、特に第四条の中には進んでリハビリテーション、その他の適切な保健医療サービスを利用することにより、あえてリハビリテーション、それ以外はその他の、という言い方、リハビリテーション前置の考え方というのをここでうたっています。ですからリハビリテーション前置主義ということで介護保険の制度は始まったということで私はずっと理解していましたし、そのように国も言っていましたが、言葉の上で「前置主義」とか「前置」というのはどこにも出ていませんでした。

 今回、13回の部会を経過して「前置」という言葉が入るか入らないかが私の一番大事な仕事だったと思っていまして、なんと「前置」が入りました。入ったのですが、「前置なんておかしい」と言った委員の方がいらっしゃって、私は反論をさせていただきました。そこが実はお世話の保険と考えている人か、お世話をしてもらうと考えている人か、それとも自分達の自立のためのサービスと考えてくれているのかで、リハビリテーションの捉え方が変わるのだなと感じたように思います。こういう考え方のもとに、高齢者リハ研究会から、どんどん話が進んできて介護報酬、診療報酬の上でも位置づけがなされてきました。

 平成18年の時には、医療保険は主にレベル低下にどう対応するのか、介護保険では主にレベル低下しないようにどう関わるのかがリハビリテーションなのだと国では位置づけたわけです。私の個人的な意見としては、介護におけるリハビリテーションの必要性と将来あるべき姿として、特にこの中では2番と5番ということになるかもしれませんが2番の施設、在宅の区別なく、介護の負担を軽減するためにリハビリテーションは不可欠である。これがある意味、「前置」の考え方です。出来るだけ負担を軽くする、介護のサービスが沢山入ればいいということではなくて、少しでもサービス量を減らすことができたり、あるいは関わらないで済むようにご自分の意志で動けるようにしてもらうためにはリハビリテーションは不可欠だという考え方。

 それから5番に示されたように、1つずつの訪問リハビリテーションステーションというのが出来るのではないかという話もありましたし、私のところには、ほぼ毎日のようにメール等で、「ステーションが必要だ」ということを発言してほしいという話が出てきたのですが、だんだん部会に出れば出るほど感じてきたことは、新たなサービスをたくさん作っていくことが一番大事なのではなくて、今あるサービスをもっとより良いものにしていくということをやっていけば、それほど制度を改正しなくてもうまくいくことがたくさんあるのではないかと。そうすると5番のように訪問や通所、短期入所、入所、いろんなサービスを包括的に提供するということが実はとても大事なのではないか、そういう方法をとっていくことも大事なのではないかということを言いたくなりました。そして勿論、利用者側も、いろんなサービスができるということは、いろんなところと契約を結ばなければいけない。ケアマネにとっても大変ですし、そういうことを考えていくと、出来れば包括的に提供できるような、そういう形が必要なのではないか、同じところから包括的に提供するだけではなくて、同じ地域から出ていくならそれを包括的という言い方をして、契約書を1つにするという方法もあるのではないか、きっとそこから発想も広がっていくように思っています。

 ただ、こういう発言をしておきながら、実は部会には出していない言葉ですが、言えば言うほどリハビリテーションは本当に必要なのか自問自答するようになったり、あるいは、その提供量はどう示していったらいいのか、PT、OT、ST、3職種ありますが今のところは一緒くたになっています。リハビリ、訪問リハ、事業所別みたいになっていますが、本当はPTの役割、OTの役割、STの役割、PT、OT、STすべてが揃ってはじめて、もしステーションというならば、それが必要なのかなと思ったり、でも何人くらいいればその地域にはいいのか、提供量はどのくらいあったらいいのか、データがまったくないのが現実で、それをどう作っていくか、これを1年以内に考えていかなければいけないと思っています。

 地域ケア包括研究会の中でもリハビリテーションサービスというのはどういうもの、どうあるべきかということがここに示されていますので是非見ておいていただければと思います。介護保険制度におけるリハビリテーションの提供。これが今回の私の結論であり、やはり介護保険といえどもリハビリテーションを提供するのであれば、現状ではしっかり医師の指示による提供が必須ではないかと思います。海外では指示ではなくて提案、医師の提案という言い方をしている国もありますが、リハビリテーションの大事さというのは専門性や、この先どうなっていくかをしっかり予測する、評価をする目をもつことが大事だと思います。

 リハビリテーション専門職は、さっきも言いましたように各職種の役割があるので、その役割を活かして、なおかつその方々の目で見たもの、あるいは関わってきたその評価をしたことを本人やご家族や携わる人たちにどうアドバイスをしたり提供していくかということが大事であり、直接手をとって訓練をしていくだけがPT、OT、STの仕事ではないのではないか、そうあるべきではないか、提供の手法も継続的な提供も漫然とただ提供していくのではなくて、例えば月1回、3ヶ月に1回でいいから評価をきちんとしていき、毎月関わっていく、毎週関わっていく、ということばかりではなくて、そういうことも今後考えていくべきではないかと思います。

 それから既存のサービスをうまく使っていくことによって制度を変えなくてもやっていけることも結構あるのではないか。通所リハから訪問リハがいくようにしたり、あるいは特別養護老人ホームや通所介護に訪問リハがいくようにしたり、いろんな方法がまだまだあるのではないか。シドニーではナーシングホームからバスで通所リハへ通ってくる、デイホスピタルへ、そこでリハビリを受けて帰る、あるサービスをうまく使っています。そういうことをもっと日本は考えていくべきではないかと思うところです。

 地域包括ケアにおける介護医療連携、今日のテーマに関わることでありますが、地域包括ケアシステムの実現に向けて、おそらく新たなサービスを創造するということも勿論大事だろうと先程から出ているようなお話です。しかしこれから、より重度の方が重度で在宅に帰っていく、もう既にそうです。この10年間で重い方が在宅で暮らしている方が増えました。本当にこのような新たなサービスだけで対応出来るのかといえば、前回の介護保険制度改正で新たに出来たサービスが本当にうまく出来ているかというと、大変申し訳ないですが、なかなかうまくいっていないのが現状で、今度できる上の2つが出来たからといって解決はしないと思います。それだけでは解決はしない、もっと考えていく、重介護、重症、重度の認知症、色々な方々が増えてきますから、こういう方々に対してどうするのかということになるわけです。

 今、現場で何が起こっているのかというと、実は閉じこもりが増えている。訪問系のサービスはどんどん増えてきていますが、ご本人の立場で言うと、家から1歩も出ない方々がすごく増えている。介護保険制度が始まる前に言われていたことです。介護保険制度が始まる前に閉じこもりが多く、廃用症候群をつくったのが困りました。また、訪問系のサービスに入っていても、その方にとっての社会とか外に出るということがほとんどなくなってきている。それは何とかしていかなければならないということになると、新たなサービス、訪問系のサービスをつくっただけではうまくいくわけはない。やはりそれには既存のサービスをどのようにうまく使っていくのか、通所リハの医療機能を活かしたり、あるいは通所系サービスの役割分担と連携体制を強化したり、それから老人保健施設の役割、老人保健施設がカギを握っていると思っているのですが、老人保健施設が在宅への目を向けてどう関わりをもっていくのかということ。そして、それを包括的に提供できるような体制をつくっていくことができるかということが重要だと思っております。

 介護保険におけるリハビリテーションの提供は先程言ったようなことがここに書かれていますが、こういうことは専門性や有効活用がテーマだろうと思います。それから、続いてここに書いてあるようなリハビリテーション専門職のことや提供の手法に関しては、連携や専門性のことがきっとポイントだろうと思います。私はリハビリテーション前置の考え方というのは今あるものの有効活用をどうしていくのか。それから専門性をどう高めていくか、専門性を本当の意味で活かしていくのか、これは漫然と関わっていくのかということではなくて楔のようにうまく関わっていくのか、そういう意味です。

 それと連携。今日のテーマにもなりますが、他機能との間、それから類似した機能との間、そして、というふうに書きましたが、こういうことをこれからやっていくべきではないか。介護保険部会の皆さんには私の話はどれだけ通じたのか、まだまだ力不足だったように思いますが、リハビリテーション前置の考え方というのが、実は財減、負担を軽減する役割も担っているということをもっと訴えていかなければいけないと思います。私が一番心配していることは何回も言うようですが公的介護保険制度というのは単なるお世話の保険ではないということがとても大事だと思う。そういう主張がどんどん通っていって、みてもらうのがあたり前で、サービスはどんどん充実させてくれ、でもお金は払わない、ということはやはり通じないだろうと思います。それよりも本来受けるべきサービスはどういうサービスで、そしてどれに関してはどれだけ負担を、ということはある意味仕方がないこと。そうでないと社会が成り立たないのではないかと私は思っていることです。公的介護保険制度であれば、そこのところを忘れてはいけないということです。

 お時間が過ぎましたので、最後に1枚だけどこに行ってもお見せするのですが、オランダにアルツハイマーカフェというのがあります。どういうところかというと修道院全体が認知症の施設になっています。修道院には回廊があるからきっといいのかもしれません。徘徊するのにぴったり合っているのかわかりませんが、日本でいうデイサービスを、昼間しか使わないのはもったいないのではないか、夜なんとか使えないだろうかということで、アルツハイマーカフェというのをアルツハイマー協会がプロモートして、オランダ全国6ヶ所で2006年にスタートしました。カフェといっても向こうはアルコールOKという場所がつくられました。毎週1回金曜日に夜開かれるらしいですが、アルツハイマーの人やアルツハイマーの家族、それから保健医療福祉の関係者、ボランティア、学生、地域の人、皆が集まってこられる、そういう場所を始めたというので見てきました。とても楽しい感じで、確かにデイサービスは夜は使っていませんから、そこを有効活用する。

 これはなかなかおもしろいなと、アルツハイマーの人がアルツハイマーに「あなたどこが悪いんだい?」とかアルツハイマーの先生に向かって「あなたどこが悪いんだい?」と聞いたり、おもしろい会話が弾む場所らしいです。

 3年経ったあと、またもう一度オランダに行って様子を見てきましたが、なんと6ヶ所だったのが120ヶ所に増えていた。これはまさにインフォーマルサービスで、これから介護保険部会で話し合ったり制度を変えていこうというフォーマルな部分も大事ですけどもインフォーマルな部分で地域ごとに皆でどういうふうに何をつくっていくかと考えることも大事な仕事だと実感しています。

 うちでも真似して実はアルツハイマーカフェは無理なのでリウマチカフェというものを始めたのですが3回でやめました。あまりに訴えが多すぎてついていけなかったというのが本音でございます。今日はそういうことを言ってもいい会かなと思って言いましたがそんなところです。

 さて最後になりますが、私はこの会にもよく出ていらっしゃる小山秀夫先生に昔から言われている、人にとって一番大事なことは、居場所、行く場所、座る場所なのだ。その場所をどのように作るか、自分自身の居場所、行く場所、座る場所もそうだし、サービスを提供する側としたら、そのサービスを受ける側の人たちにお渡しできるかということを教わりました。これはきっと、これからも変わらないと思います。介護保険制度がどうなるか先々もしっかり周知しなければいけませんし、関わりをもっていこうと思っていますが、その原点となるのは、こういう場所をどのように地域包括ケアシステムという格好いい名前になっても、そこに居場所、行く場所、座る場所をつくっていくかが大事なのだと考えております。

 長くなりました、介護保険部会で3分しか話せないので、その分ここで長くお話させていただいた気がします。シンポジストの方ごめんなさい、少し時間が短くなってしまうかもしれませんがよろしくお願いします。どうもありがとうございました。

 
プレゼンテーション(1) 「特別養護老人ホームの立場から」
奈良 高志 (文京大塚みどりの郷 施設長)

 皆さんこんにちは。よろしくお願い致します。15分という限られた時間ですので、本来でしたら私が勤務する法人、あるいは施設の概要、医療施設の取り組みなどを細かく申し上げたいところですが、今日のお話は主に2点、私の勤務する特別養護老人ホームの抱えている医療に関する課題、そしてそれに基づいた私なりの問題提起を中心にお話し申し上げたいと思います。やや早口になるのをどうぞご容赦いただきたいと思います。

 それではまず最初に、スライドに基づいていくつかお話申し上げたいのですが、2枚目から9枚目に関しましては、私どもの運営方針など、あるいは法人の理念というところでございます。昨年、創設100周年を迎えました社会福祉法人でございまして、清瀬市に本部がございます。清瀬市といってもわからない方もいますが、東京都清瀬市、埼玉県所沢市との境にあるところです。その他、文京区、荒川区と都内に介護保険種別で25事業所を経営している母体でございます。

 大塚みどりの郷は、今から22年前、JR山手線圏内では初めての公設民営型施設ととして設立された施設であり、私どもの法人が運営を受託しております。特徴的なところは看護職員が5名、現在、常勤換算でいきますと4.4名です。60床の特別養護老人ホームでショートステイが4床でございますので、比重としては看護職員配置が高いというところが1つの特徴になっているかと思います。全事業合わせますと職員が80名になります。

 続きまして、少しとばしますが、入所者の状況でみますと、平均84.1歳、1人当りの在所年数が5年7ヶ月、平均要介護度3.95、東京都の平均が3.8、全国が3.6ぐらいでしょうか、やや高めということになります。ADLの状態に関しましてはご覧の通りです。だいたい3.95の介護度でご理解いただけると思いますが、認知症のご利用者に関しては、全体の95%が認知症という診断を受けております。

 スライドNo.5は、理念に当たりますが、その中で手くばりとしたのはハンドサービス、確かな介護技術、対人援助技術というところにポイントをおいています。そして安心、安全で自分らしい生活の実現を支援となります。先ほどエイジング・イン・プレイスという言葉がありましたが、まさしく特養はそうでなければいけないということで、生活の中での医療サービスがどうあるべきかというところで打ち出している方針の中で、医療と介護の一体的なサービスの提供、看取り体制の充実などをあげております。従いまして看護職員へのウェイトを大きくしているというのが1つの特徴かと思われます。

 そしてもう1つは施設のケアプラン、特養においては介護のプランを施設サービス計画に位置づけているところが多いといいますか、私ども施設の課題でもあったわけですが、それぞれ看護に関しては看護計画、介護に関しては介護計画、栄養に関しては栄養計画、それぞれの専門職から計画、プランを出し合って、それを1つの施設ケアプランにしているというのが特徴でございます。

 そして医療体制のところを中心に少しお話していきたいと思いますが、22年前の特養ですので従来型特養で、個室はございません。医療機関の併設もなく近隣に協力医療機関を1ヶ所確保しております。加算体制はスライドNo.8の通りです。下の看取り介護加算ですが今年度の4月から10月まで9件の方が施設を退所しております。60床の特養で7カ月間に9件というのは非常にハイペースです。そのうち6件が施設内死亡です。6件中5件の方に看取り加算を算定しています。ここ2年くらい施設の中で亡くなるお年寄りが大変多いです。実は入所の時に要介護4とか5の方がほとんどですので、非常に重度化しているのがその原因かと思っております。

 続きましてスライドNo.9〜10の看護業務を見てみたいと思います。看護業務内容と比重ということですが、ちょっと見づらいグラフで申し訳ございませんが、ここを見ていただきますと、やはり他の特養とあまり大差ないかなと思いますが、疾病の早期発見、治療というところから、どうしても健康状態の把握というルーチンワークが90%を占めます。それからリスクアセスメントや、介護職員の異常時の対応の指示など、急変時の介護職員の周知というところが多くあがってきています。

 続いて、家族に対する説明というのが、ここ数年比重として大変高まってきているというのが特徴です。次に看護日誌、カルテ類の記録に関わる時間、それから受診対応が大変多くあがってきているのと、先ほど申し上げましたケアプランやカンファレンスに関する時間、というものにも相当時間がとられている特徴が最近顕著にみられます。

 それでは、医師の体制がどうなっているかということですがスライドNo.11をご覧下さい。配置医師として1名内科医として来ていただいています。精神科のドクターは、正確に申し上げますと、協力医ということで月2回、その他に歯科の協力医療機関が、月に1、2回お見えになります。スライドNo.11は、4月から9月末までのデータです。月によって変動がありますが、だいたいこのような状況になっております。

 スライドNo.11の4の勤務時間外の対応状況というところですが、日中の電話対応30件とあります。これは主に看護師からの通院や服薬に関するものです。夜間は緊急対応に対する相談。施設に直接来所いただいている6件はすべて急変時ということになります。6件中5件については配置医の先生が最後まで看取り、死亡診断書を書いていただいているという状況でございます。

 スライドNo.12は、医師の体制についての資料です。22年4月から10月までの業務内容で多い順に記載していますが、これはタイムスタディを細かくとっている訳ではありません。印象度も多少含まれておりますがスライドNO.12の3番、4番、5番というのが、実は特養の医療の特徴を表しているかなと思います。その1つとして看護職員や介護職員に対する指示、説明、家族に対するインフォームド・コンセント、これは看取りに関するインフォームド・コンセントがほとんどでございます。インフォームド・コンセントとなりますと、家族からの同意形成に要する時間も相当数かかるということで、このあたりが特養における医師の医療関連業務の特徴かなと思っております。あとはだいたいルーチンワークかなと見ております。

 さて、それでは私ども施設の医療体制の現状についてみていただきたいと思います。スライド14、15、16に関しましては特別養護老人ホームにおける医療ケアに関する実態調査、厚労省が平成20年9月から10月に実施したものです。左は有効回答、3,370施設からのデータ、右側が大塚みどりの郷の21年現在のものです。ですので今日現在は、みどりの郷に関しては看護職員の常勤換算は4.4名ということになります。4.4名のうち準看護師が1名ということで、そこは全国平均よりも高いですが、あとは同じくらいでございます。

 看護職員の夜間体制のところをご覧いただければ全国的にはスライドNo.14のような数字になっております。みどりの郷と比較をいただきますと、やはり極めて少ないです。全国的にも夜間、夜勤職として配置しているのが1.7%にしかすぎない。75.9%の特養がオンコール体制をとっています。みどりの郷も同様にオンコール体制をとっています。それから全国の10.8%の施設が看護職員が状態に応じて勤務することがあり、私共も夜間帯に勤務調整をして出ていただくということがございます。

 さて、みどりの郷の医療体制の課題をいくつか書きました。しかしこれは多くの特養で共通する課題であると思います。施設外要因、医療機関との連携です。少し前に、救急対応した方ですが、2時間待たされて20ヶ所近くの病院を断られたということが当たり前のように起きている都心部でございます。施設が例外ということではなく、他の特養からも同じような傾向にあると聞いております。施設内医療処置に対する報酬、これは褥瘡の処置を何回やっても、あるいは看護処置を何回やっても、それが介護報酬の中には反映されてないというところです。ここはやはり回数で評価するなどの仕組みをお考えいただきたい。

 それから医師、看護職員の確保に関する課題、介護保険法では、医師の配置基準がないといってよいと思います。必要数とだけ書かれています。(非常勤でも可)と書かれているのみです。看護職員も看護、介護、3対1基準というのがありまして、利用者3人に対して1名ということです。ですから100名の特養ですと看護職3人で可というような非常にゆるい基準。これは、特養自体を医療的施設に移行、或いはその機能を付加するには大変問題かと思います。ここにメスを入れないと、にっちもさっちもいかないなというのが実態でございます。

 それから、看取り介護の制度上の課題ですが、看取り介護には算定要件というのがあるのですが、医師の判断というのは大きいのです。医師の判断は一つ一つの看取りケアに関する行為に関しては全部まるめでございまして、全く、介護報酬の解釈通知の中には抽象的なことしか書かれていない、評価はされていない、と思わざるを得ない。次に、介護職員の医療ケア実施に関する課題、これは後ほど触れたいと思います。当施設内の要因としてもいくつかありまして、医療ケア、看取りを推進する設備面での不足、個室がありません、静養室が1部屋しかないという課題を抱えています。

 次に、施設内の職員連携の課題、介護職員がどこまで何が出来るか明確でないということ。夜間の職員体制も、確かに非常にお忙しい配置医の先生だったりしますとすぐに駆けつけられない。看護職員が皆さん近くに住んでいるわけではないので緊急時に駆けつけるのが、時間がかかるというような問題などがあげられています。ここ2〜3年看取りが増えてきてスライドNo.16の介護職員がそもそも看取った経験がない、自分のお爺ちゃん、お婆ちゃんもいない、利用者さんを看取ったプロセスも十分に受け止められない、というところで、施設内研修はやるのですが、死生観にかかわる問題ということにもなりますと、そう簡単にはいかない。

 スライドNo.16の5ですが最近身寄りのない高齢者の方が増えています。延命を希望するかどうかも入ってきた時にはすでに意志表示が困難な要介護状態です。後見人の方がそこまで判断するわけにはいかず今後の施設運営の際に大きな課題となる可能性があります。

 全国との比較でいきますと、先ほどと同じ調査ですが、吸引に関しては、ほとんど全国と差がありません。経鼻・経管・胃ろうに関しては全国的にも必ずしも多くありません。今、みどりの郷には経管・胃ろうの方はいらっしゃらないというのが現状でございます。次に医療処置の現状ですが、やや褥瘡のT度、U度に対する処置が、みどりの郷ではこの時点では増えておりますが、これもほとんど変わりがないということです。

 最後のコマに進まさせていただきたいと思いますが、スライドNo.20は介護保険制度から見た医療体制の見直しの提案です。先ほど会長さんがおっしゃっていましたが、右のほうが外付けサービス、これからの特養は例えば近隣の医療機関から医師を派遣したらどうか、というような議論が介護保険部会であったように聞いています。実際にそんなことが可能かどうかということですが、左側(全国)を見ていただきますと医療体制充実型特養とありまして、この二極化に分かれるのではないかと見てます。ただ、今、常勤医師配置加算というのがありまして、60床の特養で平均介護度3.95で年間出してみますと550万くらいです。「550万で来てくれる先生どこにいるの?」という話です。やっぱり100床超えないとなかなか賃金を支払うのが難しいということがあります。施設が小さければ、医師に来ていただくということが大変難しくなるという報酬上の課題があります。

 そこで複数特養間医師配置をネットワークによって出来ないだろうか、他法人との給与規定の差などもありますが、区市町村が地元の医師会と契約しながら、介護保険制度の一定基準を示していただきながら、2ヶ所、3ヶ所の特養に一人のドクターがローテーションで来ることは出来ないだろうか、ということを真面目に考えております。どうだろうかという提案になります。

 次に看護体制加算の見直しです。看護体制加算というのは2本ありますが、両方合わせても12単位にしかなりません。1年間これをとったとしても常勤看護師をおくのは厳しいというところがありますので、やっぱり報酬を上げるほかない。それから、看護職員が夜勤ができるような配置加算。今の夜勤配置加算では、時給1,000円のアルバイトの人を8時間か9時間やって、ようやくペイするかなという感じでしょうか。ですから、看護師さんのアルバイトであっても、配置加算ではとても対応できないという現状があります。

 スライドNo.20の右側(外付けサービス導入型特養)で是非私が進めたいのは、在宅の要医療支援ケースで特養に入ってくる方は在宅サービスとまったく分断されて入所してくる。明日から入所ですよ、今まで在宅でかかわっていた訪問看護ステーションの方は、「さようなら」の一言で終わる訳ですが、せめて利用者が落ち着くまで、1ヶ月でも2ヶ月でも継続して施設への訪問を継続しそのことが報酬上評価される仕組みが作れないかなと思っております。その下は、同一敷地内の併設内のデイサービスの看護師が指定基準を遵守しながら特養の看護業務を兼務できないかという提案でございます。

 次に、スライドNo.21です。今申し上げたことと少しダブりますが一番目の配置基準についてはやはり、1対3では難しい、今現在、都内の特養は平均で1対2.2くらいになっています。しかし特養の持ち出しがありまして東京都内の特養は赤字でございます。21年度の決算状況ですが収支差額でマイナス4.7%位です。つまりそれくらい持ち出しをせざるをえない状況です。

 スライドNo.21の3に、会長さんも部会でご提言いただいているようですが、特養配置医師への専門カリキュラム、これは是非つくっていただきたいと思っています。例えば看取りに関すること、それからプライマリーケアに関すること、わたしは特養の医療は、プライマリーからターミナルケアまでの包括的ケアだと思っています。そこの判断の司令塔としてのドクターのカリキュラムがどこにもない。どこで学んだらいいのか、若い先生から聞かれることもあります。そういうことも必要なのではないか。

 それから4番目です。往診に関する規定の緩和ということで、今、往診が可能なのは実は非常に限られておりまして、配置医の専門外であること、特殊な場合、緊急的なことに限り良い、そうするとこれがほとんど厳しい。往診をしていただくことが大変難しいのが現状です。この辺の規制も緩和していただきたいということです。医行為に関して私もいろいろ意見がありますが、例えば、胃ろうに関しても、吸引に関しても、介護職ができる範囲が非常に狭い。将来的に、具体的にどこまで介護職にやらせるのか、新たな資格を設けるという議論もあったようですが、そうではなくて、今の介護福祉士にどこまでさせるのか、ということを明確にしていく必要があるのではないかと思います。

 最後にスライドNo.23をご覧下さい。特養における医療とは、一言でいうと私は看取りのケア、看取りに至るまでのケアだと考えております。特養は生活施設というふうに昔から言われております。最後の砦という言い方がありますが、私は必ずしもそうとは思っていない。エイジング・イン・プレイスで、高齢者専用賃貸住宅でも最後を迎えられればいいと思っています。それでは、生活施設って一体何なんでしょうか。生き甲斐がもてる健全で安らかな生活を保障すると老人福祉法にはあります。その方のたどってきた歩み、生活や価値観を尊重し、老化に伴う心身の変化に対して包括的にケアが出来る事。その人らしく生き、その人らしく人生の幕を閉じる事。このことを生活施設としての在り方、ひいては高齢者ケアの理想というふうに思っています。

 最近、「平穏死の進め」という本が売れているそうです。これは世田谷の芦花ホーム石飛先生が書かれた本です。先生は外科医として長くお勤めになり、常勤医として特養にいかれました。石飛先生は胃ろうを反対しております。胃ろうをつけることは自然な看取りではない。「平穏死の進め」の中で、死に際が近づくと何かしなければならないと考えることだけが医療とはいえないのでないか、というようなことをおっしゃっています。

 いろんなご意見があると思いますが、最後に1つの家族の声を皆様にご紹介を申し上げて話を終わりたいと思います。特養では極力最後まで経口摂取を進めています。しかし、確かに誤嚥性肺炎を繰り返し、医療の立場である医師を中心に、それは胃ろうにすべきであるとなっていく。胃ろうに関して、私は反対する立場ではございません。必要な場合もあるだろうと思っております。しかしご家族にしてみると、ある先生が「胃ろうをつけないと、餓死状態をあなたが間近にみていくことになる。家族として、あなたはそれに耐えられますか?」という説明をしています。そうすると、やはり胃ろうをつけざるを得ないという考えになります。この家族の方はこうおっしゃっています。胃ろうをつけてから本人の笑顔が消えた、胃ろうをつけなければよかった、ホームでみんなに看取られて最後を迎えさせたかった、医師の臨終宣告より職員と一緒に笑顔で見送りたかった。こんなようなことをおっしゃっています。私は、家族の心情とか痛みに共感できる医療スタッフ、さらに特養のすべての職員がそこに向かうべきであると思います。医療機関との関係性の中で、特養における医療体制、医療のあり方をきちんと発信出来る特養であるべきだろうということを最後に申し上げて、私の報告を終らせていただきます。ご清聴ありがとうございました。

 
プレゼンテーション(2)「ケアマネジャーの立場から」
崎山 賢士 (日本介護支援専門員協会 居宅介護支援事業所部会 部会長)

 皆さんこんにちは。ただ今ご紹介にあずかりました私、崎山と申しまして、現在、日本介護支援専門員協会、居宅介護支援事業所部会、在宅、居宅のケアマネジャーの部会がございまして、その部会長を仰せつかっております。当会の木村会長より行ってきてくれということで今日来させていただきました。シンポジウムの要項を読ませていただきまして、「医療と介護の絆」というネーミングに、私は何を伝えればいいのか、自問自答いたしました。私も居宅介護支援事業所で普通のケアマネジャーでして、30件の利用者を抱えております。地域でケアマネジャーをやっている人間として、両方の立場から、今日、いろいろお話できればと思っておりますのでよろしくお願い致します。

 なぜ医療と介護の絆が問われているのか、どうすれば医療と介護の絆が強まるのか、という感じで、少しお話を進めていきたいと思っております。そもそも医療と介護の視点の違いは?ということで、和歌山県の県内の医療関係の、特に訪問看護の看護師と会話していると、ここが違うと話をしたことがありまして、それを少しまとめました。まず1つの見方は、細胞が集まり、それが一定範囲で調整しながら存在する人、つまり生きている人、これはきっと医療関係者が普通に診ている人だと思います。我々、介護のほうはどうかというと、次の社会環境との関わりの中で折り合いをつけながら存在する人。両方とも普段からみている人だと思いますがどちらかといえば、そうなのかなというところです。

 今回のテーマでもありますように、この双方から見なければ、その人らしい生活が何かが、はっきりと理解できないと思います。だからこそ、医療と介護の絆を深める必要があると私は考えています。当然医療の情報は介護で活用すべきだが、介護の情報も医療に活用すべきだと考えています。認定審査会の委員もさせていただいている関係もありまして主治医の意見書をかなりの量を見させていただきます。認定審査の資料を見ていてもお医者さんが書かれているデータ、仕方がないのかもしれませんが、認定審査、介護の手間というものを見る場合に、あまりにも情報が少ないケースが多いです。

 我々は資料を取り寄せて、それを色々な形でケアプランに活かしていくわけですが、我々も情報のやり取りをしなければいけない立場にありますが、医療側もそういうデータをちゃんと吸収して、それを資料に活かしたり、治療のほうにも活かすということに繋げていただきたいと思います。

 そして、皆さんご存知でしょうか。居宅のケアマネジャー、医療連携加算というのがつい最近出来まして取れるようになりました。つまり、居宅から入院します。そこで病院側といろいろやり取りしますと加算がつくわけです。退院するときも若干の加算がつきます。それほど高いわけではないですが、結構、要介護1、2の方ですと、平均すると1万円くらいの報酬の中にあって月1回とると、例えば退院退所加算400ですから4,000円、結構大きな金額になる。こういうことで書いていますように、それと意識していく為につくられたものではないのかなというふうに考えております。とはいえデータで見てますと、これをとってないケアマネも多いといわれておりまして、なぜなのか。これも少し調査、研究しなければいけないのかなというところはありますが、私共などからいいますと普通にやってきたことなので、普段やっていることを、お金をくれるから嬉しいという話になりますが、この辺のハードルを高く考えているケアマネジャーが多い、というのが現状かと考えております。

 ここで考えてみましたが、平成12年の頃を思い出すとケアマネジャーの半分とはいいませんが、それにとても近い数の方が看護師ベース、看護師の方が多かったように思います。現在を見てみますと、その看護師の方たちは訪問看護ステーションのほうにいかれたり、病院のほうに戻られたり、非常に少ないです。今は介護福祉士、もしくはホームヘルパーの2級をとって、それから少し実践を踏んでからケアマネジャーになられた方が非常に多くなってきていまして、医療の方たちとのお付き合いがなかなかできない方が非常に増えていることも問題だという気がしています。医療側もその辺を割り切って考えていかなければいけない。

 医療と介護の間では良質な情報が必要ということで、私の所属する居宅介護支援部会とは別に、例えば居宅から病院、病院から特養、病院から老健とか行く時に、どういう情報を伝えていけばいいのか、調査、研究をしていまして、来月も富山にヒアリングに行きます。そこで仮説ですが、3つのことが必要だと考えています。1つはあたり前ですけども、過不足のない情報。ケアマネジャーがつくる、とても多いアセスメントの情報がきても病院側も困ります。必要な情報は何か、過不足がないようにということです。正確な情報、これも重要です。介護側はもちろんそうですが、医療側もそうで、正確な情報がないと治療する際に危険を伴います。そしてタイムリーな情報、入院されて1週間後に情報がきても遅い、入院されてすぐにいただけるとありがたいです。この3つの情報のあり方をしっかり把握して、そのためにはどういうことが必要なのか考えることが大切。その下に星印で、医療と介護の双方とも、一体どのような情報が必要なのかを互いに知り合うことが先決。ただ一方通行で、それでは足りないです。なんでそのくらいの情報をよこさないのか、とそのようなことをよく言い合ったりしている場面を見ますけども、もともとしっかりとこういう情報が欲しいとやり取りしていないと情報の齟齬が起こり、非常にまずいことになります。

 私は今、和歌山県の田辺市というところにいますが、田辺市の周辺に3つ総合病院がありまして、総合病院の地域医療連携室とそこの担当医の方に来て集まってもらって、今一生懸命議論をしている。下に書いてあるマニュアル、システム、いわゆるパスめいたものを作り上げようということで議論をしているところです。議論をした上でマニュアル、システム作りが必要、ただ単にどこかで使ってきたものを、さあ始めましょうということではうまく進まないのではないかなと思っています。もちろんマニュアル、システムは欠かせないですけども、それを作りあげていくプロセスが地域に非常に必要だと思っています。これにはもちろん、ケアマネジャーも一生懸命関わっていく必要があると思いますが、医療側もそれにしっかりこうしていただきというのが思いです。

 有効な連携ということで情報共有する際に必要な事項を3つくらいあげてみました。もっとあると思いますが、とりあえずこの3つがきちんと出来てないといけないのかなと思っております。1つが共通の概念、今どういうことを話そうとしているのか、お互い概略をわかっていないといけない。2つ目は共通の言語。これもよく話題になる話ですが、私もこの業界に20年いますが、今やっと医療用語、病院でお医者さんと看護師の方が話している言葉の内容が聞きとれるようになってきました。最初の頃は全然聞きとれなくて本当に困ったもので、いつも電子辞書を片手に調べたりしながら、その言葉を1つ1つ理解をしようとつとめたものですけども、言語の差というのが非常に出てきています。こういうこともしっかりとならしていく必要があるのかなということ。そして3つ目が双方向のコミュニケーション、ただ単に情報はFAXなどでながして、FAXでながすことはあまりないかもしれませんが、ついたらそれで終わりではなく、やっぱり双方向が必要だと思います。

 病院から退院する時に、看護サマリーをいただきます。いただいただけで、ケアマネジャーも返してない、看護サマリーをみてどうかということもなかなか返していない、我々も情報提供しますが、それの返しがない、というところがどうしてもうまくいっていません。どれか1つでも欠けていると有効な情報共有はできない、何がどう足りないのだろうか?というところですが、それぞれの倫理綱領を理解する、インターネットから引っ張ってきましたが、医の倫理綱領、お医者さんだったらご存知だと思いますし、下は看護者の倫理綱領、これは看護師さん達の団体のページにあったものです。一番下が日本介護支援専門員協会が作っているもの、上文の1番目と2番目です。こういうのもそれぞれ確認しておくべきだと思います。我々もこういうところを中核において仕事をしているはずです。他の職種の人がどういう倫理綱領をもって仕事をしているのか確認しておかないと、何をしゃべろうとしているのか、どうもわからなくなってしまう危険性が出てきます。ですので、どの倫理綱領もそんなに分厚いものではありませんので是非一度確認をしてはどうかと思っております。

 医療現場の言語と介護現場の言語、これは、私の勝手な解釈ですが、言語というのはおかれた環境によって様々な変化を遂げます。医療現場では、命を扱う、ある意味、非常に切羽詰った環境に常に置かれているので、その現場で、的確にスピーディに情報を伝達していくためには、独特の略語や言い回しが必要不可欠となっています。介護現場では、比較的時間の余裕があることもあり、最近はカタカナが多くなってきたというものの、医療現場ほど言語が特殊化していないと思われる。つまりおかれた環境が違うと、同じ日本語でも全く伝わらないほどの状態になってきます。

 ここで1つこう考えてほしいのですが、それぞれの言語をどこに合わせるか。医療側に合わせるのか介護側に合わせるのか、という話になるかもしれませんけども。基本的には利用者やその家族にもわかるレベルに合わせるべきだと思う。そうすれば、共通言語の問題はほとんどなくなってくると思います。ここまで落とすのは難しいかもしれませんが、できたらここまで落としていけば何とか通じるかなというところです。正直言いまして、私のように20年もやっている人間ばかりではないので、介護の仕事を始めてすぐの方は医療用語をやり取りしている中で絶対に意味がわかっていないと思います。意味がわかっていないと途中から聞かなくなるのでこの辺は考えていただきたいと思います。

 双方向のコミュニケーションですけども、感情をやり取りするというところがあると、良質な連携がはかれると考えています。認定審査会での意見書についてですけども、医療側に介護の情報が伝わっていなければ当然、主治医意見書の精度が低下すると思います。例えば、よくある議論で、主治医意見書の認知症の度合いをUAやVAという形で書いていますけど、ケアマネジャーがあとから見て、「何これ、先生どこを見ているの?」と言うことがよくあります。診察室に来てみた時に、何らかの形でこれくらいかなという形で書いてくれているが、家ではこうです、デイサービスに行っている時はこんな感じです、というところを実際にきちんと伝えられているか、というところがあります。そういうところまで少し意識してほしいです。そういう情報がケアマネからあがってきていない、他の事業所さんからきていないということであれば、最近どうなのか聞いてほしいというのが正直なところです。そうすると、主治医意見書の精度もかなり向上すると思っています。私の親しくしているすぐ近くの先生も頻繁に電話をくれます。今、意見書を書いているけど最近どう?と電話をくれるので、現実に即した感じで書いていただいています。主治医意見書の内容が良いか悪いかが、医療連携の1つのバロメーターと私は考えています。

 情報共有の意味について、これも私の勝手な考えですが、情報というのは詳しく字を見ると、情つまり感情、こころを報、つまり知らせることの意味。マニュアルとシステムだけに頼っていると絆は深まらない、と私は考えています。つまり、つい最近あったのですが、COPDのかなり重度の方が入院されていましたが、意地でも家に帰ると言い、病院から家まで少し遠いので、帰りの車の中で死ぬかもしれないと主治医に言われても、帰ると言いました。それで、帰ってからお世話になる予定だった訪問看護師にタクシーに乗っていただいて帰ったわけですが、病院側はよかったですねと送り出してくれます。家に何とか無事に着きまして、その後1年くらいみたわけですが、その時に、他の方もしますが帰ってからその方がどんな表情だったのか、家での、ベッド上でどんな表情がどうだったか、家族との様子を文章にしたり、場合によっては写真に撮り、それを病院に返す。そうするとステーションで非常に盛り上がる。こうなりました、ありがとうございますと言うと、「わぁ、あの頑固じいさん、こんな風になってるよ」と非常に盛り上がるわけです。つまり、病院側から出して家に帰ってこんな生活しています、という家族にとっては感動。そういうのを病院に返してあげると病院も喜んでくれて、我々もきちんとやってきてよかったなという形になるわけです。そういうところまでもっていければ、非常に絆も深まるのではないかと考えています。

 ケアマネジャーは、ケアマネジメントプロセスの中で、ケアチーム間で事実を共有していくだけではなく、その際に生じた感情、感動にも注意を払うべきです。同時に医療側も、その事に深い感受性をめぐらしてコミュニケーションをはかってほしいというところです。

 時間もなくなってきたので最後ですけれども、私、この絆という字をいろいろ調べていたのですけども、情と絆を使った慣用句で下の字、みなさん読めますか?情にほだされると読むらしいです。情に引きつけられて心や行動の自由が縛られるということらしいですけれど、「情に絆されてお金を貸しちゃったんだよね」そういうふうに使いますが、情によって絆は深く結ばれるのだと思うが、それが強まれば強まるほど、何らかの問題に遭遇した時、その絆を維持しようとする意思が強く表れ、問題解決の優先順位を下げてしまう危険性がある。医療も介護も対象者やその家族を支える専門職である以上、何が最も優先されるのかを常に意識する必要があります。これくらい絆がつながってほしいという気持ちも私はありますが、どうしても私なんかは、田舎で仕事をしていますけど、絆は強いと思います。強ければ強いほど絆をくずさないように発言が抑えられたりすることがある。その辺はちょっと考えなければいけないという気持ちを最後に、この言葉を入れてみました。ということで終りたいと思います。どうもありがとうございました。

 
プレゼンテーション(3) 「小規模多機能施設の立場から」
佐野 眞一 (鶴巻高齢者複合施設ケアタウンあじさいの丘 居宅サービス部 次長)

 こんにちは。私は、神奈川県秦野市の鶴巻温泉というところから来ました医療法人社団三喜会のケアタウンあじさいの丘の佐野と申します。よろしくお願い致します。本日は手前どもの小規模多機能施設と書いてありますが、これは色々と後で説明させていただきますけれども、在宅支援の小さい事業所が寄り集まった施設になっております。そこの活動を通して医療と介護の絆、ならびに介護現場から医療に期待することということでお話をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願い致します。

 まず、私どもの施設がある土地柄から説明させていただきたいと思います。神奈川県秦野市というところで、小田急線の秦野ですとか、伊勢原ですとか、その辺をご存知の方も多いかと思います。人口約17万、高齢化率が約20.6%、特徴としては、東京、横浜のベッドタウンとして、昭和40年代から50年代に人口は急増しましたが、近年の人口は微増状態で、少子高齢化が急速に進んでいるということで、これは全国各地の状況と変わらないかと思います。ここに写真があるように、富士山とか丹沢の山が非常に綺麗に見える環境はいいところです。

 次に、手前どもが秦野市内のどの辺にあるかということなのですけれども、秦野市の東部地域で、小田急線の鶴巻温泉駅と東海大学前駅の2駅分が東部圏域となっておりまして、我々は鶴巻温泉駅から歩いて7分くらいのところにあります。こちらの写真、手前どもの施設から駅の方向に向かって撮った写真、ちょっと暗くて見づらいかもしれませんが、マンションとかもいろいろ建っていますが、来る途中には手前ども施設の母体でもある鶴巻温泉病院等もございます。丹沢山の端のところにあたるものですから、坂道が多くて、昔からの住民の方も多いです。駅前にマンション等も急速にできていまして、若い方の転入者の方も多いです。地域内には住都公団が約40年前に開設した大きな団地等もありまして、こちらの高齢化率が40%超でかなり高齢化が進んだ地区もあります。

 手前どもの複合施設の建物でございます。6階建ての建物になっております。今の建物、内訳をご説明したいと思いますが、開設が平成20年3月です。1階には鶴巻ホームケアクリニックという往診専門のクリニックを開設しております。ドクターが1名おります。次に鶴巻訪問看護ステーション、訪問看護のステーションですが夜間は当直体制をとっております。看護師15名、PT・OT5名が在籍しております。非常に大きな訪問看護ステーションです。こちらの訪問看護ステーションは約15年程前から地域にありまして、今回の新設の建物の中に入ってきております。その中身ですけども、契約在宅支援診療所が16ヶ所、訪問看護の指示書発行医療機関数が39の医療機関、月平均利用者数が約200名、内、1階にありますホームケアクリニックの利用者数が30名です。月平均延べ訪問件数が1500件ということです。これを見ていただいてわかる通り、手前どもの中にある往診医よりも地域の先生からのオーダーが多いというものが特徴になっています。

 次に鶴巻訪問看護ステーション居宅介護支援センター、ケアマネジャーが6名おります。あと、訪問介護の事業所でサービス提供責任者5名、介護福祉士11名、ヘルパー9名という訪問介護事業所になっております。ALS等のヘルパーによるたんの吸引活動も実施しております。

 そして、グループホーム鶴巻が2階、3階でありまして2ユニットございます。こちらに関しては協力医療機関が6ヵ所、ホーム内での看取りまで実施。先ほど奈良さんの説明で、特養に入ってくると馴染みの訪問看護ステーションや在宅の診療所が途切れてしまうというお話がありましたが、ここのグループホームに関しては、そのまま主治医の先生が引きついで、下のホームケアクリニックの先生を必ずしも使わなくてもそのまま引きついで入ってくるということになっていますので、いろんな地域の先生がグループホームに主治医として入ってきていただいています。

 次に4階にはデイサービスセンター鶴巻、これは小規模多機能の居宅介護の施設でして、名称はデイサービスセンターなんですけれども、小規模多機能型になっています。登録定員25名、通い定員15名、泊まり定員5名、協力医療機関8ヶ所で、こちらもいろんな地域の主治医の先生が入ってきていただいているという形です。ここの特徴は看護師常勤が2名、非常勤1名が在籍し、医療依存度が高い在宅の利用者を積極的に受け入れて、センター内での看取りもすでに1名実施しています。

 5階、6階がレジデンスあじさいの丘で、こちらのほうは高齢者専用住宅になっています。この内訳は自立して生活できる方が5名、要介護生活者の方が7名です。協力医療機関は、基本的には1階のホームケアクリニックの先生が診ているという形になっています。

 あじさいの丘の理念ですけれども、今ご説明させていただきましたけども、ここの特徴は何といっても医療ニーズをもっている利用者さんを、介護ニーズと合わせてもち合わせている高齢者の方が、訪問、通所、泊まり、居住のサービスを受けながら、住み慣れた地域で馴染みの人々に囲まれ、その人らしい生活が送れるよう支援しますということで、医療ニーズをもっている方を積極的に受け入れているということを特色にしております。

 これが当施設の概略図というか、主な略図になっているわけですけれども、こういった形で施設が非常に一体化していまして、それぞれの事業所間で行き来しております。当然、先ほども言いましたように、主治医の先生がいろんな地域から入ってきていますので、そういった形で、それに関わる行政、保健所、地域の診療所、病院、介護事業所、ボランティア、地域住民、民生委員、地域包括支援センターの方など、常に関係性をもって在宅での生活を支えているかたちになっています。利用者の多様性を認め、多機能性を提供と書いていますが、利用者の多様性というのは、医療ニーズが高い利用者さんでも、うちの場合は積極的に受けていきますという意味合いです。

 次に、あじさいの丘では介護現場と医療・看護との連携は欠かせぬ要素ということで、先ほどの医療、看護との連携は欠かせないものになっています。あじさいの丘の介護現場ではグループホーム、小規模多機能デイサービス、高齢者専用賃貸住宅があるわけですが、その特徴として医療依存度の高い利用者さんが多いということと、主治医の定期往診による利用者の健康管理、先ほど言ったように地域のいろんな在宅の往診医の先生が入ってきますので、そういった部分での交流が多いということです。それと、早朝、夜間帯の緊急対応も当然、医療依存度が高い方が多く入っていますので、早朝夜間帯の緊急対応も多く出ております。

 それから、どこの事業所も看取りを最後までやることになっていますので、当然ターミナル期に入った利用者さんに関しては、いろいろと医療との連携が欠かせぬものになってきているということです。常時やはり高齢者ですので、よく様々な面で病気のトラブルが出ております。あじさいの丘での介護と医療の接着剤は、当直体制をとり、24時間活動する訪問看護ステーションが担うということで、この訪問看護ステーションが本当に大きな役割等を担ってくれています。どういったものになっているかというと緊急時、早朝、夜間帯を中心に24時間対応をしてくれています。ですので、介護の職員が医療依存の高い方を受け入れても、安心して介護の仕事に夜勤帯に1人夜勤でもつけるということになっています。当然、看取りに関してもサポートを訪問看護ステーションの看護師と主治医の先生とがメインになって、介護従事者がサポートする形で入っております。

 地域病院・診療所医師との連携、これはうちのあじさいの丘に限らず、在宅にいる利用者さんなどをいろいろと地域の先生と一緒にみていますので、そういった部分でも連携が常時出来ているという状態になっています。あと、介護職への健康・病状観察・介護技術・吸引指導、病状悪化時における医師の指示のもとに行われる医療行為及び介護職との協働ケア、日常健康管理面での介護職からの相談受付、等々の役割を担っております。

 その中で特徴的なものは小規模多機能型のデイサービスセンター鶴巻、小規模多機能型の施設があります。登録利用者さんは25名いらっしゃいます。これは10月のデータだと思いますが、こちらに書いてあるような病的な疾患をもっている方でもデイサービスに通い、泊まりを実施している状態になっております。この資料を作るために私がある日のお昼頃行って、それぞれの泊まりの部屋だとかを写真に撮ってきた状況なのですが、ある部屋では持続点滴があって、ある部屋では吸引の機械が置いてあって、ある部屋では胃ろうの溶剤が注入され、ある部屋では、髪の毛をとかしている方ですけれども在宅酸素をつけていらっしゃる方等々、このような形で、ある意味病院的な感じがするかもしれませんが、これがデイサービスの活動の内容として実施されています。

 なぜこういうことが出来るか、医療と連携して出来るかというと、やはり高齢者複合施設という器の効能が大きいのではないかと考えております。24時間、365日当直体制をとる、地域に根ざした訪問看護ステーションを併設していることが大きい要因だと思います。それとともにこちらに書きましたけれど、併設するクリニックに加え、地域に13診療所の主治医と、常時往診に来ていただく5診療所の先生が施設内に頻繁に出入りし、ケースを通じての介護職及び看護職との交流の機会が多いです。看護職だけではなく、介護職との交流もすごく多くできています。

 これはある例ですが、地域の先生が在宅の利用者さんで本来、病院でみてもらうということがあったのですが、その先生は病院よりもデイサービスに行って、そこで点滴だとかを受けて診てもらったほうがいいということで、逆にデイサービスのほうでみてもらえないかと、預かってもらえないかというような依頼がくるケースもあるぐらいです。往診医の先生方も当然夏休みや冬休み等々いろいろありますので、そういった場合は往診医の先生方がお互いに連携を取り合っていただいて、代行の緊急のときには他の先生に頼むといったことで先生同士の絆もできあがってフォローしてくれています。

 病状の重度化や急変を含めて、介護職員と協働により、医師、看護師が迅速に対応することが出来ます。これはやはり同じ施設内におりますので、まずは訪問看護師に連絡なのですが、そこからすぐドクターに、地域の先生も夜間だろうが早朝だろうが携帯で電話をとってくれますので、そういった者から指示を受けて、介護職と看護職と協働して、先生が来るまで見ているということが常時行われています。

 介護職が医療職と接する中で喜びを感じることということで、先生が頻繁にグループホームなどにいらしていただくわけですが、その介護職員に対して、365日24時間利用者をみている命や健康の擁護者として、またチームケアのパートナーとして先生が対等の立場で接していただけるということを、介護職として感じていることが出来る。医師から利用者の健康状態や病状が、日々の生活支援介護環境活動によって、良くなったと言われること、「君達頑張ったね」と言われることが、すごくやりがいに感じているということ。逆に介護職員の果たす役割、力も医療だけではなく大きな力だと、先生のほうからも言っていただけることがあります。

 次に利用者の病状や日常のケア方法について、介護職に直接丁寧に話をしてくれる時では、先生が色々とその方の病状ですとか、今後こうなっていくだろう、ああなっていくだろうと、介護職員に往診の時に直接先生のほうから教えていただける。そういったことは結構勉強会とかいろいろ開きますが、先生から丁寧に介護職員のほうに教えてくれる、話をしてくれると、介護職員もその方の病歴、病状に関して理解して、日々のケアの質が高まっているということがあって、それも喜びに感じているということにつながっています。これは、あるかかりつけの先生とのカンファレンスですが、ホワイトボードに書いていただいている方で、往診にきていただいている先生のお1人なのですが、こういったカンファレンスも定期的に開いております。

 次に、介護職と医療職の連携ということで、チームケアの一員となる為の介護職の必要要素ということで考えてみました。利用者の日常生活全般や課題について、誰よりも一番良く解り、自分らしく生きていけるよう生活の一コマ一コマを大切かつ丁寧に支援することができることが、当然必要な要素ではないかなと実態を通じて思います。利用者の疾病や健康の変化及び訴えに対し、直ぐに看護師や医師にSOSを出し、丸投げしてしまうのではなく、表情やバイタル、訴えのレベルや変化に至る要因や兆候を把握した上で、相談依頼することができるという能力も必要だと思います。

 よく介護職員が、お腹が痛いと言っているのです、とか、熱が出ています、とかすぐに看護師や、またはドクターにSOSを出すと、うちの場合は怒られてしまいます。どういった状況があってそうなっているのか、あと熱が出ているなら何度くらいなのか、38度以上あるのかどうか、そういうことをよく把握した上で連絡して、というように返されてしまいます。ある意味ではそういう部分で介護の質もあがってくるため、安易に先生に相談するのではなくある程度利用者さんのことをわかった上で相談、依頼することが出来る能力が必要ではないかと思っております。

 次に利用者の特性によって、異なる医療・看護職との連携支援チームケアの仕組みが理解できているということで、利用者さんによって千差万別だと思います。医療に関わる部分、看護に関わる部分もわかった上で、介護職が判断して相談するという能力も必要になってくるのではないかと思っております。話がとんでしまいますが、これはある介護職員の吸引勉強会ということで、あるグループホームの職員、訪問介護のヘルパーさんなどを対象にした勉強会を実施している風景でございます。これも同じようなことが言えます。

 最後のまとめですが、今後、介護福祉士による胃ろう管理や吸引等の医療行為等の業務分担拡大は諸刃の剣になりうるのではないかというふうに思います。先ほどもお話に出ていましたけれども、いろんな手順ですとか、しっかりと知識をつけた上で実施していかないと、その辺に関しては怖い部分もでてきてしまう。ただ逆に言えば、その辺がきちんとされて、介護福祉士の業務拡大ができれば、介護福祉士のやりがい、職責、資格に関してもつながっていくのではないかと思っております。

 介護職は、要介護者の生活の質を高める主軸としての位置づけと認識、仕組みづくりが必要ということで、先ほどもお話にありましたけれども医師とケアマネジャーまでの関わりに関しては、退院時共同指導加算ですとか、そういう形でつながりがついてきていますけれども、介護職までいたるというのはまだもう少し、そういうところまではいっていないと思います。ただ生活全般を1日みているというような部分では、介護職と医療との結びつきの何かしらの仕組み作りというものも、やっぱり医療行為の拡大等が出て来た部分に関しては合わせて行っていく必要があるのではないかと思っております。

 最後になりますが、介護職が主軸となり、医療・看護・介護が密接に連携し、医療、看護のサポート体制が確立されていれば、医療依存度が高い利用者であっても、病院ではなく在宅及び在宅に準じる施設において、家族や地域に囲まれながら過せることが充分に可能であると考えております。地域包括ケアシステム等々、これから考えられていって、いろんな介護の現場でも24時間対応というようなことが大きな課題になってくるかと思いますが、やはりその時に、まさしくこの早朝、深夜、そのような時間帯と医療対応との仕組みもしっかり考えていかないといけないかなと考えております。以上で私の話を終らせていただきます。ご静聴ありがとうございました。

 
プレゼンテーション(4) 「グループホームの立場から」
長井 巻子 (医療法人社団三草会 在宅支援統括事業部 副部長)

 皆さんこんにちは。札幌から参りました、医療法人三草会というところに勤めています。グループホームの立場からということで実践報告をしたいと思います。よろしくお願い致します。

 まず、全体的にグループホームというのは、本当に短期間の間にたくさんグループホームができたということで、グループホームほど、この10年の間に次々といろんな事が起こって規制された制度もないのかなというのがございます。94年に全国8ヶ所のモデル事業の調査研究で、北海道が4ヶ所ということで、北海道はやはり面積が広いということと、雪の問題、医療機関の問題で、どうも新しいものが好きだというような、そのような特徴があると思います。

 認知症ケアというのは、誰でもなりうる可能性があるということでパーソンセンタードケアという形で地域を支えていくということで、全国各地で取り組みがなされています。平成18年に、地域密着型にグループホームがなって市町村に権限が移ったということがございます。グループホームは平成11年に266ヶ所であったものが、平成22年の4月には10,411ヶ所いうことで、利用者が13万人くらいいらっしゃるということで、あっという間にグループホームが増えたということがございます。グループホームというのは、その人らしい生活支援をチャレンジャーとしていつも試行錯誤していながらやっていくというところでございます。

 グループホームの制度ですけれども、要支援2から入れるということで、認知症の診断があって、1ユニット5人から9人ということでしばりがございます。私は日本グループホーム協会の役員等もやっておりますので、皆さん興味があれば見ていただきたいんですけれども、事業所調査結果というのがあります。インターネットで調べるとこの調査結果が出ています。この調査結果を見ていくと、入居の年数が高くなると、重度化ターミナルということがこの調査結果からもわかります。

 人員配置は3対1ということで、グループホームは生活時間というのがございまして、これは事業所によって違い、たいてい朝の6時くらいから夜の9時くらいまでが生活時間、ですから21時以降が夜間帯ということになります。今年の3月、札幌で火災がおこって1人夜勤はどうなのか、ということになり、本当に夜勤の職員が来なくなりまして、今、大変な問題が起こっています。働いている職員はやはり中高年の方が多く、そしてヘルパー2級保有者が多いというのが全国的な特徴でもあります。設備に関しては火災報知器とかそういうものが経過措置の間に、火災があったということで、今年どんどん規制がされています。

 利用者負担というところでは、ホテルコストといっていますけども、やはり高いということで、今問題になっていることは、ご夫婦が認知症になってグループホームに入りたくてもホテルコストが高くて入れないというような状況が起こっています。もう1つ特徴的なのはグループホームは独自の介護報酬がありまして、要支援2から要介護5まであまり変わらないフラットな報酬だというところも特徴かと思います。21年度、介護報酬が改定になって新規加算がつきましたけども、なかなかこの加算の使い勝手が悪いというのが今、現状だと思います。

 地域との連携ということで、運営推進会議、概ね2ヶ月に1回といわれていたのですが、今年の火災をうけて2ヶ月に1回開催をしなさいということで規制が入っております。そして外部評価と介護サービス情報公表ということで、グループホームは2つ行わなければいけないというのも、またグループホームの特徴かと思います。来年からは、情報公表はお金がかからないということなので、少しは事業者負担も少なくなるかと思います。医療機関との連携もしなさいということで、母体施設とか大きな施設、あるいは医療機関、歯科、という形で医療機関との連携ということになっています。連携体制加算ということで、医療機関や訪問看護や看護師の配置をしていて、健康管理とか自動化対応や、そういうことの体制が整っていれば、事業所加算、連携体制加算がとれるということになっています。

 ターミナルについては、下の方に協会のデータがありますけども、取り組みを実施したというのが37.2%ということで、だいたい4割のところでターミナルを経験をしているというデータがございます。

 グループホームの多機能化ということで、開設3年以上で短期入所が使えたり、あるいは共用の認知症のデイが使えるということで、なかなかこれもハードルが高いということで、使い勝手が悪いという現状があります。自主事業の実地状況ということでほとんどありませんけども、あるというふうに答えたところは、泊まりとか配食サービスを自主事業としてやっているというデータもございます。

 私が勤めている実践を少しご報告したいと思います。まず札幌市の現状はというと、大きな都市で四季がはっきりしていて、人口約190万人で、北海道の人口の3割が札幌市に集まっているということになります。行政区が10区、高齢化率が19.1%、要介護認定状況が17.4%、そして平成19年度の老人医療支払い件数は約450万件という、現状がございます。札幌市におけるグループホームの状況はというと、地域密着型になってから札幌市は、全国2番目にグループホームが多いということで凍結をしていました。現状としては、特定の地域に集中しているということと、利用者の約6割が居住地にいて、グループホームの待機者が500人くらいいるということで、この第4期に、少し今年から規制緩和がされています。その公募です。まちづくりセンターが地域の核になるので、その場所にないところにグループホームを公募ということで少し規制緩和がされています。

 私が勤めている三草会のことをちょっとお話します。東区と北区に事業所がございます。まず病院があって、225ベッドで、整形とリハビリに特徴をもった病院です。ですから、障害が残ったまま退院をして、地域で暮らすという患者さんが多かったということで、介護保険事業のほうを手がけています。次に、老健がございます。平成8年に老健がオープンして、認知症の方は回廊式の建物でなければいけないということで平成8年に老健がオープンしましたので、当然回廊式の100床の老健が開設をしました。その頃はまだ介護保険制度前でしたから、低減制がありました。3ヶ月以上いると安くなってしまう。3階が認知症専門棟でしたので、在宅に戻ってもすぐに戻ってくる人という形で、在宅での生活が難しいということが本当に半年もしないうちにわかりました。ですから、老健を核にしてグループホームをつくろうということで、老健のそばに民家改修型のグループホームを始めたのが平成9年ですが、今はございません。そしてその2〜3年間のノウハウを活かして、現在あるのは、東区というところにグループホームとデイという形で必ずグループホームとデイサービスを併設しているというのが特徴でございます。

 これが事業所一覧です。ですから平成9年の民家改修型はございませんので、今伸縮のグループホームしかありません。私、少し間違えましたが、デイの平成19年の1月にオープンをした「出逢い」というのが一般型です。あとは認知のデイになりますので直していただきたいと思います。ですから、グループホームが3地域にあり、63名の方が生活をしていて、そこにデイサービスが併設をしていますので、イメージ的には大型施設が3地域に分散をしているというイメージで見ていただければと思います。

 それとこれが7ユニット63、空室が2、10月末の現在ですけども、そこに書いてあります平均要介護度が3.5〜6です。やはり入居期間が長くなると、当然要介護度も上ってきているという状況でございます。その足し算を間違っていると思いますので、その辺見て確認していただければと思います。

 どこから入ってきているかというと、自宅からというのが圧倒的ということがそのデータでおわかりだと思います。老健あるいは病院というのは母体施設の老健、病院から入ってきているわけではなくて札幌市内の老健、病院から入ってきているというのが特徴です。中にはグループホームから入ってきているというのも最近の傾向なのかと。

 うちの特徴としては、特養待機の方が誰もいないというのが特徴です。入居期間が5年以上という方が27名ということで、そういう意味では終の棲家という機能を果たしています。医療との連携ということで、複数の慢性疾患を持つ入居者が多く、それぞれの事業所は、母体病院があり、連携はしていますけども、地域の医療機関とも連携をしていますので、それぞれの事業所が違う医療機関と連携をしています。健康的な管理や、あるいは日々の病状に関しては内科の先生がホームドクターとして、つまり内科の先生が専門医の先生と連携をしているという構図になっています。医療連携体制加算をとっていますので、訪問看護あるいはクリニックとの連携をしています。

 そして、やはり認知症の方は環境を変えないということがとてもいいわけですから、治療が終ったらできるだけ早く生活の場に、グループホームに返して下さいとお願いをしています。入院中も職員が細目に見舞いに行って、経口摂取で戻ってこないとグループホームの生活が難しくなるので、胃ろうや鼻くうやカテーテルが入らないようにして下さい、というような形で情報交換やそんなことをやり取りして、出来るだけ早く返してもらうということで連携をしています。

 1年間の退居状況をみれば、データ的にだいたい、各2ユニットでやっていますので、1人か2人くらい退居していくということです。当然グループホームで看取る方もいらっしゃいますし、病院への転院ということで、やはり多いのはインシュリンや胃ろう増設、吸引等の常時医療行為がおこってくると、グループホームを退居しなければいけないということがあります。日々の健康管理、病状の管理がいかに大切かということで、母体の老健のリハのスタッフにボランティアで来ていただいて、例えば、経口摂取ができるような姿勢とか、歩行状態をこんな風にという感じでアドバイスをしてもらいながら、出来るだけ医療の専門職を活用していくというような形にしています。

 今後、医療と介護の協力、連携強化というのはとても大事だと思っています。ですから病院は治療の場ですので、こちらのほうがああしてほしい、こうしてほしいというのは環境の中ではとても無理だと思いますので、出来るだけ早く返して下さい、治療が必要であれば、治療が最優先であれば、短期間の入院でお願いしますという形でやっています。あとチームで支えていくということで、私も福祉系ですので医療の敷居は高かったと思います。最初は、医療職はなんとなく専門用語を使ってなんか難しいなと思った時期もありましたけれども、こちら側がアレルギーをおこしてしまうと、利用者さんに迷惑がかかるということで、少し視点を変えていくと、質を上げるためには医療職と仲良くして、一緒にチームで支えていくとより効果的になるのだと、ふと気が付くことがありましたので、難しい言葉を使われると、もうちょっとわかりやすくお話しをして下さいとか、あるいは通院などする時には、皆さん医療職の方は忙しいですから、コンパクトにA4くらいでまとめて生活の状況や何が困ってどうしてほしいのかというような形で、書式と口頭でという形でお互いに出来るだけ効率よく質を上げていこうということでやっています。

 それとあと、法人外の中で質を上げていくということで、東区にグループホームが24事業所ありますので、そこに認知症のサポート医がいますので、その先生が2ヶ月に1回ミニ事例で検討会をやっています。2時間、夜やっていて、1時間はその地域で在宅診療に熱心な先生が1時間ほどプレゼンをして、そして残り1時間は、私達がもっていく事例でこんなことが困っているというような、そんなような事例検討会をやっていています。今、実施をして3年目に入るのですけども、敷居が低くなって、フレンドリーになったなというのが私の実感です。

 ですから、これからグループホームというのは本当にいろんな地域の社会資源を使って活用して、アラカルトメニューで認知症の方を支えていくというところでは、地域と共生をしていかなければいけない、医療と連携強化をして、出来るだけ環境を変えないシステムを作っていかなければいけないと思っています。最後にお願いですけれども、本当にヘルパー2級の保有者が多くて、スキルアップも含めて、医療機関の方に今後も育てていっていただけるとありがたいと思います。これで私の実践報告を終らせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

 
シンポジウム 「医療と介護の「絆」を考えるIII」
座長:齊藤正身(老人の専門医療を考える会 会長)
シンポジスト:プレゼンテーション講師4名
齊藤

 予定の時間より早いですが、早速シンポジウムを始めたいと思います。 「介護の現場から医療に期待する」というテーマで4名の方にお話を伺いましたが、この4人の方がいらっしゃって、同じ地域包括の地域で仕事ができたらどんなにいいだろうと思いながら話を聞いていました。それはそれでやりにくさもあるかもしれませんが、個々に立場立場でお話をしていただきました。 まず、私のほうから個々の方々に、少しご質問させていただいてお答えをいただいたのちに、皆さんのほうからもご質問があれば、という形でいきたいと思います。まず、奈良さん、特別養護老人ホームの立場でいろいろお話をしていただきましたが、その中で大塚みどりの郷の医療体制の課題のスライドのところ、この課題の施設外要因の施設内医療処置に対する報酬の問題、あるいは医師、看護職員の確保に関する課題もですが、2番のあたりと、それと施設内要因の施設内職員連携の課題、このあたりをもう少し詳しくお話していただければと思います。お願いします。

奈良

 今のスライド、施設外要因、制度的な問題2番目については取りあげています。例えば、特養、褥瘡1度、2度の方も含めてあるいは通常の看護処置のレベルですが、その辺に対して、例えば何回1日に処置をするか、どの程度するか、これは配置医の先生、あるいは通院した場合の通院先の主治医の先生の判断に基づいて実施することになります。それについては何回やっても、何をやっても基本的には介護報酬のなかでは、それが評価されていないということと、それから医療保険が使えるかというとこれは使えない範囲のことですので、そのあたりのところを制度的に何らかの形で、広い意味での生活介護の行為として行った場合に、それが介護報酬として評価が出来ないだろうかということで課題がそこにあるのかなということを申し上げました。

 それから施設内要因の2番目に関しては施設内職員連携の課題と書いてありますが、これは医療というところからいきますと、私共の施設だけの問題だけではないのかもしれません。例えば、吸引ということになりますと咽喉手前までの口腔内の吸引というのが、モデル事業で介護職員がやりましたが、ただ実際に継続的に、それが仕組みとして研修を受けられる形というのが施設まかせになってしまったというところがあります。ただ施設の中で医師や看護師が出来る体制、先ほどの鶴巻の事例のように、いつもドクターがやるといっていただける体制があるといいのですが、私どもの場合は地元の医師会長が配置医をやっている関係上、ものすごく忙しい、「やりたいけれど俺はそんな暇ないよ」というところです。看護師は看護師で、先ほど看護職員のタイムスタディをご紹介申し上げましたが、とてもそこまで手が追いつかないというところがあり、一応課題としてあげさせていただきました。

齊藤

 介護保険制度から見た医療体制の見直しというスライドの外付けサービス導入型特養、奈良さんの場合はこちらのほうがいいのではないかというお話で、私の主張通りなので非常にありがたいと、リハビリもそうならいいなと思っていますが、どうなのでしょうか。これは訪問看護ステーションの中に入ってくるというイメージ、まだ実際入ってきていないので何か雰囲気として何か感じることありますか。

奈良

 短期入所生活介護に関しましては、訪問看護ステーションからのネットワーク加算でしたか、ショートステイですね。それは介護報酬で加算として18年度の改定の時だったと思います。それが入っている。そのことによって、だいたい併設の訪問看護ステーションの看護師さんが来ることがどうも多いみたいなのですが、しかし、Aさんというご利用者さんが、そこの訪問看護ステーションのご利用者さんでもある場合で、その方が特養のショートステイに入った場合、その訪問看護ステーションの担当者が、やはり何かある時に、連携加算ということで入れることによって、ショートステイの継続利用が保障されるということ、担保されるということはあるように聞いています。

 先ほど私が申し上げた在宅の生活が分断されるというのは、特養に入った場合、在宅の時のサービスが一切使えない、介護報酬保障が使うことができない。ところが在宅の要医療支援ケースというのが大変増えていく。私共の特養でも実は老健とグループホームから、それから特養から特養に入所するというのが5割くらい、施設から特養に入ってくる方5割、老健から3割もいらっしゃる。老健の本来の機能はどうなっているかというのは別の話になりますが、残りの5割が在宅なのですが、この中のうちの7割から8割の方は訪問看護を使っていらっしゃいます。ところが入所すると使えなくなります。ですので、その方が施設での生活が落ち着くまで一時的に在宅の、例えば訪問看護などの方たちが入ることによって、訪問看護ステーションのほうにも何らかの介護報酬がそこに加算としてプラスされるような形でできないかな、という発想でございます。以上です。

齊藤

 ありがとうございます。この辺は、また、まとめての話のところで伺いたいと思います。

 崎山さんのお話で、ケアマネさんはやはりとても大変だと感じましたが、共通の概念、共通の言語、双方向のコミュニケーション、まさにそうだと思いますが、私達、医師の立場では、その要介護認定の時の主治医の意見書の問題は課題としてあがっていて、実は今、日医が中心になって、私も委員に入っていますが、全国統一の文例集を作っている最中です。結局、何を作っても、どんな研修会をやっても、来てくれたり、読んでくれる先生はいいのですが、そうじゃない先生が困る。そういう実感みたいなものはございますか。ちょっと言いにくい質問だったかもしれませんが。

崎山

 先生が言われる通りで、非常にそういうのは感じています。特に、開業医の先生達はそこそこ書けているというか、普段からもお付き合いがありますから、非常にいいレベルで書いていただいているのではないかという気はしますけれども、いわゆる一般病院、急性期の病院、そちらの先生方は、そういうことをまったく意識していらっしゃらないというところがあるかと思っております。「わからないから書いていない」というようなところも非常に多いような気がします。

 ですから、今回ケアマネジャーの医療連携加算もある中で、こちらからもこういうことがありますから、ということをどんどん伝えていくべきだと思いますし、そこをきちんと先生方も確認をしていただいて、それを参考にしながら意見書のほうを作成していただく、そういう流れにしていくべきだろうなという気はすごくしています。そうしないと、審査会自体の精度も上がっていかないということにもつながっていくと思います。

齊藤

 それと、介護職ベースのケアマネがすごく増えてきている。これが介護保険部会でも、発言の中でどなたがしたか忘れましたが、そのことによって医療系のサービスが使われない。訪問看護、あるいはリハビリテーションがあまり使われない。これは実態としてはどうなのでしょうか。なんとなくイメージはそうかなと思うところはあるのですが、本当にそうなのかな、それで引っ張られているのか、それとも違う要素があるのか、それはすごく気になる要素ところですが、どうですか。

崎山

 データは持ってないので何とも言えないのですが、私の周りの感覚から見ても訪問看護ステーションなり、通所リハなり、そちらのほうへのつなぎが後手後手に回っている印象を受けています。これは、訪問看護ステーションの看護師達に結構飲み仲間が多いので、その中での話ですけども、非常にギリギリになって言ってきてくれると。もう少し、半年でも3ヶ月でも早く関われていたらもっと違ったのに、ということを言われます。そのあたりの観察力ということが、どうしても看護系のケアマネジャーの方にちょっと劣るのかな、という気はします。

齊藤

 そのケアマネさんがどこにいるかでも違ってくるでしょうけども。ありがとうございます。

 さて、次が佐野さんですけども、佐野さんの所は鶴巻温泉病院を控えていながらも、すごいと思ったのは、併設するクリニックに加え、地域の13診療所の主治医と常時往診にくる5診療所の先生がいる。すごいなと思ったのですが、これすごいですよね。どうやってつくっていったのですか。それをどうしても聞きたいです。

佐野

 鶴巻温泉病院と正直、同じ法人で近くにありながら縁がないです。逆に、地域の開業医の先生と、今、先生がおっしゃったように密接です。これはどういった形で出来てきたかというと、先ほど言いました訪問看護ステーションがとにかくキーになっています。訪問看護ステーションが平成8年の開設以来約15年の歴史をもっていますが、その訪問看護ステーションが地域に根ざした活動を長年にわたってやってきて、地域の開業医の先生との信頼関係を築き上げてきたことが、一番大きな要因ではないかと思います。ですから地域の人々にとっては、鶴巻温泉病院も箱ものとしては大きな箱もので、駅前にどっしりとあるのですけども、実際に患者さんに関しては、横浜、東京、川崎等から遠方から来ている入院患者さんがほとんどであって、実際地域に根ざして地道に活動しているのは訪問看護ステーションです。東海大学病院も活動地域内にあるのですが、がんのターミナルがどんどん開業医の先生のところにおりてくるわけです。そうすると、私どもの訪問看護ステーションと、地域の先生が連携して地域をまわっているというような歴史があるということだと思います。

齊藤

 すごいですよね。鶴巻温泉病院院長の鈴木先生何かありますか。

鈴木

 地域の方達の中では別の存在になってしまっているところがあって、最近、私が来てからだいぶ交流は深めていますので、すみません。でもそれは言っていいですよって話をしていたのですけど。

齊藤

 すごいなと思って。皆さん聞いていておもしろいなと思われると思うのですけれど、特別養護老人ホームは日本には昔からある、そういう制度の中では、医者が自由になかなか入り込んだり出来ないようになっていて、でも新しく出来た制度の中では自由に動けるようになって、結局新しいものをつくらないと出来ない日本の体質というのはいかがなものか、やっぱり今あるものを、今あるサービスをどうするかということが、原点にないといけないんじゃないかなというのを、どうしても一度形が出来てしまうと、その形から1歩脱皮して、あるいは、今まである決まったものから出るというのは、日本人は苦手なのかもしれませんけれど、そういうことを考えていかないと、いくらたってもお金ばかりかかるだけだと、そんな気がしてならないのです。よくわかりませんがそう思うのは私だけでしょうか。ありがとうございました。

 さて、それからグループホームに関しては長井さんが慣れていらっしゃって、お話がすごくわかりやすくて、ありがたかったと思うのですが、加算の使い勝手が悪いというお話がありました。加算をつくったりする時に、私が関わりをもっていたもので非常に気になるのですが、どんな感じなのでしょうか。

長井

 まず夜間ケア加算に関しては、この加算では人員配置がまず出来ないというのがあります。全国的にみていくと、2ユニットに1人の夜勤という形ですけれども、多くはやはり建物の構造やあるいはその人の状態によっては、1ユニットに1人夜勤を配置しているところが多い現状です。夜勤ケア加算というのは先ほど言ったように夜間の時間帯ですから、夜の9時から朝の6時にそこに人員配置を更にするといったら、来てくれる人はいないです。特に北海道は雪の問題があって。

齊藤

 わかりました。確かにそうですね。日本の場合、グループホームのユニットの数が結構限定されています。運営上も経営上もユニットの数の問題は結構あるかと。2ユニットや3ユニットではなかなか厳しくて、海外へ行くと4つくらいのユニット、夜間帯は4つを1つでみる、30人から40人を夜勤2人でみるというような感じが、海外へ行くと結構あります。そのあたりは、グループホーム協会などで、もっと緩和しようよという話はないですか。医療と関係ないですが。

長井

 今、協会のほうでは5人から9人の定員枠がどうなのだろうという感じで、研究事業でやっています。特に若年の方も増えてきているので、やはり若年の方を9人のユニットで生活単位として考えた時には、やはり難しいものがあるのではないかということと、日中3対1ですので、9人の定員であれば日中職員3人、そうすると入居者が9人で職員が3人でというと12人です。食事の支度をしても12人、それに実習生とかが入ってくると、14〜5人の食事を作るのにすごく時間がかかるというのがある。ですから、今の家族関係の中でその単位がどうなのだろうかということと、あとは重度化をしてくるとか、ターミナルといった時に、果たして5人、9人という単位がどうなんだろうかということで、今年実態調査が入っているところです。何故9人のところが多いかというと、入院をすると、次の日から介護報酬がグループホームは入らない。そうするとなかなかやっぱり厳しいというのがある。病院のほうもそんなことをよくご理解をして、治療が終ったら早く返して下さる病院もあるし、30日ずっといて30日後に返すというような、中にはそういう病院もあったりします。

齊藤

 どうもありがとうございます。実はこの前ふりは宣伝の前ふりでございますが表のところに『Dementia Care−the Adards Way 問題行動のある痴呆老人のためのベストケア』という本を当会で、平井先生が会長の時に訳した本ですが、これはオーストラリアのタスマニアにあるアダ―ズナーシングホームという、動ける問題行動の人をみるナーシングホームがあるのですが、ここは4つのユニットです。4つのユニットで、夜間帯は4つのユニットが全部開かれる状況になっていて、真ん中に詰め所があって、すべて4つですから36人を2人でみる体制をつくっている、そのやり方が非常に効率的だと。日中は4つの家で、しかし夜間は1つの家だと、そういう見方をしていて、ずっと厚生労働省にこれがいいよと言ってきているのですが、いいねと言うだけなのです。こういうことは真似てほしいなと。ちょっと本の宣伝させていただきました。

 さて一通り、まだまだ私個人としてもお聞きしたいことはあるのですが、皆様方の中で4人の方に、何かご質問があればで手を挙げていただければと思います。いかがでしょうか。どなたでも結構です。当会の先生方でも結構ですが、どうでしょう。平井先生、何かありませんか。前会長の平井先生です。

平井

 どうもありがとうございました。今日は、今日も、ですけれども、色々勉強させていただいて、特に齊藤先生もおっしゃっていましたが、鶴巻の複合施設、おそらく私が思うには、開業医の先生方と、それから訪問看護と、皆にそれぞれ思惑があると思うのですけども、その辺のところがうまく適合しているのかなと思います。

 といいますのは、実は私、奈良県なのですけども、病診連携会議ということで、2ヶ月に1回くらい開業医の先生方と会議しているわけです。そこでこの間出てきて、なるほどと思ったのは、「お前のところの老健に情報提供しろ」と言うので情報提供したけれども、そのあとどうなったのかと。「先生それは老健に入ってどれくらいになりますか?」と言うと、「今もう4ヶ月」と言うと、「それでは先生の手は離れていますね」と私がつい言ったもので、ということで開業医の先生にしてみれば施設に入ってしまうとショートステイでない限り、在宅メニューでない限りは、やはり手が切れるわけです。

 ですからそういった意味で、私もなるほどなと思って今日も聞かせてもらったのですけれども、在宅メニューを維持するということが地域医療にも貢献することになるのかなということを、今日改めて勉強させていただきました。ありがとうございました。

齊藤

 どうもありがとうございました。まさにその辺が結構ポイントかという感じもするのですが、どうでしょう、他にもご質問ございませんか。

鈴木

 訪問看護をやっているステーションから、「うちでも看取りますよ」とか言っているのですが、そういうのは訪問看護をやっている人達からみると、そういうのは必要ないのですと。自分達でちゃんと看取るからと。先ほど長井さんのほうからも病院は短く短くとおっしゃって、利益がちょっとそれぞれ違うほうで、こちらの方達から見ると病院に入るということはあまり好ましくないのかなと、ちょっと思ったのですけれど、そのあたりはいかがなものかなと。

齊藤

 どうでしょう。お1人お1人思いっきり言って下さい。

長井

 認知症の方は、やはり環境が変わってしまうと、治療優先に病院はしなければいけないので、やはりそれがうまく適合できないので抑制をされてしまっているので、そういうところでは早く返していただければありがたいと、病院にも迷惑をかけてしまうことになってしまうのでと思っています。

齊藤

 佐野さん、しゃべりにくかったらいいですけれど大丈夫ですか。

佐野

 病院の方達には申し訳ないのですけれども、1日も早く返してほしいと、すぐに入院のその日からお願いをしております。基本的に、またPRっぽくなって申し訳ないのですけど、看護、医療、リハビリも、うちにはスタッフがいますので、本当に病院と同じようなことが手前ども在宅と同じような居住施設でできますので、よっぽどそちらのほうが病院に長居するよりも患者さんもよくなりますし、入院当初、初めに先生にすぐに返していただければ、こちらであとはやりますという形でお願いします。特に、認知症の方に関しては1日でも早くという形でお話しております。

長井

 病院の先生にもよりますが、こういうことを言う先生がいます。「今の状態だったら家に帰れませんよ」と、普通に家族さんに説明される。我々は帰れると思っていても、そう言われると、家族さんや御本人もそうですが、「じゃあもう帰れないのだな」と諦めてしまう。その辺を、もう少し我々と、そういうことを言う前にディスカッションをして、こういうところまでいけば何とか帰れますし、こちらで何とかサポートができますからと、そういうことをふまえた上で、家族さんに説明なりをしてほしいなと、そういう思いはありました。別に医療型に移らなくても、家に帰れたというケースが今までもたくさんありました。その辺を少し考えていただきたいと私は思います。

奈良

 早く返していただけますというよりも、受け入れていただける病院が少ないと言ったほうが適切かもしれません。特養の場合ですと、中には延命を希望されるご家族がいらっしゃいます。そうすると特養ではどうにもならない。もちろん、治療の施設ではないので。病院のほうも、この間ある先生から「なんで延命なんだよ」という話で、それは施設が決められないことですので、その辺の事情はよくご了解いただいてますが、そういう方もたまにいらっしゃいます。

 それから、どうしてもこれは治せるものは治していこうという考え方なので、治療できることは治療して、終ったら御本人が一番どこで最後を迎えるか、私は特養が終の棲家では決してないのではないかと申し上げたのはそこなのです。特養で最後亡くなりたいという方が65歳以上ですと15%くらいしかいない。ということは、みなさん在宅で亡くなりたいわけです。家だけではなくて、住み慣れた温泉地を離れたくないとか、有料ホームを離れたくないとか、いろいろあると思う。それを地域の中の仕組みとしてやっていかなければいけない。何でもかんでも特養に集中させるのはどうなのでしょうかと。全国で42万もいる。42万の方が、ベッド数で最終的に入れるのが5年6ヶ月くらいかかるわけです。そんな非現実的な話はないのかなと思うので、それで先ほどちょっとそういうふうに申し上げました。

齊藤

 ありがとうございます。そんなところでよろしいでしょうか。

 大塚みどりの郷では、家族へのインフォームドコンセントというのは、どんなメンバーでされているのですか。

奈良

 基本的に配置医の先生と施設長、それから看護師、生活相談員、介護職員のリーダー核、それから介護長というのが管理職にいますので、だいたいそのくらいのメンバーでご家族とお話をします。そこは「配置医も一緒にやらなきゃ、施設長とか逃げないでやってよ」というようなスタンスなので、一応先生の判断も踏まえて、施設としての判断もありますからということで、基本的にはそういう方向でやっているつもりでございます。

齊藤

 これは特養に限らず、病院もそうだと思うのですが、その時にいた家族とそうじゃない家族と全然意見が違っていて結構困るときがあります。お時間もそろそろきたところなのですが、先ほど奈良さんがお話なさったこと、それが結局他の方々とも共通していることなのかと思ったのが、医療は、あることが安心で、何かすることが大事なのではないかと。いてくれればいいと。何かしてくれと言っているのではなく、何かあったらやってほしいというのが医療のあり方かと。4名の方もそんなことを言って下さっているのかなと、そんな感じがするのですが。

 実は、私も特養を運営しているのですが、平成15年までは病院と7キロぐらい離れたところにあって、その頃は毎日特養から電話でした。ほぼ何日かおきには救急車で利用者が来る、すごいケースは、朝、今日夕方熱が出そうですと電話がかかってくることもあり、やはり不安なんですよね。その当時はおそらく、うちの法人の特養での看取り率は15%くらいでした。85%くらいは病院で亡くなっていた。それが平成14年の冬に病院のすぐ脇にすぐ引越ししてきて、体制も個室のユニットになったり、こちらも付き合いが長くなってきたりしたこともあったのですが、なんと今95%以上が特養で看取っているというような状況で、何が違うのかと思うのですが、ハードだけではなく、ソフトもですが、私はやはり安心ということなのかと。何かあった時にすぐ来てくれるというそういう存在で医療はありたいと。いつも福祉の方々とお話をするたびに、介護の方々とお話をするたびに、出しゃばってはいけないと、実感をいつもするところであります。しかし、教育は、そういう教育を医師も看護師も受けているものですから、ついつい何かやりたくなってしまう。そのあたりをうまくおさえられていくと、もっとお付き合いがいいのかと思っています。

 それともう1つ、今日も何名かの方からもお話がありましたが、私たちは、老人の専門医療を考える会は医師の集団ですから、私たちがこれからどうするべきかということを、このシンポジウムで何かを得ないといけないといつも思っています。そのような中で特養の嘱託医、配置医のカリキュラムのこととか、介護保険自身に関わる医師の研修の件とか、あるいはリハビリテーションも勿論そうですが、このあたりがとても重要なことと思います。誰でも関われる、何でもいいという話になって、主治医意見書の書き方の次元の話ではなくて、もっと根本のことを考えていかなければいけないのではないかといつも思っています。おそらく、そういう取り組みができるのは日医か、当会しかないと思っているので、日医がやれなければ、私達がやっていかなければならないだろうし、日医にも働きかけをしながら、何か、やはり医師だからすべて専門家であるといえばそうではないこともありますから、そういうことを老人の専門医療を考える会、決して病院のことばかり考えているだけではなくて、そういうことも議論の1つとして、私たちの取り組みの1つとして考えていきたいと思っています。

 次回はどういうテーマにするか、絆は考えていきますが、現場の声だけではなくて、今日、やはり4人の方のお話聞いていてすごいです。やっているところはやっているのだなと実感します。全般的にいわれる、よくマスコミで報道されるような施設のイメージとはまた違う、マスコミが悪いと言っているわけではないですよ、そうではありません。こんなに頑張っているところがあるんだ、というのをどういうふうに世間の人にわかっていってもらったり、それをすることはサービスを提供する側にとっても、非常にいいことだということを、何か訴えていけるようなシンポジウムを続けていきたいと思います。はじめに私が話しすぎましたので時間がバタバタになってしまいましたが、今後も皆様方に報告あるいはシンポジウムを通して、一緒に考える機会をつくっていきたいと思っていますのでよろしくお願いいたします。4名のシンポジストの方々、本日はどうもありがとうございました。

 
閉会挨拶
藤 井 功 (老人の専門医療を考える会副会長)
大川

 本日は長い時間、時間超過してしまいまして申し訳ありませんでしたけれども、お付き合いいただきましてありがとうございました。最後に閉会の挨拶を副会長の藤井功よりさせていただきたいと思います。よろしくお願い致します。

藤井

 みなさん遅くまでありがとうございました。このシンポジウムも介護と医療の絆を考えるの3回目でございます。最初から比べますと、最初は「これでいいのか介護保険?」ということから始まって、相当深く問題が掘りすすめられた気がしています。医療ニーズ、介護ニーズ、両方とも必ず必要なものでして、これがいかにミックスしていいサービスができるか。私自身、今日聞いておりまして非常に反省することが多くありました。私は病院をやっておりまして、退院患者さんの行くところがないから老健をつくろう、グループホームつくろう、これつくろうと、一種の囲い込みみたいになってしまっている帰来がありました。地域として、いかに患者さんにサービスするかということで、地域包括ケアというものをやる場合に、楽だからついつい自分で囲い込みをやってしまうという医療法人もたくさんあると思います。それをいかに地域としてみんなでみて、いかにサービスが出来るか、もう一回考え直すいい機会になったと私自身思っておりますし、また反省もしております。また来年もこういうシンポジウムを開かせていただきますので、多数お集まりいただきまして、各施設の方お誘いの上、また来年お会いしたいと思います。本日はどうもありがとうございました。

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老人の専門医療を考える会 JAPAN ASSOCIATION FOR IMPROVING GERIATRIC MEDICINE