老人の専門医療を考える会 - 全国シンポジウム - 内容
第33回 医療と介護の「絆」を考えるII - 地域で安心して暮らしたい-   平成22年5月29日 大手町サンケイプラザ
シンポジウム冊子(PDF版:5.2MB)

  
13:30 開会挨拶 齊藤正身 老人の専門医療を考える会会長
13:40 プレゼンテーション(1) 「田舎の在宅療養支援診療所の経験を通して」
  坂梨 俊彦  坂梨ハートクリニック院長
講演スライド(PDF)
14:00 プレゼンテーション(2)「ユニバーサルな支援と共に生きる社会を目指して」
  曽根 直樹  東松山市社会福祉協議会 地域福祉課長
講演スライド(PDF)

14:20

プレゼンテーション(3) 「在宅における医療と介護の絆を考える」
  伊藤 隆夫  全国訪問リハビリテーション研究会会長
講演スライド(PDF)

14:40

プレゼンテーション(4) 「在宅を支える訪問看護ステーションの役割」
  追風 美千代  あい訪問看護ステーション所長
講演スライド(PDF)
15:00 休憩
15:15 シンポジウム:医療と介護の「絆」を考えるII 〜地域で安心して暮らしたい〜
  シンポジスト:坂梨俊彦、曽根直樹、伊藤隆夫、追風美千代
  座長:斎藤正身(霞ヶ関南病院理事長)
16:15 閉会挨拶 桑名 斉 老人の専門医療を考える会副会長
 
開会挨拶 齊藤正身 老人の専門医療を考える会会長
大川

 本日、総合司会を務めさせていただく、南小樽病院の大川博樹と申します。どうぞよろしくお願いします。北は北海道から南は沖縄まで、全国から集まっていただきまして、お忙しい中本当にありがとうございます。

 老人の専門医療を考える会第33回全国シンポジウムの大きなテーマは、前回に引き続き「医療と介護の「絆」を考える」としており、パート2「地域で安心して暮らしたい」ということで、シンポジウムを開催したいと思います。

 まず、老人の専門医療を考える会会長、霞ヶ関南病院理事長の齊藤正身よりごあいさつがあります。よろしくお願いいたします。

齊藤

 皆さん、こんにちは。今、ご紹介がありました、齊藤でございます。

 前回に引き続いて「医療と介護の『絆』を考える」、前回のお話は、「これでよいのか介護保険」という題でさせていただきましたが、とてもそれでは話しきれなかったといいますか、本当にさわりの部分しか議論できなかったものですから、今回は少しずつ細かいところから、その中身をということもあって「地域で安心して暮らしたい」としました。題名は大きいですが、今回出てくださる方々は、実際、地域で一番医療や介護のサービスを利用される方やご家族・地域の方々の一番近いところで働いている方々にシンポジスト、あるいはご発表いただくという形にさせていただきました。

 毎回、結論めいたことまで話はできませんが、何が今課題なのか、そのような考え方もあるのかということだけでも、皆さんと共有できればということで継続してきたシンポジウムが、もう33回です。今まで随分いろいろなこともやってきましたが、やっと当会の関係者以外のかたもたくさん来てくださるようになりました。今まではどこを見ても知っている人ばかりだった時もあったのですが、そのような部分では楽しみにしております。

 今日はご報告があります。実は2年後に、診療報酬と介護報酬の同時改定がありますが、お金のことはともかくとして、2年後に介護保険の制度改正があります。もう何回目かの制度改正になります。この制度改正の2年前くらいに、議論できるような場が厚生労働省の中にできたりするわけですけれども、今回も2年ぶりか3年ぶりだというお話ですが、社会保障審議会の中に介護保険部会ができました。社会保障審議会というのはご承知のとおり、年金、障害者、介護保険、医療保険のことを話し合います。その中の介護保険にかかわる部分に介護保険部会というのがありますが、大変光栄といいますか、荷が重いのですが、その委員に今回入らせていただくことになりました。

 立場は、できればこの会の会長として出たかったのですが、あまりこの会は認められていないのかよく分かりませんが、そうではなくて、病院の理事長として出てくれと言われました。どのようなスタンスでというようにお話をしたら、先生は学識経験者ですと言われて、学識などと言われると、何が学識か自分でもよく分からないのです。しかし、好きなことを言っていいとは勝手にという意味ではなくて、その団体を背負っての発言ではなく、現場で仕事をしながら抱えている課題、あるいは夢のようなことを語れればいいかなと考えております。メンバーを見ると結構ベテランの方々ばかりなので、私だけ青臭いことを言うことになるかもしれませんが、あえてそのような立場でやっていこうかなと思っているところです。

 だからといって、そのような会の委員になるのは初めてではなくて、実は、介護保険の制度が始まる前後にも同じような役割を担っていたものですから、その責任もあるというように思っています。今回もこのようなシンポジウムで、皆さんからいただいたご意見も参考にさせていただきながら、地域の方のために働いてみたいと思っているところです。次回のシンポジウム等ではきっとご報告できると思いますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、蛇足の話が長くなってしまいましたが、老人の専門医療を考える会第33回のシンポジウムを始めたいと思います。これから4時半近くまで、お付き合いのほどをよろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。

大川

 あらかじめご報告申し上げますけれども、ここにアンケートがございますので、各先生、講師について言いたいことがあれば、どのようなことでも書いていただければ、私どもも大変参考になります。

 
プレゼンテーション(1) 「田舎の在宅療養支援診療所の経験を通して」
坂梨 俊彦 (坂梨ハートクリニック 院長)

 私の住んでいる地区は、人口3万人ぐらいの、まさに田舎です。スライドで、ご紹介いたしますが、かなりの田舎でびっくりされると思います。そのような中で、自分がどのようにしてきたかということをお話しようと思っております。出席者を見渡すと、みんな都会のかたが多いようで、どれほど参考になるかなと思いますけれども、多種の機能のない田舎で、不足した機能を自分でしようと思って、一生懸命頑張っています。恐らく、都会においてはその機能を別のかたにお願いし連携できる場合もあると思います。そのような形でお話を聞いていただければと思っております。

 当院の位置する阿蘇市は、平成21年の人口は約3万人。人口密度は77.8名。これは全国の市の中では相当後ろのほうに属しています。熊本市はこの外輪山の向こう側になり、熊本中心部までは車で約2時間かかります。北外輪山、阿蘇谷、大観望に囲まれた、私の診療所はこの部分にあります。ちょうど町外れにあたります。集落の外れというところでしょうか。少し南に振ってみると、中央火口丘、阿蘇五岳が見えます。外輪山に囲まれたカルデラは南北25キロ、東西18キロ、阿蘇市は南北17キロ、東西30キロですから、外輪山の中にある私の診療圏は、結局南北17キロと東西18キロになります。

 高齢化率は30.1%で、阿蘇の中央火口丘、根子岳、高岳が見える水田の地帯の中に、ポツポツと集落がある地域です。私自身は、ケアマネジャーを同行して訪問することが多いです。

 私の診療所は循環器内科、内科を標榜していますが、透析医療もしております。また、訪問看護、訪問リハビリの機能を有しています。後で紹介しますけれども、阿蘇市には訪問看護ステーションは1か所しかありません。ですから、当院は訪問看護もしております。ベッド数は19床で全床一般病床です。また在宅療養支援診療所でもあります。

 当院の医療体制は、大体、ここに映っている職員の1.5倍ぐらいです。常勤換算で2.6人の医師がいますが、基本的には、私が主体で、当直等の補完的役割をお願いしています。病棟・外来の看護師が16人。透析部門には看護師が3人、理学療法士2名。このような陣容です。最近、栄養士が管理栄養士になってくれました。ですから、栄養指導も頑張ってもらおうと思っています。あと、居宅支援事業所にケアマネジャー1名で、総勢47名でやっております。

 診療所に隣接してリハビリ庭園があります。いろいろな患者さんたちが一生懸命ここに来て、リハビリしたりするようにしているのですけれども、時々は中高生が実習に来たりもしております。当院の目標を書きました。ここに書いてある「有床診療所の機能をフルに生かして、在宅生活を可能な限り長く、出来れば終末期にいたる息の長い在宅支援を行う」。これが私のモットーです。ですから、できるだけ長く家庭にいていただきたいというのが、私のモットーです。

 阿蘇市の医療および介護施設です。病院は3か所で、精神科病院を入れて4か所です。有床診療所が6か所で、在宅療養支援診療所は4か所。無床診療所は6か所。高機能病院といわれるような、我々が紹介できる機能を持った病院は、車で1、2時間の阿蘇医療圏外にあります。老人保健施設、特別養護老人ホームはスライドのような状況です。

 医師数は10万人当たり153人です。全国平均が現在220人ぐらいですか。それに比べれば、かなり少ないです。人口も減っているから、その当院医師過剰になるかもしれませんけれども。一方では、ベッドは10万人当たり1,920。阿蘇医療圏が1,125。熊本は1,455。全国は989ですから、大体全国平均の2倍ぐらいのベッドがある地区です。大半は慢性期とか療養の方達の療養病床で、一般病床は少なく、入所・入院は比較的容易です。しかし急病や専門医療は域外の連携が必要になってくるような地域です。

 当地区の介護保険の在宅サービスですが、デイケア、デイサービスは比較的多数あります。ですから、いつでも行けます。訪問看護ステーションは医師会立の1ヶ所です。オンコールの看護師を置いていても、少数のオンコールにしか対応困難で、緊急対応は合格点には達しません。ヘルパーステーションは6か所ですが、夜間対応は原則的にはありません。昼間主体です。グループホームは3か所あります。つまり、当地区では夜間、緊急の対応能力は極めて乏しいということです。

 私の有床診療所が、どのように在宅を継続させるためにやっているかということをお示しします。在宅継続の最大の難関は、医療的ニーズが高まった時です。肺炎になったり、脳卒中になったり、いろいろなことがあると思います。そのような時に、直ちに高次医療機関に転送するのではなくて、例えば、肺炎の時でも、呼吸状態が悪いとか、人工呼吸器が必要と判断される場合は別として、そうではない時は、当院のクリニックに入院させます。肺炎になって治った後も、体力が低下して、すぐに家に帰れない。家族の中には地域に病床もあるから、介護量が増加して大変だから、介護保険施設に入れてほしいというような要望もあります。でも直ちに、一時的に介護量が増加することだけを理由にして介護保険施設に入れるのではなくて、そうした場合も、当院で見ようではないかということで、ワンクッションを置くような立場でもあります。ですから、高次医療機関や介護保険施設との間に立って、入院加療あるいは在宅での加療が出来るということで、有床診療所を生かしております。

 これは、当院の入院機能を検証しているものです。大体、月に30人。平均毎日一人は入院します。私は循環器内科かもしれませんが、30%が肺うっ血や胸水貯留を伴う慢性心不全の増悪等の心臓疾患、肺炎は約20%。そのほかの急性期疾患。急性腰痛症を含めて急性期疾患を入れると、大体相当数が急性悪化によって入院しています。平均病床利用率は93.4%。有床診療としては、これはかなり高い方かなと思います。平均在院日数は21.8日。療養病床は平均在院日数が155日以上と聞いております。それから比べると、一般病院並みの平均在院日数だと思います。

 現在、午後10時以降は当直と宿直の2名が勤務しております。夜は2名体制です。有床診療所の2名体制もまだまだ少ないです。国が2名体制に対して、少しお金をつけてくれましたけれども非常に少ないですから、なかなか2名体制にできないようです。診療時間外は在宅待機の看護師1名を置いて、在宅の救急患者、来院した救急患者、あるいは病棟で救急が発生した時の応援をお願いしています。

 当院の救急対応ですが、在宅訪問は在宅療養支援診療所ですから当然です。そのほか透析患者は24時間対応しております。慢性の病気による、かかりつけ患者は可能な限り私が診ておりますが、学会、研究会、地区の研修会等で診れないこともあります。もちろん医療、看護、設備を超えるような呼吸管理や栄養管理が必要な場合は、高機能病院へ搬送します。ターミナルの場合はいろいろなパターンがあるでしょう。家族・本人といろいろ話し合って対応することになります。

 これは、ヘリコプターで運んだ時の風景ですね。直近2年の当院の入院ですけれども、入院が720件。その当院救急対応は約110件。ですから、年間に50件から60件の救急車が来ているということです。救急車受入が38件で、高次病院へ救急車が転院搬送するのが70件で、このようにヘリで搬送する場合、あるいはドクターカーで搬送する場合もあります。

 この写真はつい先日のことです。心臓弁膜症術後で、何回も胸水がたまるような人で、これまでも利尿剤とか、ハンプとかを使って当院入院を繰り返し頑張って来ましたが、今回は反応が悪く、改善しなかったものですから、ドクターカーを呼んで、大学病院に転送したケースです。このように大学病院とか、いろいろな高次機能病院とは必要に応じて連携していくことにしております(その後、この方はやや改善して当院有床に帰ってきました)。

 緊急連絡体制シートをお示しします。在宅療養支援診療所として、患者さんに渡しているものです。誰が受けて、どのようにして、誰がオンコールしてというような、24時間在宅を支える当院の体制を挙げたものです。もちろんここに書かれている看護師さんたちは、在宅患者以外にも病棟や時間外等の手薄な緊急時にも出動しているわけです。大体直近2年で84回出動していますから、月に3回ないし4回の出動です。また当院では緊急訪問看護をしますが、これは非常にターミナルが多い時とか、肺炎を在宅で診なくてはいけない時とか、いろいろなことによってオンオフがあります。昼間も含めて同期間に64回訪問しておりました。

 これは先ほどご紹介したリハビリ庭園から見た、当院の診療所です。チューリップトリーやセンペルセコイア等の高木も交えて、目を楽しませるようにしております。春先にはつつバラが大量の花を咲かせます。

 訪問診察は自院で独立して実施しております。4月現在65件です。主治医意見書は年間約200件ほど書いております。訪問リハビリはPT2名で、4月は延べ214回の訪問リハビリをしております。居宅支援事業所の4月のケアプラン対象者は38件でした。

 当院が関係して他界された在宅訪問患者さんは、どのような転帰だったかということをまとめてみました。167名が、開院以来約10年足らずですが、亡くなられています。約80%が高齢者で約20%が癌患者でした。癌患者が少ないなという印象を持たれるかたもここにいらっしゃると思いますけれども、やはりホスピス制度、在宅ホスピス制度とかいうのはなかなか周知されておりません。それに病床が多い地区ですから、すぐに病院に入るケースが多くて、現在は自分が診ていた中で、癌患者になった患者さんを主に診るという感じです。

 これらの患者さんの内、在宅で34%、当院で30%、先ほど見たような高次機能病院に転送したあと亡くなったかたが14%。それから、どうしても介護負担に耐えられないということで介護保険施設に転所して亡くなった人が22%でした。ここで言えることは、この22%を除く78%の患者さんは、長期にわたる在宅が可能であったということです。このことは是非強調したいと思います。これは病状の変化に素早く対応して、有床診療所が入院させ、そして軽快すれば直ちに退院させることで出来たと思っております。実際に当院に関係して他界された訪問患者さんは、当院のクリニックに複数回の入院経験がある方が多い印象です。先ほど、平均在院日数は20日と言いましたけれども、病状の変化で2週間から3週間の入院はしばしば見られます。

 このような経験を踏まえて、私がどのようなかかりつけ医像を持っているかご紹介したいと思います。(これは、京都で開かれた会で発表した時の、当院のスタッフと一緒に、舞妓さんたちと撮ったものですね。)私が考えるかかりつけ医像というのは、基本的には、医療代理人だと思っています。弁護士が法定代理人であれば、私たち医者は医療代理人ではないかと思っております。だから、患者の全身的疾患管理、健康管理、看護やケアの管理にまで、長期にわたって積極的に、主体的に、人任せにせずに診るような医師だと、私は思っております。最近、報道でいろいろなことを勉強した家庭医、総合医が必要だと言いますが、このような初期治療を目指すような家庭医とか総合医とはまた異なる側面を持つのだろうと思います。

 長期にわたり全人的な医療等を提供するため、患者の医療的代理人ですから、もし自院に不足する機能があれば、それをポンとだれかに紹介しておしまいというのではなくて、紹介するけれども、ちゃんと相手のことを知った形で紹介する。返してもらう時も、どのような情報で、どのような診断で返ってきたかがちゃんと分かるような形で返してもらい、丸投げにはしない。この辺は、当院は田舎で不足する機能があまりにも多いですが、皆さんがたの都会では不足する機能は意外に少なくて、自分のところで持たなくても、不足する機能は幾らでも周りと連携したり、紹介することができるのかもしれません。

 これは外来の患者さんに使っている、あるいは訪問の患者さんに使っているツール、ハートカルテです。もうかれこれ7、8年になります。いろいろな情報、その患者さんにとって全部を載せるわけではなくて、その患者さんにとって必要な情報、何を知っていてもらいたいかをのせます。突然救急で運ばれた時に、救急医が初めて診る時、何を知っておいてもらったほうがいいか。初めから異常があるなら心電図を載せるとか、そのような形で使っております。そして、患者さんとの間で情報を交換しています。あるいは、遠方に出かけ、突然、どこかのお医者さんにかかった場合に出すように指導しています。お薬手帳はやめろて、調剤薬局でも全部こちらに張ってもらえと、そうすると、薬剤師さんもデータが見られるではないかというお話をしています。私にとってもいいツールになっています。といいますのは、私は58歳ですけれども、だんだんやはり記憶力が悪くなってきました。昔は患者の名前は全部覚えられたのに、なかなか覚えれない。そうすると、長年見ている患者さんをパッと見て、「え、だれだったかな」と思うことがあるわけです。そのような時に、カルテを見返すよりもはるかに分かります。何を私がやってきて、何を患者さんに主張したかったかということが、すべて分かるようなツールになっています。だから、よく情報交換で電子カルテだとか、いろいろなもの、あるいは血液データを持っていくということがありますけれども、それよりも必要なデータだけ、その患者さんにとって必要なデータだけを載せる方がはるかに有益です。何をしているのか、どうしているのかというのが分かるようなデータを手短にというのは、非常にいい方法だと私は思っております。

 先ほど言いましたが、患者を全人的に診るためには、自分にない機能を求めるわけです。いろいろとない機能があるかもしれません。風船の数や色は自院の置かれた環境で決まる。私のところは、周りにこのように利用できるところが少ないから、二つか三つしか持っていないけれども、皆さんがたのところは、都会であればたくさんの機能を持ったところがあるから、たくさんの風船があるかもしれません。私はピエロ役ですけれども、風船をしっかりと握って、責任者、医療代理人、かかりつけ医として、常に風船を引っ張って、時には必要だったら引き寄せるというような役目がかかりつけ医ではないかと思っております。

 しかし残念ながら、このように風船がちぎれて飛んでいってしまうことがあります。どのような時なのかというと、現実の制度上は丸投げしか方法がない場合があります。例えば、療養型病床群に入院する。老人保健施設に入所する。ショートステイするという時には、どうしても丸投げになってしまいます。今まで見ている患者さんを一緒に見るとか、老健施設に入っている患者さんが、私のところで診ている患者さんは私が往診をするとか、あるいは、病状が悪化した時には診ることが出来たり相談を受けたり出来るという制度は、明確なものがないように思います。そのようなわけで、かかりつけ医や介護支援専門員は、このようになる時には自動的に変更、プチンと切れてしまって、あちらに飛んでいってしまうということがよくあります。

 私の望みたいことです。終末期までの息の長い在宅支援を目的とする当院としては、一般病院の解放型病床のように、本人や家族が望めば継続的にかかりつけ医が施設の医師と協力して診療できる体制があればいいなと、私は思うわけです。そして、在宅支援機能を主眼とした老人保健施設は、できれば介護保険ではなくて、医療保険を分離して十分な医療を提供できるようになればなと、そうしたら、私たちかかりつけ医や介護支援専門員が継続的し、在宅にも復帰しやすいのではないかと思っています。

 地域ケアシステムにおける場合も同じです。かかりつけ医は、例えば、グループホームだとか、デイケアとか、いろいろな風船を持っています。けれども、サービス機関や介護支援専門員に丸投げして、後のことは介護支援専門員が全部やってくれとは、言いたくないし、私は医療代理人として、ずっと手綱を引いておきたいと、思っているわけです。これは一般には連携と言われますが、単純な連携ではありません。単純な連携の場合は、責任者がどこにいるか分からない。みんな頑張るかもしれないし、みんな頑張らないかもしれない。だれが責任者か分からない。何かあった時に、だれに言えばいいのか分からないということがあります。私は、そのような役目は私の役目だと思っております。

 まとめです。地域はすごく広く、人口は3万人ぐらいと少なく、人口密度も低い。このような田舎の当院の現状からいろいろ述べました。お役に立つこともあったかもしれません。私は当院にない機能を丸投げせずに、むしろ医療であれ介護であれ、他施設を当院の機能の一つと考えることが大事だと思っております。在宅の場合、在宅の家に病床があるという考え方と同じことですね。私は、他施設は当院の機能の一つだと考えて利用しようと思っております。そして、先ほども訪問の話の時に述べましたが、迅速な患者対応を目的とすると、医療やケアが急に必要になったりすることがあります。このような場合、介護支援専門員を同行させておくと、すぐに対応でき便利です。在宅訪問患者は要介護患者であっても、変化の可能性が外来患者よりも高いので、特に便利です。

 そして、これは愚痴かもしれないし違うかもしれないけれども、介護支援専門員、ケアマネジャーのかたは、医療関係者に比べて、すごくゆっくりしたかたもいらっしゃいますね。私の地区では、福祉系出身のかたは、何かゆっくりしていらっしゃいますね。事実ではないかもしれませんよ。私はそう言う印象を良く感じます。何かを頼んでも、それは話し合って、会議をして1週間後にとかですね、そのような形が結構あります。医療のように今すぐにではないように思うことがあります。しかし、在宅維持には今すぐにが必要な場合も多々あります。

 たとえば、有床診療所で適切な入院期間で入退院させるには、退院時にはすぐに対応して頂かく必要があります。いたずらに退院時期が延び、在宅復帰困難を助長する可能性さえあります。介護分野でも急に需要が増える場合もあるのではないでしょうか。急に需要が増えた時に、すぐに迅速に対応できる仕組みが必要です、そうでなければ、家族は在宅の継続に音をあげる場合もあるでしょう。私は介護支援専門員をしばしば同行させております。もし、他の介護支援専門員が担当していた場合でも、私の介護支援専門員を通して、いつでも連絡させます。そうすると、早く円滑に済むことも多々あります。

 有床診療所の入院診療報酬は今回の診療報酬改訂後でも恐らく、相当低いと思います。15対1の病院から比べても、相当低い水準です。しかしながら、有床診療所の在宅支援機能について、やっと厚生労働省も少しずつ認識し始めているようで、今回は少しだけ報酬がつき、改善がありました。有床診療所は全国的にはどんどん減っております。有床機能があるととても良いと私は思いますが、実はどんどん減っています。それは、私は24時間365日と言いましたように、個人の医師にものすごく負担がかかるののも一因です。今日、ここに来られたのは、たまたま当直者を見つけられたからです。そのようにだれかに頼まないと、絶対に逃げられない、抜けられない。24時間365日やらなければいけないと言う実情があります。先ほどカンボジアの写真が出ました。正月にはカンボジアに行きました。それは大学の先生がたが当直をしてくれたからです。そのように自主的努力で代わりを見つけない限り、有床診療所の院長は絶対地域から離れられないのです。

 ですから、在宅を支援している診療所、特に有床診療所はそのような状態だと思いますね。有床診療所が減り続けるのも、こうした非常に重い負担が一因です。診療報酬が安いと当直者も確保できないし、看護師も十分には雇用できにくいとことに繋がってきます。でも地域で安心して暮らせる機能の一つとして、厚生労働省の変化は、多少は将来に向けて光明を与えるのではないかと思います。そのようなことで、私のお話を締めたいと思います。ありがとうございます。

 
プレゼンテーション(2)「ユニバーサルな支援と共に生きる社会を目指して」
曽根 直樹 (東松山市社会福祉協議会 地域福祉課長)

 曽根と申します。よろしくお願いします。こちらの老人の専門医療を考える会という会には、若干はまらないような発表になるかもしれませんけれども、お許しいただいて、私が住んでいる東松山市で、取り組んできたことについてご報告させていただきたいと思います。話の内容としましては、介護が必要な高齢者の方々だけではなくて、障害のある方も含めたすべての方が安心して生活ができる地域をどう作れるかという、そのような内容になります。

 東松山市は人口9万人で埼玉県にあります。ほぼ埼玉の真ん中に位置しております。平成10年に「市民福祉プラン・ひがしまつやま」というのができまして、これは東松山市の障害者プランなのですけれども、障害のある方だけではなくて、要介護の高齢者のかたや、あるいはけがや病気、出産で、一時的に支援が必要なかたも含めて、すべての人が安心して生活ができる町作りをしていこうということが基本理念になりました。いわゆる共生社会の実現ということを目指していくということになると思うのですけれども、これまでの福祉の仕組みというのは、障害種別に分けたうえで、障害のある人と障害のない人が全く別の場所で生活するという仕組みを作ってきたと思います。

 例えば、知的障害のかたの場合ですと、先天性障害ですので、乳幼児期には知的障害児通園施設という特別な施設に通って、療育を受けて、学齢期になると、知的障害児の特別支援学校に通って教育を受けて、卒業すると、知的障害者の通所施設に通って働いて、家族介護ができなくなると、知的障害者の施設に入所して一生生活する。これが制度が予定している典型的な知的障害者の人生ということになります。

 けれども、障害のない人は乳幼児期には保育園、幼稚園で遊んで育って、学齢期になったら地元の学校で勉強して、学校を卒業したら社会で就職して働いて、自宅で生活する。これがごく当たり前の生活ということになりますので、いわゆる共生社会を目指していこうと思うと、これまでの福祉の仕組みを根本から変えていかないと、それができないということになると思います。そうしますと、もうやることは一つしかありません。障害のあるなしで分けない支援の仕組みに転換するということになると思います。障害のある子も、障害のない子も、乳幼児期には同じ幼稚園・保育園で遊んで育って、学齢期になったら同じ学校で勉強して、学校を卒業したら社会で働いて、普通に住宅で生活する。

 ただ、支援が必要なかたがこの生活をしようと思うと、一般の地域社会の生活の場に、その人が必要とする支援がちゃんと用意されていないとできないということになります。そうすると、保育園、幼稚園あるいは学校に加配の保育士とか補助教員、あるいは介助員というマンパワーが用意されている。あるいは、障害のある子一人一人に応じた教育的な支援、療育的な支援が一般の保育、教育の場で受けられる。あるいは、就職する時には就労支援がある。住宅で生活するためには、住まいの構造がバリアフリーになっているとか、そのかたが必要とする支援が自分が住んでいる場所で受けられる。このようなことが必要になってきます。

 外出する時にはガイドヘルパーが必要ですし、あるいは、サービスを利用したい時、あるいはいろいろな困り事が起こった時に、だれかに相談して手伝ってもらえるような乳幼児期から高齢期までを支える相談支援、ケアマネージメントの仕組み、このようなことが併せて必要になってきます。これまで作ってきた障害種別に分けて支援する仕組みから、社会の中で統合されて支援を受けられる仕組みへの転換というのが、東松山市が目指してきた町作りといえると思います。

 東松山市にも、かつては障害児専門の通園施設がありまして、これが通園施設の写真なのです。私もかつてはここで働いていました。39人定員の通園施設でしたが、毎年毎年、障害のある子が定員いっぱい通ってきていました。平成8年に、東松山市が障害児保育要綱を作りまして、障害のある子が一般の保育園に上がると、加配の保育士をマン・ツー・マンでどんどんつけるということを始めた結果、通園施設を選ぶ子どもがどんどん減っていって、平成15年の末には、もう二人しかこの施設に通ってくる子がいないということで、今では閉園しています。これが今から20年前の写真です。ここに写っている子どもは全員が障害のある子どもです。後ろの真ん中でVサインを出しているのが、20年前の私です。

 今、障害のある子がどう育っているかというと、一般の保育園、幼稚園で育っています。例えば、この写真の最前列の一番右端の男の子は知的障害の男の子で、加配の保育士がついていました。今から9年前の写真です。最前列の一番左の女の子は、当院の娘なのですけれども、別に娘を見てもらおうと思ったわけではなくて、これはうちの子どものアルバムの写真です。

 これは今年の3月に卒園した知的障害と脳性まひを重複した男の子です。両わきにいる女の子はクラスのお友達なのですけれども、表情を見ていただくとお友達ということが分かっていただけると思います。小さい子どもは障害という概念がありませんので、だれも障害児というようには呼びません。そのかわり、「何でしゃべれないの」とか、「何で歩けないの」ということを率直に聞いてきます。それに答えてあげると、「ああ、そうなんだ。じゃ、一緒に遊ぼう」ということで、すぐにお友達になってしまうのですね。ですから、小さい当院から始めるということがすごく大事なことだと思います。

 この子は経管栄養が必要な重症心身障害の男の子で、経管栄養の注入を受けているところです。この子の入園に合わせて、この保育園には看護師が配置されることになりました。左に写っている人が看護師です。

 これは夕涼み会の写真ですね。子どもたちというのは、本当に一緒にいるだけですぐに友達になってしまいます。この左側の前にいる男の子は二分脊椎の男の子で導尿が必要なのですが、先ほどの看護師が導尿を行っていました。

 この子も3年前に学齢を向かえていまして、支援会議を保育園の中でした時の写真です。立っている一番左側の人が保育園の担任の先生です。隣が、後でご説明する総合相談センターの相談員です。この人は肢体不自由児の特別支援学校の特別支援教育コーディネータという相談職の人です。このかたは、作業療法士です。個々に必要な支援を、実際に保育を受けている場で話し合っています。

 これを概念図にしますと、かつては東松山市にも障害児専門の通園施設があって、そこにリハビリも含めた専門職がいて、赤い丸は肢体不自由の子、緑の丸は知的障害の子、水色の丸は障害のない子と見ていただくと、障害のある子は通園施設、障害のない子は保育園、幼稚園と、生活の場がすっかり分かれていたわけです。それが今は通園施設がなくなりまして、そこの通園施設を運営していた法人で診療所を作っています。そこに小児神経科のドクターとリハビリ職、あと心理職がおりまして、障害のある子に必要な専門の療育は個別の外来のリハビリという形で行っています。生活の場は障害があってもなくても、保育園、幼稚園ということになりました。

 さらに東松山市が、ここの診療所で専門職の巡回支援の委託事業を行っていまして、委託に基づいて、子どもたちを集めてしまうのではなくて、子どもたちが生活している場に必要な支援を届けるというやり方に転換しています。学校の選択も大きく変わってきました。かつては、障害のある子はほとんどが特別支援学校に通っていたのですけれども、今ではほとんどの子どもが地元の学校を選んでいます。平成8年に東松山市が介助員要綱というのを作りまして、障害のある子どもに教育委員会が介助員の派遣をしています。ここに写っている女性が介助員で、隣にいる男の子は自閉症の男の子です。これはさっきの二分脊椎で導尿が必要な男の子が入学したあとの写真で、この子の入学に合わせて、今度、看護師が学校に配置されることになりました。この子も経管栄養を受けている女の子なのですけれども、右にいる人が看護師です。真ん中にいる人が担任の先生です。この子にも介助員がついていまして、同じ学年の授業も受けています。この子は脳性まひの女の子なのですけれども、小学校からずっと同じ学校に通っていますので、お友達どうしが自然に助け合っています。

 これが今の東松山市の小学校、中学校の障害のある子どもの就学先なのです。通常学級、特別支援学級がありますけれども、全体の95%の子が地元の学校を選んでいます。特別支援学校に行っている子どもは5%ということになってきました。この子たちに対して、37人の介助員が派遣されています。

 学校を卒業したあとは社会で働きましょうということで、障害者就労支援センターといのがあります。建物は東松山市が造って、運営はNPO法人が指定管理者制度で行っています。これは中でトレーニングを受けている写真なのですけれども、ここは全くの通過型でして、何か月かセンターの中のトレーニングを受けたあとに、今度、企業内の実習に出掛けていきます。そこからさらにいろいろな会社に分かれて就職をしていくということで、この間、5年間で200人近くの人が就労支援センターを経由して、就職を果たしています。この緑色のグラフが累計の就職者数です。赤が離職者数なのですけれども、全体でアフターケアをしっかり行っていますので、職場定着率が7割ということで、非常に高い人たちが継続して働けています。

 さらに、地域の中での生活の場ということで、市内に障害者のグループホームだけで19か所あります。ここは私たち社会福祉協議会が運営しているグループホームで、最重度判定を受けている知的障害の人が5人生活しているグループホームです。これが中の写真なのですけれども、右の赤い服を着ている男性は手づかみでご飯を食べていますけれども、スプーンを渡してあげても、放り投げて使ってくれない人です。毎晩、夜勤を置いて、このかたたちの生活支援を行っています。

 このかたは脳性まひの全身性障害の人で、ヘルパーの支援を受けながら、全戸バリアフリーの市営住宅で一人暮らしをしているかたです。このような障害のあるなしで分けない社会を支えるために、東松山市総合福祉エリアというところが拠点的な役割を果たしています。ここもやはり、東松山市が建設をした老人保健施設を主体にした施設なのですけれども、指定管理者制度で市の社会福祉協議会が運営を行っています。

 ケアサービスセンターという部署が老人保健施設と、通所リハビリ・通所介護、訪問看護を行っています。老人保健施設の定員は84人です。平均在所日数が110日、ショートステイのベッド比率が約25%ということで、在宅支援ということを中心に運営をしています。総合相談センターと地域サービスセンターという部署がありまして、総合相談センターでは身体、知的、精神の3障害の相談支援事業と、地域包括支援センター。それから、介護保険のケアマネジャー。介護予防のための訪問指導。これは保健師、歯科衛生士、管理栄養士です。あと、手話通訳の派遣というものを総合的に行っています。

 地域サービスセンターではホームヘルパーの派遣。これも介護保険、障害者自立支援法、難病患者等居宅生活支援事業ということで、すべての制度にまたがるホームヘルパーの派遣を1か所のステーションで行っています。住民参加型在宅福祉サービスという有償ボランティアも行っていまして、制度の対象にならない人の支援も行っています。まず、総合相談センターなのですけれども、先ほど、坂梨先生も24時間365日を一人でやっているということを聞いて、本当にびっくりしたのです。私たちのところは一応、11人の相談員がローテーションを組んで、日勤が8時半から5時半まで、遅番が午前11時から夜の8時まで。それから、宿直が夜の8時から翌朝の8時半までということで、24時間365日の相談体制を作っています。

 年間の延べ相談件数が1万3,000件なのですけれども、その当院の半分が精神障害のかたです。高齢者のかたが全体の15%という比率になっています。これが、総合相談センターの窓口の写真です。

 ホームヘルパーの派遣も24時間365日行っています。毎晩、二人のヘルパーが夜勤をして、障害、高齢、難病を問わずに支援を行っています。介護保険で年間3万時間、自立支援法で年間2万5,000時間というのが、大体、この間の時間数になります。

 住民参加型在宅福祉サービス。これは社会福祉協議会で多くのところが行っている、いわゆる有償ボランティアです。制度の対象にならないけがや病気、出産で一時的に支援が必要な人や、あるいは、要介護で入院中のかたは在宅サービスが利用できないということで、洗濯物を家族ができなくて困っているかたが大勢いらっしゃると思うのですけれども、そのような場合も、この有償ボランティアが対応しています。

 これは高齢者のお宅での家事援助です。これは重症心身障害の男の子を、自宅のおふろでヘルパーが入浴介助しているところです。このかたも重症心身障害のかたで、外出の支援をしているところです。これは結婚式の披露宴の付き添いをした時の写真なのですけれども、従来は冠婚葬祭の時は施設のショートステイを使って、家族だけが出るということが一般的だったと思います。そうすると、支援が必要なご本人は冠婚葬祭に出られませんので、一緒に付き添っていくということも行っています。もちろん、お葬式に一緒に行くということもあります。これは夜間のヘルパーがこれから出掛けていくところです。

 共生型多機能センターあすみーるというものを運営しています。介護保険の認知症対応型共同生活介護と、小規模多機能型居宅介護。あと、障害者自立支援法の地域活動支援センター、これは日中活動の場になります。それに加えて、こどもくらぶという家庭内保育室を一体にして運営しています。これが外観の写真です。これはこどもくらぶに来た子どもさんと、認知症のグループホームに住んでいる高齢者のかたの写真です。この横になっている高齢者のかたは癌のターミナルのかたで、グループホームで看取りをしてほしいと言われたかたです。もう亡くなってしまったのですけれども、ドクターの往診や訪問看護も入ってもらって、最後までグループホームで看取りをすることができました。こどもくらぶに子どもさんが来た時に一番いい表情を見せておられまして、この時の一番の支援者はこどもくらぶに来た子どもさんだったなと思います。これは地域活動支援センターに来た、障害のあるかたたちの写真です。

 このような共生社会の実現ということを目指して、一般の社会の中に障害のあるかたも、介護が必要な高齢者のかたも、みんなが安心して生活ができる、そのような町を作っていくためには、医療も介護も連携をして、その人の生活の場で支援をするということが、一番大事な考え方になってくると思います。

 最後に、そのような支援の仕組みを支えるために、先ほども有床診療所の運営の大変さというお話があったのですけれども、やはりこれから財源をどのように確保していくかということに、きちんと向き合っていかなければいけないのではないかと思います。これは自民党政権の時の社会保障国民会議というところのホームページにあった資料なのですけれども、高齢者に対する社会保障の給付規模の国際比較というものが出ていました。横軸が高齢化率で、縦軸がそれに対してどのぐらい社会保障にお金をかけているか。そのようなグラフになります。

 高齢化率は非常に日本は高いのですけれども、お金をかけている社会保障の比率が非常に低いということが、このグラフからお分かりいただけると思います。その一番の元になっているのは、やはり社会保障に対する国民負担率が非常に低いというところに、一番の原因があるわけですね。例えば、北欧の福祉先進国では、7割以上が社会保障国民負担率として、国民が負担しているわけです。日本はまだ50%以下で、前自民党政権の時には、社会保障国民負担率を50%を超えないようにするということが決まっています。けれども、このままでは、やはり財源を確保するということが非常に難しいということになりまして、低医療、低福祉で、みんな不安を抱えながら生活するしかないということになると思いますので、やはり支援を担当している医療、介護の私たちこそが、もっとみんなでお金を出し合って、安心した国を作っていこうということを呼びかける必要があるのではないかと考えています。

 最後に、障害のあるかたや高齢者のかたが、今どのぐらい日本の中にいらっしゃるかということです。障害のある人は人口比5%というようにいわれています。要介護の高齢者のかたは、今の日本の高齢化率が22%をちょっと超えたところだと思うのですけれども、その当院の大体18%のかたが要介護認定を受けているといわれておりますので、全人口に対する比率でいうと約4%が要介護認定を受けている高齢者ということになります。そうすると、20人いると一人は障害者、一人は要介護高齢者ということになります。20人というのがどのぐらいの人たちかといいますと、これは自分を基点にして考えると、2親等までで大体10人いるのですね。自分の親が1親等で、祖父母が2親等。それから、自分の子供が1親等で、孫が2親等。あと、自分の兄弟が3親等。ここまでで10人ですので、夫婦でいると、2親等以内に大体20人の人がいる。その中に、一人は障害者がいて、一人は要介護高齢者がいるという比率ですから、決して、障害のある人の問題や要介護高齢者の問題は他人事ではなくて、自分の大切な身近な親族の問題ということになると思います。

 そのようなことを思い出せば、もっとお金を出し合ってみんなで支えあって安心して暮らしていくということが、支援が必要な一部の人たちの主張ではなくて、本当にみんなが安心して暮らせる地域、あるいは国を作っていくことだということが、みんなに伝わっていくのではないかと思って、いつもこの図を最後にお話しさせていただいています。

 ということで、ちょうど20分がたちましたので、これで終わりにさせていただきます。どうもありがとうございました。

 
プレゼンテーション(3) 「在宅における医療と介護の絆を考える」
伊藤 隆夫 (全国訪問リハビリテーション研究会 会長)

 伊藤と申します。よろしくお願いいたします。一応、肩書きとしましては、全国訪問リハビリテーション研究会の会長をさせてもらっています。所属としましては、医療法人の輝生会船橋市立リハビリテーション病院というところになっています。今回は訪問リハビリテーションの立場から、医療と介護の絆を考えるというところでお話をさせていただきたいと思います。

 早速ですけれども、まず各論に入っていく前に、今現在、地域、在宅、そのようなところを巡るリハビリテーションを中心にしたニーズといいますか、そのようなものがどう位置づけられているかというのをお話しいします。(スライド3)これは厚生労働省の諮問機関である高齢者リハビリテーション研究会が5年ぐらい前に策定したもので、現在、医療と介護の基本ラインがこの考え方に基づいて進められていて、特に、リハビリテーション医療に関して、どのような位置づけなのかということを非常に明確に示されています。これは介護保険にそのまま反映されまして、予防というところが重視されるようになりました。

 もう一つ大事なところは、傷病で急性発症するもの、一番イメージしやすいのは脳卒中です。そのほか頭部外傷であるとか、脊髄損傷等もそうなのですけれども、まず、急性期、回復期、維持期というリハビリテーション医療の流れをしっかり作りましょうということがうたわれました。ところがこの間、ずっとこのようなことがうたわれ続けてきたのですけれども、回復期のリハビリテーション病棟というリハ専門の病棟が制度化されて、ここはかなり充実はされました。しかし、急性期のリハはまだまだ本当に少なく、維持期リハも十分ではありません。

 今回、私がお話をするところは、この維持期リハの中の在宅の訪問型のサービスの一つとしての訪問リハビリテーションについてお話しします。要するに、急性期、回復期からの受け皿として地域でしっかりとニーズに応じて、通所であるとか訪問であるとか、そのような形でリハビリテーションを提供できる受け皿がほとんど整備されていません。増えてはいるのですけれども、ニーズに対しては十分な量が提供されていないという大きな問題を抱えています。

 もう一つ、実はさらにその問題を増幅させる要因はここなのです。要介護認定で掘り起こされる方がたくさんいます。在宅で徐々に機能低下していく一群の方がたくさんいます。これはだんだん高齢になっていって、動けなくなってしまうという場合やパーキンソン病とか、脊髄小脳変性症といった、いわゆる難病系の方ですね。このような人々は要介護認定で表面化し、リハをやっていればもっとよくなったのにという形で、実は現れてくる一群です。

 この急性期から回復期リハの受け皿としての一群と、要介護認定で発掘されてくる一群、これらの対象者が、非常に多いのです。ですから、これから訪問リハ、通所リハ、訪問看護、訪問介護、そして、かかりつけ医といった在宅支援スタッフの役割が非常に大きいといえます。そのような方々のための活動が今よりはるかにたくさん必要で、それから内容的にも質の高い、そのようなリハビリテーションサービスを提供していくことが、在宅の、特に介護保険分野なのですけれども、高齢者の方を支えていかなければいけない。状況としてはまだまだ量的にも質的にもお寒い状況なのだということを初めに述べておきます。

 実は病院と在宅で、かなり視点が変わってくるということをお示ししたいのです。人の生活行為を規定する要因について考えてみたいと思います。(スライド4)例えば、「寝たきり」という状態を想定しますと、なぜ「寝たきり」になったのかといった時に、われわれはすぐに脳卒中になって、後遺症の片マヒになったから寝たきりになっているとか、パーキンソン病で寝たきりになっているとか病気と直結しやすいのですけれども、病気になっても、あるいは障害を負っていても、寝たきりになっていない人はたくさんいるわけですね。

 ですから、病気や障害による機能低下は、単に一つの要素・要因ではあるけれども、それだけではないのです。つまり、精神・心理的要因としてのやる気・意欲、それから環境的要因、取り巻く「ものの環境」と「人の環境」などですね。この人の環境のところで、やはり介護と医療の絆といったものを、しっかり考えていかなければいけない。ものの環境はやはり街作りであるとか、あるいは家屋の構造などです。そのようなものが障害に見合っていないために、動けなくなって寝たきりになっていく。これらがそれぞれ関連し合いながら、影響し合っているわけです。

 病院では意外と、精神・心理的要因、環境的要因が問題ない場合が多いのですが、在宅へ移行しますと、高齢者が一人きりで、閉じこもり廃用症候群が進行してしまう。あと、ものの環境つまり物理的環境ですね。このようなところをしっかりと在宅をベースに変えていく必要がある。そのときに、訪問リハビリテーションの役割が非常に大きいと思います。

 訪問リハビリテーションはどのような目的があるのか。(スライド5)廃用性の機能低下防止。それから、身体面・精神面の活動性の向上。それを通じて、生活の活性化と社会性の獲得を図っていきます。つまり活動と社会参加、これはICFの考え方と全く同じですね。このような考え方に基づいて訪問リハを行っています。

 ではまず、何をやっているかというところですが、まず、心身機能の評価です。(スライド6)例えば、片マヒの評価などです。その方にとって一番大事なのは、残存機能なのです。残っている機能を適正に評価するということは非常に大事です。この人は、まだここまでのことができるのに、寝たきりになっている。これは家族のいろいろな要因とか、取り巻く人の要因でそのような形もあります。けれども、この人が持っている能力をこのように引き出せば、もっとこのような生活ができるのだというところを提示して、なおかつ、訓練的なことをしっかりやって、家で動けるようにしていく。あるいは、動くことによって意欲を引き出していく。そのようなかかわり方が重要だと思います。

 それから、家でのADLですね。ADLつまり日常生活活動の自立へ向けてしっかり支援する。それから、病院と最も違うところは家族・介護者への働きかけですね。介護のしかたが過剰な介護であったり、あるいはその逆であったり、寝かせっきりにしてしまっているところがあったり、あるいは、怖くて触れなかったりということを訪問介護さん、(ヘルパー)からよく聞きます。特に関節に痛みがあったりすると、なかなか触れない。マヒのある方に、そのようなところをしっかりと現場で、このような人にはこのようなやり方が一番ご本人の力も発揮できていいのだということを示していくことが大切です。

 環境調整も訪問リハの重要なそれから、できれば訪問型から通所型のサービスへつなげていく。できるだけ外へ連れ出す。そのような活動性を拡大していく方向への働きかけが重要な役割になってきます。もちろん、利用者・家族への精神的支援であるとか、訪問介護あるいは訪問看護、かかりつけ医、ケアマネジャー、そのような方との連携ですね。なかなかここは先ほどから、言われるようにうまくいっていませんけれども、さらに力点を置いていく必要性があるのだろうと思います。

 実際の場面を、ちょっと見ていただきたいと思います。これは、たいとう診療所という以前に私がいたところでの訪問リハの写真なのです。理学療法士が屋内で移動の練習をしているところです。(スライド7)先ほど言ったように、外へ連れ出して、屋外歩行の練習をしている。

 リウマチの方の訪問リハで、これも活動性拡大ですね。(スライド8)タクシーに乗れることで、飛躍的に活動範囲が広がります。これは脳卒中の男性なのですけれども、自分のことは何とか自分でできるようになったけれども、家での役割がないということで、このような後片付けをしてもらったり、あるいは、これから発展させて家事をやってもらったりということで、役割を持たせていくということも大事です。

 そして、まだまだ普及はしていませんけれども、言語聴覚士つまりSTですね。(スライド9)在宅で嚥下へのアプローチを行っているところです。これは評価を行って、そして、口から食べられるように、もちろんこの活動には非常にリスクが高いですので、かかりつけ医の絶大な協力体制がバックにないとなかなかできません。これから非常に期待される分野ではないかと思います。

 次は、リウマチの重度のかたで、電動車いすで屋内で過ごされているかたです。(スライド10)冷蔵庫の中のものを取り出したり、あるいは、最初にいすを押した歩行の練習をしていたかたですけれども、ベッドから離れてこのように食事をする時に、どのような道具が必要かということで、自助具といっていますけれども、自分で使えるものを評価している場面です。このようなことも非常に重要な活動だというように思います。

 これは、電動の高さ機能つきのベッドは意外と活用されていない。(スライド11)導入はされているのに、意外と活用されていない。実はどう使うのか、あまりご本人や家族が知らない。この方は足腰が弱ってきましたので、ベッドの高さをかなり高めに調整して、座ったり立ち上がったりがしやすいようなアドバイスをしている。この狭い廊下に合わせた歩行器を作成してしまう。その結果、トイレまで自力で行けるようになりました。

 これは、住宅改修のオーソドックスな玄関先での動作指導と住宅改修の提案です。(スライド12)ここに手すりを設けて、玄関先に降りたらいすに座って、靴の脱ぎ履きをしてなどの指導をしています。これはトイレまでの動線上に、マーキングをして足が出やすくする工夫をしている。活動性の拡大といった意味で、家族ではなかなか連れ出せない方を近くの神社まで連れ出したり、(スライド13)あるいは先ほど、タクシーの乗降の練習をされていた方ですけれども、近くの博物館に連れ出す。閉じこもりからこのような活動性の高い生活へ結びつけていきます。

 医療と介護のチームワークというところで、これだけのオーソドックスな介護保険サービスがあります。(スライド14)それに訪問型、通所型でそれぞれサービスがあります。これらのサービスがこのような在宅の支援、高齢者・障害者の家族を含めた支援体制を作っているからです。けれども、この領域の中で、やはり、かかりつけ医、ケアマネジャーと協力し、今、十分にできていないのですけれども、このような環境調整の部分にかなり密接に、その方の残存機能と道具の利用、周りの環境、それらを適正に評価し、提案していき、動く練習をしてもらうということがリハビリテーションの有効性だと考えます。

 それから、今、結構問題になっていますけれども、ショートステイで機能低下をきたしてしまうというところに、やはりもっとリハが、訪問リハではありませんけれども、リハがきちんとかかわっていくという方向性が重要になってくるだろう。通所リハビリテーションと通所介護。リハビリテーションがついているから、ちゃんとリハの個別化ができているかというと、そうでもなかったりするのですね。だから意外と、全領域でリハ活動のニーズが非常に高いのに非常に社会資源としては少ないというのが現状です。

 チームを組んで、それこそ今日のテーマである医療と介護の絆のようなものを築いていくということが、現実にはなかなかできていない。事業所が別々で、なかなかこのような形を築きえないというのも、今の大きな問題だと思います。(スライド15)

 一例として、ケアマネジャーとのチームワークをどう考えたらいいのか。(スライド16)訪問リハ側が、リハ実施計画書とか、報告書を必ず書き、伝える。それから、ケアカンファレンスで情報を発信していく。自立とQOLの向上の視点を伝えていく。残存能力をいかに生かすかという視点でプランニングを、提示していかなければいけないのだろう。できるだけ、同行訪問の機会を作って、何をやったらどう変わるのかというところを、見て分かってもらうということが非常に大事なのだと思います。リハの目的をきちんと理解してもらうのも重要です。気軽に、ケアマネジャーの事業所に寄ったりすることも重要です。

 それから、訪問介護との連携も必要です。介護との連携ということでは、「やれるADL」、つまり、ここまでできるかという(スライド17)ことを示していく。この人はどこまでできるのかということを、きちんと示していくということが大事だと思うのです。自立とQOLの向上の視点を示していく。介護計画にリハ的視点を導入していく。できれば同行訪問を行って、訪問介護の場面に一緒に入るということが一番いいのですが。地域のヘルパー研修等で、やはりリハ的視点をしっかり持っていただくということも大事かと思います。このようなところが実践としてやっていけたら非常に絆は深まるのではないかというように思います。

 現状での、訪問リハは一体どうなっているか。このグラフは横軸が年次変化で、縦軸が件数です。(スライド18)濃い青が訪問リハビリテーション。つまり、介護保険における訪問リハビリテーションになります。薄い水色が訪問看護ステーションから行く訪問看護7です。当初、圧倒的に訪問看護7が多かったのですけれども、例の50%制限がかかって、ガクッと減りました。減ったから、全部が減るかと思っていましたけれども、訪問リハの方へどんどん移行させた事業所がかなりたくさんあって、減らずに、トータルとしてどんどん増え続けて、現在に至っています。これだと、右肩上がりですごく増えたという感じがしますけれども、元々の数が少ないものですから、3倍近くになったのですけれども、まだまだ少ないですね。やはりこれの10倍ぐらいの数が必要なのではないかというように見込んでいます。

 在宅リハビリテーションの今後の展開です。一つの拠点にいろいろなサービスを構えるという形が、今後の在宅の支援のあり方になっていくのではないかと考えます。小規模、多機能、地域密着で365日サービス、今日もシンポジストの先生から言われていましたけれども、なかなかこれをやるのは大変なのですが、このような機能が求められています。(スライド19)

 これは高齢者のリハビリテーションのグランドデザインです。このような在宅リハセンターといったものが地域にきちんと存在して、かかりつけ医にリハの重要性を分かってもらうことが重要です。実際に、在宅リハセンターにリハ機能を強化させて、利用者の状況に応じて、訪問に行っていた方が大分元気になってきたので通所へつなげたり、あるいはその逆で、通所に来ているけれども、家の状況が心配だから訪問に切り替えたりというようなことがしっかりできることが必要になります。その中核に、やはり有床診療所があるべきだというように、私は感じています。

 在宅リハセンターがしっかりと位置づけられることが必要です。さらに訪問リハビリテーション研究会としては、訪問リハステーションというものを制度化していただいて、訪問リハステーションがかかりつけ医の指示に基づいて訪問を行う。このような重層的な地域的でのリハビリテーションの整備ということが、今後ますます重要になってくるのではないかというように思います。

 (スライド21)訪問リハビリテーションの課題としまして、まず、人材育成があげられます。量的に社会資源を充実させるのも大事なのですけれども、担っているスタッフをきちんと養成していくということが、非常に大きな課題です。それから、訪問リハのシステム整備。在宅のかかりつけ医、主治医による指示・報告体制。ケアマネジャーとの連携強化。通所リハ・短期入所リハと連携強化。そして、先ほど言ったように、訪問リハの提供拠点をやはり整備していって、できれば、訪問リハステーションの創設へ結びつけていく。そのようなことが大きな課題としてあります。

 そして、退院もしくは退所直後および生活機能低下時に適切かつ迅速に訪問リハを提供できるような、そのような制度設計を今後とも望んでいきたいと思います。とにかくわれわれとしては、しっかりと社会資源として訪問リハを定着化させて、在宅支援のスタッフと強い絆を作っていくということが、非常に大きな課題になってくるだろうと思います。以上で、私の報告を終わりたいと思います。どうもご清聴ありがとうございました。

 
プレゼンテーション(4) 「在宅を支える訪問看護ステーションの役割」
追風 美千代 (あい訪問看護ステーション 所長)

 皆さん、こんにちは。私は東京都の多摩市で訪問看護ステーションの所長をしております、追風と申します。私は法人内の異動で今の職場に移りまして、まだ2年ということで、訪問看護師としてはまだ駆け出し的ではないかというように思いますが、「在宅を支える訪問看護師の役割」ということで、少しお話をさせていただきたいと思います。それでは、よろしくお願いいたします。

 人前でしゃべるのが慣れないものですから、原稿を読ませていただきます。まず、私どもが拠点としております多摩市の現状について、少しお話をさせていただきたいと思います。当ステーションが拠点とする多摩市は、東京都の南西部に位置しておりまして、昭和46年に多摩ニュータウンとして開発されてまいりました。素朴な農村地帯が緑豊かな文化都市へと飛躍的に変貌してきた地域です。それから、40年を経過しようとしていますが、現在、同時期に入居してきた世代の高齢化が一気に進んでいる状況です。住宅環境の変化、家族形態の変化などによりまして、核家族化が進み、高齢化世帯・独居世帯が増え続けてます。

 現在は多摩市の人口は14万人で、世帯数は6万世帯です。多摩市で1世帯当たりの人員は昭和30年代には5.4人でしたけれども、多摩ニュータウンが開発された昭和40年代は3.2人。そして、平成20年に入りまして、2.2人と徐々に低下している現状があります。

 多摩市のサービス事業所です。居宅介護支援事業所が33件。訪問介護が28件。訪問看護が7か所です。地域包括が6か所という状況です。夜間の対応に関しましては、訪問介護の事業所が巡回型で訪問介護を実施しているところが3か所。ただ、緊急時の訪問に関しては、訪問看護ステーションが3か所ということで、現在は訪問看護ステーションの対応で行っているという状況です。

 ここで、当法人の紹介をさせていただきます。私どもが所属する法人は、高齢者の生活を支援することを目的に、あいセーフティネットという組織作りを行っています。現在は八つの事業体を立ち上げておりまして、病院、老健、居宅支援事業所、地域包括、高齢者認知症のグループホームなどがあります。そしてクリニックもございまして、外来部門、在宅部門。在宅部門のほうは在宅療養支援診療所として、24時間365日対応をしております。

 当法人は多摩市全域を病棟としてとらえて、在宅部門をナースステーションという位置づけをしています。その中で私どものステーションは、24時間365日在宅生活を支える役割を持って、平成11年6月にあい訪問看護ステーションとして設置されました。現在のスタッフは保健師も含まれておりますけれども、看護師が9名、あと、兼務ではありますけれども、リハスタッフがSTも含め9名。事務員が2名。このスタッフで現在、活動をしております。ステーションの指示書をもらう医療機関ですけれども、専門医療機関から68件です。地域の医療機関から62件。当法人内の病院、クリニックからは120件ということで、法人内からの指示が約5割を占めています。

 ステーションの利用者の年齢別です。70歳以上が半数ぐらいを占めています。ステーションの利用者の世帯数は、高齢者世帯と独居を含めますと、約半数を占めています。施設入居のかたも少数ですけれども、行っております。24時間の対応ですけれども、24時間契約をしているかたは、90名から100名ほどおります。リハビリだけのかたもいますので、そのようなかたは24時間の契約をしておりませんので、全体から見れば、40%のかたが契約をしている状況です。

 これは重症者・特別管理加算ということで、何らかの医療機器を有しているかたですね。こういったかたは同じように、約3割がこのような契約をしております。その重症者・特別管理加算の内訳、やはり圧倒的に多いのが胃ろうなのです。そのほか在宅酸素であったり、バルンカテーテル、呼吸器、気管切開、中心静脈など多岐にわたっております。

 これはここ1年間の緊急出動の内訳の数だけを出してみました。基本的には、夜間出動のみです。昼間に関しては、この数字には反映されておりません。医療機器のトラブルであったり、状態の変化だったりということもございますけれども、一番多いのは排便コントロールというようになっております。これはやはり老々世帯など介護力が少ないところで、排泄があったり、そのあと処置ができないこととか。転倒してしまって起こすことができないというような日常生活に関しての対応とかもありますので、そのような時は連絡をいただいて、対応もしているという実情がございます。

 これは、昨年1年間の看取りです。原因疾患は悪性腫瘍、難病の終末期、あとは老衰というようになっています。その他というところで、少ない件数ではありますけれども、非常に短期間でよく病名が分からないけれども亡くなるという、そのような短期間のかかわりも何件かありました。

 訪問看護ステーションの役割は何かということを考えてみますと、まず在宅生活の支援に尽きるというように思います。一つ目としましては、病院から在宅への移行準備。これは病院から在宅へ戻る際に、在宅環境の整備が必要ですけれども、その際に、入院先の病院で行われる共同指導に参加をし、在宅生活がスムーズに行われるように準備に携わっていきます。けれども実際、このような共同指導が行われるケースは少ないです。どちらかというと、帰ってきてからの依頼で環境整備が後付になってしまうというケースのほうが多いのではないかというように思います。在宅でのトラブルのサポートですね。医療機器のトラブル、状態の変化など、予期しない状況が発生した場合の相談先という役割がございます。とにかく困った時は連絡をいただくというような説明をして対応しています。

 二つ目としては健康管理、病状管理のサポート。これは前回の訪問から何か変化がなかったか。状態を把握しまして、異常の早期発見に努めるという役割がございます。そして、緊急時の対応。基本的には予測可能なことは主治医と相談しまして、事前に指示をもらって対応するということが多いのですけれども、やはり事前に伝えてもなかなか判断しにくいところもありますので、基本的には何か変化があった場合には、連絡をいただいて対応させていただいております。

 そして、医師との連携。病状の報告と、今後予測しうることの対応の相談。治療の継続と実践状況の報告、方向性の相談ということです。在宅の場合は24時間、本人またはご家族の対応になるわけですので、実際の指示の実践ができているかどうか。そのことがストレスになっていないかなど、情報を収集し、ベストな方向を探り、治療の方向性に関与していく役割があると思います。

 3つ目としては介護専門職との協働。介護専門職のかたとの連携ということで、情報の交換、対応方法の指導と統一。医療機器があるかたは一緒に介護をして、注意することなどを伝達したり、指導をしていくという役割があります。また、最近は吸引をヘルパーのかたにやっていただくというケースも出てきまして、その指導というものも行っております。まず、医師から解剖生理の講義を受けていただいて、吸引のデモンストレーションを行い、実践で指導していくという役割です。

 次に、状況に応じたサービスの提案。ADLの変化、状態の変化、介護負担の状況により、状況に合ったサービスの提案をしていきます。そして、看取りのサポートです。ご本人、ご家族が死を受け入れていく過程をサポートしていきます。告知するかしないか、最期はどこで迎えるか。在宅か病院か。治療は具体的にどの程度を望むかなど、選択していく過程、そしてそのタイミングを探りながら、自己決定のサポートをしていきます。もちろん、これらは看護師だけではなく、他職種と連携して携わっていきます。

 最近の動向ですけれども、高齢者世帯・独居世帯が増加している印象があります。われわれのステーションのかかわりの中でも約半数が高齢者もしくは独居世帯になっています。家族がいないケースなど多々ありますけれども、最近は成年後見人制度を利用しているというケースも出てきています。キーパーソンの確定、連絡ルートの確認などについて事前に新たな契約をし、かかわっていくということがあります。ただ、状況がこのようなケースの場合は、訪問して初めて状態の変化に気づくということもありまして、そうなった経緯がよく分からないという状況も多々あります。一つの例としましては、呼吸停止しているのに、経管栄養を注入していたというケースがありました。ヘルパーさんが訪問して異変に気づき、連絡をもらって訪問したところ、すでにその時は心肺停止の状態だったというケースもあります。このようなケースは極端ではありますけれども、終末期で、もう呼吸状態も落ちている状況にもかかわらず食事を与えていたり、お小水が24時間出ていなかったりというような、行って、初めてそのような状況に直面するケースも多々あります。

 そして、在宅看取りのケースの増加。畳の上で死にたい、自分の家で死にたい。家族の気配を感じながら死にたいと思うかたが多くなっているのではないでしょうか。もしくは、悪性腫瘍などの場合は、治療がないとの理由で必ずしも望んではいなくても退院になって、在宅に戻って困惑しているケースも多いように思います。特に、老衰などの場合は、徐々にADLが低下し、食べられなくなり看取りになるケースもあります。病状と、今後の経過の説明と対応。どこで死を迎えるのかの選択肢の提案、入院のタイミングなど、在宅での看取りの指導、死後の喪失感のケアなど、人間性が問われる大きな役割があるのではないかというように思います。

 3番目に、医療処置の必要なケースの増加。生命維持に必要な医療機器を自宅で使用しているケースが多くなりました。人工呼吸器であったり、輸液ポンプ、在宅酸素、吸引器など、そのような状況ではなかなか外出もできないご家族もあります。当初、医療機器操作の指導に当たりますけれども、やはり慣れてきたところで、ご家族の休息の時間の提供が必要になってきます。この際は、訪問看護で医療保険だと1時間半枠で入りますので、2枠を続けて3時間入ったりしていまして、集中的に入りケアを実践し、ご家族の外出の機会を提供しているというケースも多々あります。

 ここでちょっと、何例か簡単な症例を紹介させていただきます。これは76歳の男性、脊髄小脳変性症のかたです。胃ろうとバルンカテーテルが入っておりまして、胃ろうはバンパー型。半年に1回近隣の病院で入院をして、ショートも含めて1週間ぐらい入院をしているというケースです。このかたは逆流性食道炎のために、誤嚥性肺炎を繰り返したりしていましたけれども、固形化栄養を現在は使用しておりまして、誤嚥を起こす回数としてはかなり減ってきたかと思います。吸引が常時必要な状況でして、私どもも複数回3時間で入ったりしますけれども、ヘルパーさんにも吸引指導を行っておりまして、ヘルパーさんにも留守番をお願いして、ご家族が出掛けたりしているというケースです。基本的には、このかたは奥様と二人暮らしで、息子さんはいらっしゃらないということで、そのような介護のサービスに頼らないと、奥様の時間が取れないという状況になります。このようなサービスが入っておりまして、訪問服薬指導というのも入っています。やはり薬をなかなか取りに行けないという状況と、何かアクシデントがあって、急な薬の処方があった場合には薬剤師さんのほうから届けていただけるという多くのメリットもあるかというように思います。

 2つ目の症例です。80歳の男性で、胃がんの末期でした。告知はされていたのですけれども、近隣のクリニックに外来通院されていました。おう吐、下痢の症状が出て、そこから急に体調を崩されて、訪問診療、訪問看護に切り替わったというケースです。奥様と二人暮らしではありましたけれども、娘さんが介護に参加されまして、在宅で看取られたというケースです。言葉少ないかたでしたが、最期まで入院は嫌だということだけは明確に意思表示をされていました。その気持ちにご家族も沿いたいということで、訪問診療、訪問看護が入りまして、約2週間で在宅で看取られております。

 3例目です。このかたは84歳の男性、悪性リンパ腫で、元々大学病院に1か月に1回ほど通われていましたけれども、最期の1か月間に急に病状が悪化してしまいまして、予約日に本人が受診できず、ご家族だけが受診をして、紹介状を持ってケアマネさん経由で訪問診療、訪問介護が導入になったケースです。訪問診療が入った時点ではすでに終末期でして、訪問診療が入り、訪問看護が入り、その翌日に在宅で亡くなられたという経緯です。この際に、ご家族がそんなに早々に亡くなるという意識はなく、覚悟もできていたわけではないのですけれども、このかたの場合は3世代同居で、近隣にほかの息子さん、娘さんも住んでいらっしゃいまして、非常に家族関係が良好でした。そのように短期であれば自宅で見ていきたいということで、24時間ご家族で付き添われて、非常に短期間で看取られたケースです。

 4例目といたしましては、ご夫婦共に認知症の方です。88歳、84歳のご夫婦で、奥様はかなり重度の認知症ではありました。コミュニケーションは取れたのですけれども、ご主人様が非常に頑固で、なかなかバイタル測定さえもできない、拒否されるかたで、やはり徐々に熱が出たり、ご自宅で転倒されていたりということで、そのようなアクシデントを起こすたびに、徐々にADLが落ちてきた方です。このご夫婦はご家族が週に2、3回しかいられないということで、ヘルパーさんが1日に3回入っていました。後半には巡回型のヘルパーも夜間に1度2度と入るような状況になってきています。このケースは、もしそのようなアクシデントがあった時に、どのように対応していこうかという話し合いがなされまして、やはりご家族の意向で、最期までご自宅で見ていきたいということで、ケアマネジャーさん、ヘルパーさんを家族の代理として、そのかたの判断で訪問看護、訪問診療に依頼してほしいという依頼がありまして、新たに契約書を交わして、現在、そのようなサービスで対応しているケースです。

 5例目です。このかたは69歳の女性です。脊椎腫瘍のため対麻痺であり、下半身麻痺です。バルンカテーテルで管理しておりまして、独居ですので、お通じを週3回訪問でかん腸して調整しているといます。独居で、認知症は全くありません。昨年、ご主人を亡くされて、現在はすべて自己判断で自己管理をしているというケースで、大きな問題はなく経過しているケースです。

 幾つか症例をお伝えしました。このような中から問題点と今後の課題というのを幾つか探ってみました。一つめとしては、在宅医療体制の充実。訪問診療を実施する医療機関は徐々に増えてきていますが、まだまだ十分とはいえない状況だと思います。特に、専門医による往診は少なく、皮膚科であったり、精神科であったり、整形科であったりということがなかなか外来受診ができないという状況もありまして、そのようなところを往診というかかわりができればいいのではないかというように思います。

 2つ目は在宅療養支援診療所の増加。基本的に在宅で療養されているケースは、できる限り家にいることを望んでいるかたが多いです。病状の変化があった場合には、タイムリーに医師に相談でき、診療を依頼できることが望まれます。

 3つ目は退院調整看護師の制度化。これは最近、病院によっては、そのような役割のかたも出てきてはいるのですけれども、共同指導が行われるケースも少ないということです。行われたにしても、そのカンファレンスの翌日に退院であったり、なかなか在宅での必要な教育がほとんど行えないまま、在宅に戻るというケースがあります。病院のスタッフも外に出て、環境整備も含めて教育することにより、在宅への移行はスムーズにいくのではないかと考えます。

 4つ目は在宅療養にかかわるスタッフのスキルアップ。これは介護のかたですけれども、やはり病棟と異なり、在宅では実践をする場面が少ないです。最近、医療機器を装着しているかたが多く在宅に戻っておりますので、技術を習得し、実践がスムーズにできるように、実践的な教育ができる場面があったらいいなというように思います。そして、チームケアの連携。さまざまなサービスが導入され、かかわっていきますけれども、その連携システムの構築が望まれます。それから、24時間対応システムの構築です。プランにのっとって、24時間動いていけるシステム、緊急時の対応システムの構築が望まれます。

 最後になりますけれども、今回、訪問看護師として、在宅の支援について考える機会をいただきました。われわれ看護師は医療的な知識を持ち、介護の場面に生かしていくことができる職種であり、連携チームの主軸となる役割があることを自覚いたしました。実践を通して、他職種との連携、新たなサービスの提案など、看護職として、広範囲の役割が期待されていると思います。医療と介護のネットワークのチームケアを構築していくことが、われわれの役割であると実感しました。日々生活している時に気づかないことではありますけれども、病気や障害、老化と共に生活していく、援助が必要な状況になった時に、改めて住み慣れたわが家で暮らしたいと感じる時があります。そのような時に、生活を支える役割を果たしていきたいというように思います。

 最後までご清聴いただきまして、ありがとうございました。

 
シンポジウム 「医療と介護の「絆」を考えるII」
座長:齊藤正身(霞ヶ関南病院理事長)
シンポジスト:プレゼンテーション講師4名
齊藤

 それでは、シンポジウムを始めたいと思います。今4名のかたのお話をお伺いさせていただいて、熱い坂梨先生の話といいますか、おれが頑張っているのだというところもあって、このような先生がそばにいたらいいなと思いますが、きっと一緒に仕事すると大変だろうなとも思いました。冗談でございます。私は坂梨先生とは、もう20年来の友人です。

 それから、曽根さんの話は恐らく「老人の専門医療を考える会」で、福祉を中心にしたお話は初めてだったかもしれません。実は東松山というのは、私が住んでいる川越のすぐ隣で、このような素晴らしいことをやっているのを知ったのは去年でございまして、それまで全然知らなかったのです。兵庫県に兵庫県立リハビリテーションセンターの沢村誠志先生という先生がいらっしゃいます。この先生はベトちゃん、ドクちゃんの補装具の先生でして、私の恩師なのですが、「おまえのところのすぐ隣町にすごいことをやっているところがあるぞ。全部窓口が1本なんだってさ。おまえ、間に入って、ちょっとアポイント取れ」と言われて、行かせていただいたのです。行ってもう驚きで、まさにこの会場ぐらいのフロアでしょうか、全く何の壁もないところに、事務スペースでしたが、そこにすべての障害にかかわるスタッフがいて、交代交代で、皆で24時間体制でやっている姿を見て感激しました。ぜひ、このような機会があったら、お話をしてほしい。「老人の専門医療を考える会」というのは病院から始まっていますので、どうしても、目線がそちらからばかり見て、病院が表側のような感じになりがちですが、そのような中でやはり在宅といいますか、地域といいますか、そちら側から見た病院でありたいなというように思いたいということもあって、あえて今回シンポジストをお願いしました。ご本人は場違いではないかと言われていましたけれども、とんでもございません。本当にいいお話をしてくださったと思います。

 そのあと、訪問リハの伊藤さんは本当に日本の訪問リハの中枢といいますか、元祖といいますか、その中心でやっていて、訪問リハビリテーションステーションを作るという夢を持ちずっとやっていらっしゃっていました。恐らく介護の職員と一緒に働いていらっしゃる医療職かもしれません。

 続いての追風さん。いい名前ですね、追風さん。追風さんは、恐らく介護のスタッフと一緒に働いているということもあって、その絆をいつも感じていらっしゃるだろうということがあって、お話をお聞きしました。大変ありがとうございました。

 これで締めくくって終わりにするわけにはいかないので、お話を進めていきたいと思いますが、どうなのでしょうか。医療と介護の絆を考えるにあたって、具体的に例えば、曽根さんはちょっと立場が違うかもしれませんが、介護の専門職といいますか、そのようなかたがたとのつきあい方といいますか、どのようにお考えになっているのかということや、具体的に連携をしているようなことがあれば、一言ずつまずお話をお伺いしたいと思うのですが、坂梨さんからお願いできますか。

坂梨

 介護のかたとのお付き合いというのは、訪問した時に何をしているかとお互いに話し合うのが一番の付き合い方ですね。それが一番多いです。後はケアカンファレンスを開く時ですね。ケアカンファレンスをやる時に、私は忙しいからできれば当院の診療所でとか、あるいは、訪問診察をした時にお願いしますということが多々あるのですけれども、そのような場所でよくお会いして、ヘルパーさんたちとお話しします。

 当院の診療所自体にも、ヘルパーさんが5名勤務していまして、有床診療所といいましても、やはりそのぐらいのケアがなければなかなかいけませんので、診療所の中では、ヘルパーさんともちろんお話をしたりします。そのようなつきあいですね。

齊藤

 いい話ばかりではなくて、何か困っていることなどいかがでしょうか。

坂梨

 1回ありましたね。小脳脊髄変性症で、24時間在宅の看護をしなければいけないかただったのですけれども、ケアマネジャーさんがそのヘルパーさんの施設に属していると言う事情もあるのでしょうか、緊急訪問看護を全く入れてくれない。ヘルパーさんの事情ばかりでいっぱいになって。それも家族には必要なものだから、取り合いになったりしましたね。

 やはり今の介護保険上では、上限価格もあったりして、なかなか十分なサービスを入れられないこともあります。ですから、緊急訪問看護、あるいは訪問看護、先ほどの訪問リハビリとか、そのようなものはなかなか入らないことがあって、実際には生活維持に必要なヘルパーさんとの取り合いや、家族負担の軽減に必要なデイと言ったサービスとの取り合いになることもあります。在宅は家族には多くの負担がかかります。せめて上限価額を施設並みにして頂かなければと思います。

齊藤

 曽根さんから何かありますか。

曽根

 私は福祉介護の側なので、介護職との付き合い方というのは自分自身になります。

齊藤

 では、医療職との付き合い方でも、すぐ隣にある病院とは付き合いにくいとかですね、このようなことを気にしているということが何かあればぜひ。

曽根

 坂梨先生のようなかたがいたら、本当に安心だろうなというように思いながらお聞きしていたのです。ただもう本当に、やはりお医者さんはまずは根性なのだなということを感じました、やはり根性がないとできないなと。

 私は障害者福祉の仕事がずっと長かったのですけれども、障害のあるかた、特に知的障害のあるかたとかそのようなかたや、ご家族のかたたちが感じていらっしゃることというのは、なかなかやはりドクターがそのような障害のあるかたたちと付き合った経験が少ないと、見てもらえないというのですか。どうしても、病院の中で騒いでしまったりとか、あるいはおとなしく診察を受けられなかったりというようなことがあると、ちょっと受け入れが難しいというようなことがあります。そうすると、障害のある子を見てくれる先生のところに集中してしまうという傾向がでてきます。それも少し慣れてくると、そのような障害のある人たちも、先生のことがよく分かって、おとなしくしていることができたり、あるいはいろいろな検査の器具などを初めて見ると怖かったりとか、慣れなかったりするのですけれども、先生の中には事前に検査の道具をおもちゃのように貸し出してくれて、そのようなものに慣れてから検査をしましょうと言ってくださるような先生もいらっしゃって、そのようなことを開業医の先生たちとできるといいなということは、感じることがあります。

齊藤

 りがとうございました。伊藤さんはいかがですか。

伊藤

 ヘルパーさんのことでいいですか。やはりヘルパーさんというのは、利用者さんの生活を面で支えるサービスですので、非常に大事なサービスだと思うのです。訪問リハとかは点でかかわりを持つ。ですから、私の話の中でも触れましたけれども、生活の自立度を上げたり、QOLを高めるという視点を持っていただくと、非常に優秀なヘルパーさんが誕生するのではないかと思います。

 これはマイナス面なのですけれども、やはりどうしてもそれなりの状況をうまくお手伝いするというところでとどめてしまっているところがあるのですね。かつて、10年ぐらい前、2級ヘルパーさんの養成の研修に立ち会ったことがあって、「寝たきりの人は寝たきりのまま、いかに迅速にお世話するか。」これが達人であるようなことをいわれた時代がありました。寝たきりだったら起こしたらいいではないかという、そのような発想をもっと持っていただけたらなと思います。ただ、知識、技術がないですから怖いのだと思います。ということは、やはり一緒に、同じ事業体の中で、訪問リハがあって、訪問看護があって、訪問介護があって、医師も診療所も24時間体制でという、そのようなセンターが必要だと思います。そのようなことがこれからますます重要になってくるし、各専門職がお互いに伸びていけるような仕組みになるのではないかというように思っています。

齊藤

 追風さんいかがですか。一番ヘルパーさんとおつきあいがあると思いますので。

追風

 お話の中でも少し出させていただきましたけれども、やはり最近の動向としまして、高齢者の世帯であったり、高齢者、もしくは独居のところにヘルパーさんが入っていくというケースが非常に多くなっているのです。

 その中でやはり介護をやるということにプラスして、ある程度の知識と観察力というのがすごく望まれてきていると思うのです。

 ヘルパーさんがどのように対応したらいいかという場面が多々あり、そうしたときに、やはり一番の相談先としては、訪問看護に相談が来ることがあるので、やはりそのようなことの連携も必要だと思います。医療処置が多いかたのところに一緒に入って、気をつけなければいけないところを一緒にやりながら注意点を伝えていくという場面が、結構多くなってきています。

 最近、吸引とかもそうですけれども、そういった医療処置をいろいろな職種に委譲していこうという動きがありますので、そのようなことの心構えも現状では必要になってくるのではないかなと思っています。以上です。

齊藤

 その介護職が医療処置をというお話、ちょうどタイムリーだと思うのですが、そのような動きがどんどん今出てきています。このことをどのようにお考えでしょう、皆さん。本当にそれでいいのかなと思うときも、私自身はちょっとあってですね、介護職がそのようなことができるようになってくるというのはいいことだけれども、本来の専門職が専門職の役割というのをちゃんとやっているかどうかというのも気になるところなのですね。

 例えば、訪問看護ステーション。追風さんのところは違うかもしれませんが、訪問看護ステーションといっても、在宅へ行ってやっているのは実は介護しかやっていなかったりなどというのも結構あったりですね。うちの訪問看護ステーションのことを言っているわけではないですけれども、そのような整理は本当にいいのかなと思うときもあるのですが、坂梨さん、どうですか。

坂梨

 先生のおっしゃるとおりですね。実際、私のところでは、ヘルパーさんが吸引するようなケースは全くないですね。うちの看護師がやるか、訪問看護ステーションがやるか、家族がやるかですね。ALSの患者さんの場合は、ほとんど家族だけですね、やっているのは。実際、保健所などで講習会が開かれるのですけれども、応募するヘルパーさんが少ないと聞きます。そして、研修期間が長いため、なかなかできないですね。実際には難しい面があります。

 私自身としては、余力があるのならやはり看護師さんがやるべき仕事ではないかと思っています。でも、やはり家庭によっては、ALSの患者さんなどにずっとつきっきりで、痰の吸引をやっていますね。それを休ませてあげるのにはどうすればいいのかと考えるときに、やはり個別にはしっかりと勉強してもらう人を作っていかなければいけないのではないかと思っております。

齊藤

 時々、その訪問看護師さんが入浴介助を行う、そこの地域は訪問看護が入浴をするのだというように決まっているのかどうか分かりませんが、それは本当に訪問看護師の仕事かなと思ったりすることもないわけではなくて、何か少し気になるところではあるのですね。これは私が体験したことですが、オーストラリアの訪問看護師さんに、1日だったか、半日だったか、くっつき回って歩いたことがあったのですけれども、本当に看護しかしませんね。介護は介護で、別にちゃんと入ってくる。あまりにドライで驚くようなところもありました。苦しそうなのに、「うん、それは次の人が見るわ」とか言っていました。それにしても、役割がボーダレスになるのは、利用者にとってはいいのかもしれないけれども、マスコミとかでは人材不足とかすぐ出てきますね。でも、もうちょっと何か考えていくといいのかなと思うときもあるのですけれども、曽根さんの立場ではどうですか。

曽根

 私たちのところは、痰吸引とかをヘルパーがやっているという事例もあります。特に重症身体障害者のかたなどですと、そのようなことがないと、そこでずっと家族が離れられない状態になってします。では、医療職が付き添っていられるかというとそのようなことも難しいということがあって、いわゆる痰吸引ガイドラインに沿った形で行ってきました。自分自身もやったことがあります。

 ただ、やはりそのときにちゃんと定期的に、医療職の人にチェックをしてもらうとか、あるいは手技を事前にしっかり教わるとか、家族との同意書をきちんと交わしておくとか。そのようなルールを守りながらやるということがすごく大事なことだと思います。逆に、開業医の先生で、むしろそのようなことを積極的にヘルパーに教えて、在宅生活を支えようと考えている先生も地域にはいらっしゃるのですね。やっている側はどうしても専門の教育を受けていませんので、非常に不安を持ちながらやっていますから、そこに専門職の人がきちんとかんでくださって、みんなが安心して生活できるような体制が整うといいなというようには、思ってきました。

齊藤

 そうですね。そのような見方も確かにありますね。

 同じ医療でも、リハビリという立場でいうと、介護の方々にリハビリの訓練まではいかなくてもという発想もありますね。

伊藤

 そうですね。ただ、かつてエピソードとしてあったのは、セラピスト側があまりにも自分たちの領域を守りたいという意識があって、ヘルパーさんがROM(関節可動域)訓練をやろうとしたところ、リハのスタッフが、「そんなことは専門家がやることだからやってはいけない!」というように激怒したという、そのような話を聞いたりすると、ちょっと情けなくなります。

 もう一つ、やはり訪問リハビリテーションというのは、まだまだ何をやってくれる専門職なのかというところが確立がなされていないのですね。自分たちの技術とか領域をしっかり打ち立てていない分野なのですね。だから、やはりしっかりと、訪問リハビリテーション標準手法というものを築いていかないとだめだということで、研修会を全国各地で月に1回とか2回のペースでやっている真っ最中で、まだまだ途上なのですね。

 ですから、われわれ自身がもっときちんとした在宅でのリハビリテーションのノウハウというものを創り出していかなければいけないというように感じています。

齊藤

 そうですね。訪問リハビリテーションの業務、こんなにあるのですね。ほとんどの人がイコール訓練だというように思っているのでしょうが、この中で一番大事なことというのは難しいかもしれませんが、何をどのように思われていますか、伊藤さんは。

伊藤

 一番難しいのは、一番最後のスタッフ間の連携ところだと思います。

齊藤

 在宅支援スタッフとの協議と連携が難しい。

伊藤

 そうです。訪問リハをやっている事業所にあるアンケート調査をしたら、「ケアカンファレンスに出ていますか」という設問で、ほとんど出席できていないのです。極めて少ないのですね。ケアカンファレンスに出るよりも、訪問に行ったほうがいいような選択ですね。だから、そのような体質を変えていかないと、本当に今後、孤立してしまいますね。だから、それはものすごく懸念しています。

齊藤

 訪問看護はまさに、ヘルパーさんとそのような協働しなくてはいけないところだろうと思いますけれども、どのようにすればよいと思われますか。

追風

 先ほどの吸引のこともそうですし、入院介助という話も出ました。私どものステーションは基本的には何でもやっているのですけれども、確かに、この分野はヘルパーさんのほうに移行したほうがいいだろうというケースもあります。導入のときに訪問看護が入って、そこでいろいろ評価をして、自分たちの業務に少しラインを引いて、ヘルパーさんのほうに移行していったりという、そのような役割分担というのをもう少し積極的にやっていかなくてはいけないのではないかなというようには思います。そうしないと、やはりわれわれステーションはパンクしてしまうといいますか、オーバー業務になってしまって、なかなか新規の利用者を受け入れられない。本来、必要なケースに行けないという状況にもなりつつあるので、やはりそのような意味では、仕事を少し分担していくということも必要ではないかと思います。

 吸引に関して、あくまでもヘルパーさんに吸引を依頼するというのは、ご家族と依頼されるヘルパーさんとの個人契約で、教育というのもある程度ルールができていて、医師から解剖生理について学ぶ。そして実践は、基本的に5回以上というようになっているのですけれども、もし不安があるようであれば、何度も繰り返してやっていただいて、最終的には、医師の指示で許可をもらうというルートなのです。ですから実際に指導を受けて、実践するまでには月単位の期間がかかっています。

齊藤

 ありがとうございます。日本慢性期医療協会では、医療介護福祉士の養成をしているので、この辺にしておきますが、きっと一番困っているところはそういうことなのだろうと思います。ただ、制度というのはあまり付け焼き刃でやってうまくいったためしがないので、やはりじっくりみんなで、それこそ相談しながらやっていかないといけないことだろうなと思うところであります。

 さて、この辺でちょっと皆さんがたから、今いらっしゃるシンポジストのかたがたに何かご質問とか、ご意見でも結構ですが、あればどうぞ。ご感想でもいいですし、お聞きしたいというように思います。挙手でお知らせ下さい。いらっしゃいますか、どなたか。はい、どうぞ。

質問者A

 埼玉県の小川町から参りました、Aと申します。地域福祉を勉強して、今、私自身は民生委員をしたり、地域の町作りのボランティアをしております。この会場で話を聞いておりまして、何か夢を見ているような思いがいたしました。といいますのは、私は地域福祉の集まりにはいろいろと出るのですけれども、介護職のかた、ケアマネジャーのかた、社協職員のかた、あるいはNPOやボランティアのかたが集まっていらっしゃる席に、お医者さんというかたがいらしたことが一度もないのですね。お見かけしたことがないのです。

 追風さんのお話を聞いておりましたら、地域介護といいますか、地域医療の中心は看護婦さんであるというような、そのようなことをお話になられたので、私としては確かに、だれがお年寄りの地域医療の責任者なのだろうかというように考えながら聞いておりました。そして、よくケアマネジャーさんがおっしゃる話は、ケアマネジャーとしてリハビリテーションあるいは看護、ましてや医療に関して、こちらからどうしてくださいということは言えないのです。そのような話は、私たちにははっきりと分からないのです。一番力を持っているのは医師なのかなというように思うのですね。

 けれども、医師が責任主体であるという話が出たことがないので、先ほど、坂梨先生のように、一生懸命情熱的に地域医療を担うぞという立場、あるいは、司会の齊藤先生のように、何とか介護職と連携しようという立場のかたがいらっしゃる。それは本当に夢を見るような思いという感じがしました。医師の方達が、どのように介護職に、地域医療に向かっていらっしゃるのかを伺えればと思うのですけれども、感想でしたけれども、お願いいたします。

齊藤

 どうぞ。

坂梨

 なかなか難しい話ですね。実際、私はこのような発言をしました。私自身は、先ほどもお話ししましたけれども、自分の見ている患者さんの医療代理人という気持ちでおります。ですから、そのかたが亡くなるまでの間、私が先に死ぬかもしれませんけれども、少なくとも私が生きている限りは、私の目の黒いうちは、私の患者さんは私がちゃんと責任を持とうと思っております。そのように考えるお医者さんというのは、たくさんいるのだろうと思うけれども、あまり表には出されていないですね。どうなのでしょう、それが医師の役目ではないかと思っています。少なくとも、医療代理人としてやはりやるべきだと思っております。

 ですから、この地域のケアシステムの中でも、ケアカンファレンスに参加する。ケアマネジャーが独自の判断をすることもありますね。医療的なことを知らないということもあるのでしょうけれども、何と言うかな、例えばケアマネジャーが担当患者の足が痛いからと、私に相談せずに、別の先生のところにお願いしたりすることもあるのですね。私自身はそのようなことではいけないと思っています。だから、全部知っておかなければいけないというように、私自身は思っております。それが私自身の生きがいですね。だから、もしかしたら、なかなか一般化できないかもしれませんね。

齊藤

 できないですよ。できない。

坂梨

 基本的には、そこまでいかなくても、地域にはいろいろな機能があると思いますね。だから、地域がベッドであるという考え方をして、やはりいろいろな機能をうまく利用できるように、われわれ医者はしていかないといけないのではないかと思っております。それはできるのではないかと思うのです、在宅療養支援診療所を作っていったわけですから、国も。在宅療養支援診療所を応援していく中で、在宅療養支援診療所とはこうあるべきものだという、そのような会もできています。在宅療養支援診療所の協議会もできていますから、その中で、そのような話を進めていけるのではないかと思います。先ほど紹介しましたNPO在宅ケアを支える診療所・市民全国ネットワーク。そのようなところでも、参画しているお医者さんたちは、やれるところまでやってみようではないかと思われる方が多いですから、少しずつ違ってくるのではないかと思います。

 問題は、連携の場合、先ほど追風さんが言ってらっしゃいましたけれども、単純に平行関係の協力関係ではいけないと思うのです。私は自分が医療代理人として思ったけれども、先ほど追風さんのお話を聞いていると、自分は医療か看護か分かりませんけれども、代理人だとして活動しているから、みんながそのような気持ちを持つ必要が、私はあるのではないかと思います。私だけではなく、みんながそれぞれの職種の人たちがと思っております。難しいかもしれませんね。

齊藤

 伊藤さんの発表のスライドに、在宅リハビリテーションセンター構想と書いてあるのですが、これは何人かの先生がたでディスカッションを重ねながら、在宅療養支援診療所ができたあとに、あれは24時間体制の在宅療養支援診療所というのはそのような体制ですが、やはり坂梨先生のような先生ばかりだったらそれはいいですが、やはり24時間拘束され365日というのは、なかなか厳しいところもあると思います。

 そのような中で、在宅リハセンター構想のスライドで、在宅リハセンターの中に、診療所、病院等と書いてありますが、実は提案している一つは、リハビリテーション版の在宅療養支援診療所があってもいいのではないか。24時間体制ばかりが在宅療養支援ではないのではないか。リハビリテーションということを前面に押し出して、そのかわり、主治医としっかり連携を執りながらやっていくという、医師が二人入る体制というのもありなのではないかというようなことも、実は、提案の一つにはあるのです。

 やはり地域によっても違うでしょうし、考え方も、医師もそれぞれ違うでしょうし、すべてが坂梨先生のようにやれないかもしれないですが、少し協働でそのようなことをやっていったりする方法もありではないか。なおかつ、これは私の個人的な意見ですが、医師というのがはいることが大事なので、何かをしなければいけないわけではないと、ずっといつも思っていて、安心料といいますか、何かあればお医者さんがいるというのが一番よくて、お医者さんがあまり活躍しているというのは大変なのですね、具合も悪いし。だから、なるべく医師は、「ああ、あの最期の看取り以外は全く用事がなかった」というのが、一番で、でも近くにはお医者さんが、必ずいるというのが理想だと、私はいつも思っているのです、なかなかそうはいきませんけれども。

 だからこそ、いろいろな人たちで連携をとりながらといいますか、連携という言葉がそんなに簡単ではないということを分かったうえでですが、やはり大事なのかなというように思います。

坂梨

 言い足りないことがあったのです。私自身がこのような体制になったのは、私の地域があまりにも人口が少なくて、あまりにもサービスが少ないことが非常に大きな原因なのですよ。ですから多分、ここにいらっしゃるかたたちの地域は、いろいろな施設があって、いろいろな機能があると思うのですね。ですから、それを齊藤先生がおっしゃったように、いろいろ利用して、リハセンターでもいろいろな形で利用できる地域に、皆さんがたは住んでいらっしゃるのだと思うのです。

 私の地域は、あまりにも少ないのです。在宅療養支援診療所は四つしかないのですし、訪問看護ステーションも一つしかないのです。私はそのような地域だからこそ、こうせざるをえなかったということなのです。

齊藤

 ありがとうございます。ちょうどリハビリの話も出てきましたが、伊藤さん、これは私の個人的な意見なのですが、ずっといわゆる老人病院の院長をやりながら、今はどちらかというとリハビリ中心の病院になったり、在宅のサービスをやったりしている中で、リハビリの専門職の役割は何なのだろうなといつも思うときがあって、役割といいますか、いつも頭に置いておかなければいけないことというのがあります。それは老人病院の院長をやっていたから、特にそのように思うのかもしれないのですが、介護や看護が負担になっていることを、どのように軽減するかというかかわり方が、リハの大事なポイントかなと、いつも思っています。

 それがうまく解決していくと、在宅に帰れる。帰ってから負担軽減を考えるのではなくて、在宅に帰っての家族の介護や、介護の負担の軽減を考えておくことが、今、病院でスタッフが取り組んでいます。では、そこをこのように工夫してみたらどうだ。あるいは、訓練といっていいかどうか分からないけれどもそうしたり、アプローチしていくことで、介護の負担が軽減していった。その姿を見て、在宅と照らし合わせ、こうなればおうちでも見られるようになるのではないかというような役割というのは、リハビリにあるように思うのですが、どうでしょうか。

伊藤

 そのとおりだと思います。やはり病院で、特に、回復期のリハビリの病院で訓練を専門職がやりますけれども、急性発症した脳卒中とかの病気というのは、発症早期から、どんどん自然回復していくのですね。それをセラピストは自分らが治していると勘違いしている部分がある。だから、そのような自然回復プラスセラピストのかかわりで上がっていった機能を、いかに病棟の患者さんの生活に生かしていくかというところは、セラピストは病棟へ出ていかないと分からないし、そこで看護・介護のメンバーと一緒になって生活場面を見ていかないと分からないですね。

 そのような働きかけ、観点が持てないと、在宅は見られないですね。在宅を見るのであれば、そのような機能回復だけで、訓練室だけしか見ていないという発想法では、在宅に出ていったら全く、何をやっていいのか分からないということになってしまいます。病院でも仮の生活があるわけですから、そこの仮の生活に、自分たちが引き出した機能が生かされたという視点を持ちながら、その延長線上に在宅の生活があるのだという発想法を、しっかり持つべきだというように思います。

齊藤

 何か無理やり言わせたようですみませんでした。いつもそのように思っていて、今日のスライドでも、介護に対しては必ず、助言・指導・アドバイスという言葉が出てきたりするのですね。でも、ほかのことにはサポートと出てくるのに、介護に対しては、なぜ助言とかアドバイスとなるのかなと、いつも気になっていて。

 何か医療というのは、Aさんのご質問の答えになっているかどうか分かりませんが、本来はサポートに回るといいますか、生活が中心で、本当は医療というのはそれの後方支援なのに、医療が中心になって、そこについでに生活がついているというのは違うかなという、でもそう思っていらっしゃる先生がたはすごく増えてきているので、そんなにミゼラブルにならないで、小川町にもきっといい先生がいるのではないかと思いますので、私も知り合いがいるかもしれませんから、遠くはありませんから、またそのようにしていけたらなと思います。

 そのように言えるのは、実は、認知症サポート医というのがありますね。認知症サポート医というのが、今、各都道府県で養成が始まっています。これは埼玉県ですけれども、かなりの数のサポート医が年間4人ずつぐらいですから、もう20人ぐらいになったのでしょうか。私も1期生で、その研修を受けました。その人たちが、この間久しぶりに集まって、私たちは今まで何をしてきたかねという話になって、サポート医というのはだれをサポートするのだというような話になって、もう1回考えていこう。私らはまず、医師をサポートする。主治医をサポートする。それから、地域包括支援センターをサポートする。ケアマネジャーをサポートする。いろいろ話が出たのですが、やはり地域全体をサポートするという意識で、啓もう活動をやっていかなければいけないのではないか。今、医師会の中などでも、そのような話は出始めているのですね。

 ですから決して、まだ捨てたものではないのではないかと思いますので、ぜひ、そのような意識でいてください。あのようなことを言ったけれども、そうならなかったではないかとならないように頑張りますので、お願いします。

 どなたか、ご質問があればどうぞ。では、後ろのかた。

質問者B

 現在、アビリティーズ・ケアネット株式会社で、全体では13か所のデイサービスと、有料老人ホームと、私が今いるところは、医療保険・介護保険外のリハビリテーションを3年前から府中でやっている、保健師・看護師のBと申します。今日のお話を非常に興味深く聞いておりまして、先ほどのAさんのこともそうですけれども、リハビリテーションの機能と、この1年ぐらいPT、OTの方と一生懸命チームを組もうとしてやってきておりまして、なかなか難しいなということです。私自身が30年前から保健師として、難病や認知症のかたの訪問をしたくて仕事をしてきたものですから、今現在は、その総集編として全体をどのようにしていったらいいかなということをやっているところです。

 そこで、確認しておきたいなと思うのは、やはり看護やリハやドクターは、食べること、最後まで口から食べられること。それから、できるだけ最後までトイレに行けること。できるだけ安心して眠れること。そのような身体機能の健康を維持できるところをサポートする。そして、介護のかたは買い物に一緒に行くとか。おいしいものを一緒に作るとか。行きたいところに旅行に行けるとか。気持ちのいいおふとんで寝られるとか。気持ちのいいお部屋で過ごせるとか。そのような生活の本当の環境を整える。そのような役割が、この40年近くなかなか明確になっていないということを強く感じて、いつまでたったら、これがうまくいくのかなというのが、実際、60を前にした私の思いです。

 医療的なケアについては、やはりデンマーク、スウェーデンでは、20年前から介護職も教育期間が1年以上あるわけですね。そのような教育研修の背景を全面的に強化していくことが、介護職が自信を持って仕事をすることにつながるというように思います。できればお願いしたいことは、齊藤先生に、リハビリテーション病院を経てきたかたが2年間で127名、有料リハビリで1週間とか1か月とか10日とかうちのほうを利用されているのですけれども、尿器を使えるかたがトイレに行こうとするものですから、夜、ご自分でトイレに行けない、尿器も使えない、そのような状況のかたが大勢いらっしゃるのですね。できれば、夜は尿器でトイレができるように、そのような形でリハビリテーションの目標を、歩くことではなくて、自分のことは自分でできるようになるというところに絞ってやっていただけたらなというように思います。よろしくお願いします。

齊藤

 やっていますよ。

質問者B

 現実は、やはり歩こうとするものですから、夜間、尿器を使ったほうがよほど楽なのに、ベッドから転落して救急車を呼ぶというようなことも現実は多々あるのが、訪問看護ステーションを私はやっていましたけれども、2年前まで、そのような状況もみていました。齊藤先生がそうだということではなくて、全体のリハビリテーションの方向を考えていきたいということです。

齊藤

 今、伊藤さん、どうですかね。教育としては、そのような教育になっていますね。前はとにかくトイレに行け、行けだったのが、やはり一人暮らしのかたが大分増えてきていますから、そのような人たちの生活に合わせた、だから以前は病棟の中に、例えば、ポータブルトイレが置いてあると、「何だ、ポータブルは」と怒る時代が確かにありましたね、トイレまで行かなければいけないと。今はでも、その人が帰ったときに、トイレはとてもその人に合わせて改造できない。和式のトイレで改造できないというケースなどは、病院の中で、ポータブルトイレで練習してというようなことを、尿器とか。それは随分、変わってきたように思うのだけれども、どうでしょう。

伊藤

 ええ、そのとおりだと思います。やはり在宅の生活を想定して、退院間近になると、そのような尿器を使用したり、ポータブルトイレを導入したりということは、ケース・バイ・ケースですが、やっていくという方向にはなっていると思います。

齊藤

 そうですね。私はリハビリのそれほどすごい専門家でも何でもないので、偉そうなことは言えませんが、以前より重い方が在宅に帰るケースが随分増えてきていますね。ですからそのような意味では、何でも自立してという、ADLが自立して帰るというイメージよりは、重さと意欲は違うのですね。分かりますか。

 うちにバイタリティ・インデックスというのがあるのです。意欲の評価、5項目ぐらいで簡単な評価です。その評価をうちに入院なさっている患者さんや在宅で見ている人に全員一斉に取ったのですね。すごい数でしたが、それを見た統計の結果は、介護度が重いから、あるいは重症だからといって、その人は意欲がないとは限らない。重くても意欲のある人は幾らでもいる。軽いけれども意欲のない、やる気のない人もいっぱいいる。

 これは実は全然違っていたりするのです。ですから、そのようなことを考えていくと、やはり重くて帰っても、その人が決して意欲がないわけではないので、それで、自分でトイレに行こうとする。行きたいという意思は尊重しなければいけないと思うし、でも、夜間だけはというところを納得してもらわなければいけないようなこともある。それはきっと医師がただ説明すれば済むことではなくて、家族も含めて本人も、それからかかわる人たちで、それこそ、そのようなことを担当者会議等で話し合うと、本当はいいのかなと思います。担当者会議の中で話し合われる内容というのを、私はあるときにざっと見せていただいたのですが、とてもそのようなことを集まって話さなくても、決まっていることではというのがほとんどで、実は、そのような細かいところを話し合っていけばいいのになと思うことがよくあります。いろいろなところでそのような話をするようにしますので、それで許してください。

 はい、ほかにどうでしょう。もう一方ぐらい、どなたかありませんか。はい、どうぞ。

質問者C

 医療代理人と成年後見人について質問です。特に、坂梨先生にですね。

 医療代理人ということを言われましたですね。ということは、例えば先生のところから、専門の医療機関に患者さんを送ったりした場合、医療同意などについて、先生が同意人になられるというようなこともされるのでしょうか。少なくとも、専門職の後見人の場合、医療同意、それから入院のときの保証人ですね。そのようなものが期待されるというので、非常に困惑しているケースが多いわけですね。という意味で、医療代理人としていかがですか。

坂梨

 まさに医療代理人でして、そのような意味では後見人ではないですね。ですから、高機能病院に送るときには、やはり親族を捜したり、だれか後見のあるかたを捜しますね。私自身はそこまで後見できないですね。よろしいですか。

質問者C

 医療同意のときは後見人の同意ということですか。

坂梨

 ええ。医療同意については、本人の同意が得られない場合は何とか家族を捜します。それで同意が得られない、だれも分からないときは、自分の良心に従って治療するしかないと思っています、それについては。

齊藤

 よろしいですか。さて、それではシンポジストの皆さん、言い足りないこともおありでしょうから、では、追風さんから順番に、何かございますか。私はこんなに頑張っているのだという話でも結構ですし、医療と介護の絆にこだわらなくても結構ですので、あれだけは言っておけばよかったなと、今晩眠れないと困るので、ぜひ、何か一言。

追風

 私はこの場が終わったら、今日はぐっすり眠れると思うのですけれども、非常に緊張しているのです。やはり私は在宅を支えるのに、最後のまとめのところで、訪問看護師がというように言いましたけれども、現状では、やはり看護と介護の境目というのは非常にアバウトなものではっきりしたものがないので、現状はやはりわれわれ看護師が一番、その役割に適しているのではないかなと、現状ではそのように思います。

 ただ、やはり在宅での生活というのはあくまでも生活ですので、そのような意味では、介護の方がやはり主体的になってやっていく方向に流れていけばいいのかなというように思っています。以上です。

伊藤

 現在、病院、診療所、老健の訪問リハ事業所という形で、訪問リハを提供していますけれども、地域になかなか溶け込んでいかない事業所が多いのです。やはり医療のほうに入っていってしまって、先ほど言ったように、きちんとケアカンファレンスに出る体制をすべての事業所がきちんと作るということが非常に重要です。

 初台リハビリテーション病院に、訪問リハ事業所があります。そこの所長さんは看護師さんです。かつて訪問看護ステーションがあって、そこが訪問リハ事業所に移行してしまったものですから、そこの所長さんだった看護師さんををそのまま残しているのです。その彼女はすべてのコーディネータ役をやっていますので、ケアカンファレンスにも出ていきますし、新患の訪問は必ず彼女が行く。ケアの視点をきちんと持ったうえで、訪問リハに行ってきなさいという、そのようなスタイルで事業展開をしています。

 これは非常にいいです。看護の視点が常に入っているというところが、非常に私はいいなと思っています。ぜひ、訪問リハステーションの制度が立ち上がっていく中で、そのような地域の連携をしっかりやるのだというシステムもちゃんと作れと、それが条件だというような形で制度が出てきてもいいのではないかというように思っています。

斎藤

 看護とリハですね。2.5人以上とか、つまらないことを言わないで、一緒にやってもいいのだと思います。うちも一緒になってから、いいです。何人かいるのでわざと言いましたが、すごく仲良くやっているから、やはりいいなと思うのです。

曽根

 今日、皆さんの発表を伺っていて、そのかたが生活をしている場で必要な支援を提供して、その人の生活を支えていくという考え方が、どの方の発表でも一貫されていて、やはりそのような考え方がすごく大事なことだということを改めて感じました。

 もう一つは制度のことでいうと、年齢で、同じ介護や支援が必要な人のはずなのに、64歳以下と65歳以上で分かれてしまっているという、このことを、やはり自分は解消していくべきではないかというように思うのですね。だからそのようなことも含めて、やはり分けないで統合していくという方向を作っていけたらいいなということを、改めて思いました。今日はありがとうございました。

坂梨

 たくさん発言させていただく機会をいただきましたので、もう言い尽くしてしまったのですけれども、先ほどの最後、スライドの中で言いましたけれども、一つだけあるとすれば、やはり介護、医療の両方とも迅速に動かなければいけないと思うのです。常に迅速に動かなければいけないと思います。

 例えば、最近ようやく癌患者の介護保険の認定については迅速にするというような形になってきつつありますけれども、パッとやらなければいけないことがいっぱいあるのです。私は医療関係で、肺炎になったらすぐ治療しなければいけない。心不全はすぐ治療しなければ生死に関わる、入退院は迅速でなければいけないという感覚があるのですけれども、批判を恐れず言うのであれば、恐らく、福祉関係のかたは、医療関係者よりも多少スピード感が異なるのではと思うことがあります。

 だから、できれば医者に同行したりしながら、迅速にすぐ生活に困る、すぐ医療に困るというような、「すぐ」という感覚をぜひ共有できればなと、特に、役場のかたについても思うことがあります。

齊藤

 ありがとうございました。時間が迫ってきましたが、とてもまとめられるようなお話ではありませんけれども、きっと共有できたことは幾つかあるのではないかと思います。

 最後に、話の中で制度のことも本当は話さなければいけなかったのかもしれませんが、今日は時間がありませんでした。これは財源の問題もあるし、高齢者のことと障害者のことを一緒の制度にするメリット、デメリットもありますし、一概には言えないところもあるでしょう。その辺を国主導でいくのが本当にいいのか、地域ごとにもしやれることができたら、簡単に言えば、介護施設の隣に住んでいる人が具合が悪くて、「でも、あんたはここに通ってくる人じゃないから向こうに行きなさい」というような国であってほしくないですね。「まあ、いいじゃない、来れば」というような、そこら辺の制度と制度の相乗りがうまくできるようにするには、それは国レベルではきっと無理だろうと私は思うのです。やはり地域レベルでそのようなことができるようになってくればいいなというように思います。

 それから、今日は話が出てこなかったのですけれども、通所系のサービス、通所介護とか通所リハとかが今あるわけです。恐らく、私は今度の厚生労働省の介護保険部会の委員になったということは、私はどこかで話すと思うのですが、やはり再編成が必要ではないかということを言おうと思っています。その細かい内容についてはお話しませんが、さっきもちょっと言ったように、重い方、かなり重い要介護度4、5の人たちが在宅にどんどん帰っているのですね。そのような人たちがどのような結果になっているかというと、訪問のサービスを受けているからいいやとなっているのですが、結果的には閉じこもりを作っているのですね。家族もそこから出られない。ショートステイもそれだけ重いと受けないとか、そのような変な話になってきています。やはり重いかたも見る通所系のサービスがどんどん出てこないといけません。オーストラリアなどはベッドごと、人工呼吸器をつけたままベッドごと病院に来て、1日暮らして夜帰るなどというサービスもあるぐらいです。介護予防で軽い方々に対してどう対応しようかということばかりがあって、介護予防という概念はやはり重いかたも、少しでもこれ以上重くならないように、あるいは少しでも軽くなるようにという取り組みを本気で始めていかないと、在宅のサービスが幾らあっても足りない。それを後方で支援するのが病院である、医療であるというようになってくるといいなと、常々思っています。

 介護は日常ですが、医療は非日常でなくてはいけないというように、私は思います。ぜひ、そのように医療がうまく介護をサポートできるような体制作りに、恐らく老人の専門医療を考える会は、会長だけが言っているのではなくて、皆そう思っていると思いますので、またご支援をいただいて、どこかでそのようなことをまとめていきたいと思っています。いろいろなご意見を皆さんがたからもいただきたいと思います。本日はどうもありがとうございました。皆さんに拍手をお願いします。どうもありがとうございました。

 
閉会挨拶
桑名 斉 (老人の専門医療を考える会副会長)
大川

 3時間にわたり、ご清聴ありがとうございます。ちょっとアナウンスさせていただきたいのですけれども、次回は11月27日土曜日です。第34回の医療と介護の絆についてシンポジウムを行いたいと思いますので、ぜひお気に留めてください。

 最後に、当会副会長の桑名斉より、終わりのあいさつをお願いいたします。

桑名

 長時間にわたりまして、お疲れ様でございました。先ほどいろいろな話題が出まして、一番ハッと思い当たったことは、介護保険制度ができるときに、ケアマネジャーの立場というのをどのようにしようかといって、現在のかたちになってしまったのですけれども、本来でしたら、看護師、保健師がケアマネジャーとなって、地域のケアをサポートする。そのようになる予定だったのですね。それが医師をはじめとして、みんながやると言って手を挙げてしまったもので、それが一つの混乱の元になったのではないかと思って、先ほどの演者のお話を聞きながら、つくづく反省しなければいけないのではないかと思いました。

 それからもう一つはやはり、年齢で区切ったがために、若年の難病のかたが地域で非常に困っている。実は昨年東京都で難病のデイサービスのモデル事業をやったのです。2年間やって、例えばALSで人工呼吸器をつけて、ベッドのままデイサービスに来て、医療部分はうちの訪問看護ステーションから看護師がそばについて、大丈夫だよということでデイサービスのお風呂に入ってもらったりして、非常に好評だったのです。しかしながら、お金がかかるという理由で、2年間でやめてしまったのですね。やはりそのような地域の生活を支えるということが、介護の一番の主眼点なわけで、そこを支えるのが、医療者の役割だと思います。そのような視点で、この会は活動を続けていくべきだと思っています。

 閉会のあいさつにしては余計なことも言ってしまったかもしれませんが、どうも本日はありがとうございました。

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老人の専門医療を考える会 JAPAN ASSOCIATION FOR IMPROVING GERIATRIC MEDICINE