アンテナ
|
老人医療NEWS第50号 |
介護力強化病院や療養型病床群は医療保険でも介護保険でもどちらでも良いことになって、介護保険制度はスタートした。そもそも、老人病棟を療養型病床群に円滑に以降してその全てを介護保険適用するというのが厚生省の原案であった。
しかし、療養型への移行が急激に増加し、どうみても19万という予想に反して、30万床がなだれこんできそうになると「医療保険は6か月まで」といい、その後「どちらでもよい」ということになった。平成12年の老人診療報酬は、このことを受けて、6か月までの入院であれば医療保険が得、6か月以上でも要介護3以下では医療保険が得という内容になってしまった。
いろいろなことがあったのは確かであるが、その結果どのようなことがあったのか、全国の病院を見学したり、電話で情報交換した。
病院の全ての病床を医療保険のままとした、介護と医療を半々としてみた。僅かだけを医療保険とし、残りの全てを介護保険にしたなどの意見であった。中には「要介護4と5の患者さんで6ヶ月以上だけを計算し、その分だけ介護保険にした」と明確に答えてくれる病院もあった。
実際は、各病院とも、手さぐりの状態での決断であったが、6ヶ月以上、要介護4と5だけの病棟というのは、収益計算上は当然なのかどうか、疑問があった。これを45(よんご)病棟と呼んでおこう。
では、見学してみようということになった。懸命にケアしている病院もあった。しかし、20年前の老人病院のように、午前11時でも、午後4時でも、患者の8割はベットの上だ。療養環境が改善され、比較的広い4人室の4人ともが寝たきりであると、なぜかものがなしい。
よんご病棟は、介護保険と老人診療報酬によって決定されたようなものだが、ここまで収益性を追及する病院が出てきたのかと、改めて関心するとともに、それは老人の専門医療の確立とはほど遠いように思う。
国の要介護認定は、推定標準ケア時間というものさしで、要介護度を分類したという。仮にそれが正しいのであれば、要介護2の人の2倍のケア時間が要介護5の人では必要であることになる。もう一歩進めて考えれば、要介護1と2ばかりの病棟とよんご病棟では、2倍のケア時間の差が生じるのであろう。それを、同一の看護職と介護職でケアしているというのであれば、1と2の病棟では、職員がひまであるか、さもなければ手厚いケアが行われ、よんご病棟では、職員がフルに労働しているか、必要なケアを受けられないでいることになってしまうのではないであろうか。
結局、よんご病棟は、寝たきりばかりで、リハビリテーションやアクティベーション、あるいは基本的な排せつ、食事、入浴、身の辺りの世話などが、著しく低下し、20年前の寝かせきり病棟に逆もどりしてしまうのであろう。
このことを我々はどのように考えるのであろうか。老人の専門医療が確立した上で、介護保険制度が展開したのであればまだしも、その途上で見きり発車した介護保険制度によって、一番大切な高齢者のケアが低下することについて、どのように考えても賛成できない。
ただし、要介護度が高い病棟の全てが、このような状態であるわけではないことも事実である。つまり、少ない人数で、知恵と工夫と科学性でケアを提供すれば、全く不可能ではないということである。このようなことを実践できているのは、患者さんあたり介護職員数が1対3の施設である。介護病棟の悲劇が、だれの目にも明らかになる前に、介護職員の多い施設の必要性と、ケアの科学性を証明したいと思う。
(12/9)