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老人病院機能評価
F  構造、設備、器具に関する項目

1. 各種杖、歩行器、自助具など、ADL向上のための器具が十分備えられていますか 。

a.
十分な種類と数がそろっている
4点
b.
だいたいそろっている
3点
c.
必要最小限そろっている
2点
d.
不十分である
0点

・職員意識調査によりチェックする


2. 車椅子や歩行器が利用可能な構造になっていますか 。


a.
院内どこでもそうなっている
4点
b.
一部なっている
2点
c.
あまり配慮されていない
0点

・院内の構造をチェックする


3. 病棟の浴室は障害者にとって適切ですか。


a.
障害者にとって利用しやすい浴室が整備されており、浴槽は自宅復帰を目的として一般家庭用の浴槽を置き、浴槽の数も十分である。
7点
b.
障害者にとって利用しやすい浴室が整備されているが、浴槽の数が不十分である。
4点
c.
各病棟毎に浴室は整備されているが、障害者用とはいえない。
2点
d.
各病棟ごとには浴室が整備されていない。
0点

・病棟単位でチェックする


4. 廊下、階段、トイレ、浴室等に手すりが設置されていますか。


a.
全てについている
4点
b.
8割以上についている
2点
c.
8割未満、または不十分である
0点

5. トイレが容易に使用できるよう、配慮がされていますか。(配置場所や数において)


a.

各部屋についている

4点
b.

2〜3部屋に1か所ついている

3点
c.
4〜5部屋に1か所ついている
2点
d.
1病棟に1か所ついている
0点

6. 障害者でも容易に使用できるトイレ、洗面設備が設置されていますか。


a.
十分についている
4点
b.
ほぼついている
3点
c.
不十分である
2点
d.
ついていない
0点

・障害者用トイレは少なくとも1病棟に、平均2か所以上あれば(a)、1か所以上あれば (b)、1か所未満は(c)とする


7. ベッドの両側に車椅子の入るスペースが確保されていますか。


a.
全ベッドともそうなっている
7点
b.
大部分のベッドでそうなっている
4点
c.
半分程度のベッドでそうなっている
2点
d.
一部のベッドでそうなっている
0点

・車椅子の入るスペースとは片側、少なくとも1m以上のスペースが得られていることを指す


8. 患者の状態に応じたベッド(ギャッチ付き、高低調節付き等)を使用していますか 。


a.
全部に両機能がある
4点
b.
全部にどちらかの機能がある
3点
c.
半分にどちらかの機能がある
2点
d.
それ以外
0点

9. 患者の状態に応じて、エアーマット、体位交換マット、等が用意されていますか 。


a.
必要な際にはいつでも使用できる数がそろっている
4点
b.
だいたいそろっている
3点
c.
やりくりをして使っている
2点
d.
明らかに不十分である、または患者家族に買わせている
0点

・職員意識調査によりチェックする


10.ナースコールが各病室、各ベッドに設置されていますか。


a.
全ベッドにつけられ機能している
4点
b.
全ベッドにつけられているが一部使えない状態にある
2点
c.
ほとんど使えない状態にある
0点

・きちんと鳴るかどうかもチェックしてみる


11.気分不快時に対応できるよう、緊急連絡装置がトイレや浴室に設置されていますか。


a.
全部に使いやすいものが設置されている
4点
b.
全部についているが使いにくいところがある
3点
c.
一部についている
2点
d.
ついていない
0点

・操作性をチェックする


(F−1〜11 解説)
  加齢により、あるいは疾病や障害によって身体的、精神的機能が低下した老人を対象とする老人病院の構造、設備、器具は、まず、患者の苦痛、不安を軽減し、快適性・安全性を高めると同時に、残存能力の活用により自立を助ける視点から整備されるべきである。自立度が高まることは、患者にとっての満足を生み、職員の労力も結果的には軽減することでもある。看護、介護の人手の充実なくして、QOLを高めることはできないとしても、構造、設備、器具の整備がなければ、QOLが高まらないのも事実である。


12. 酸素吸入器、吸引器は十分に備えられていますか。


a.
各病室に設置されている
4点
b.
半数以上に設置されている
3点
c.
一部の病室に設置されている
2点
d.
設置されていない
0点

・配管のみの場合は、1ランク下げる
・移動式の吸引器等が十分備えられていれば1ランク上げる


(F−12 解説)
  老人病院の場合、突然の心停止や血圧低下等の急変、あるいは誤嚥による窒息等も稀ではない。そして、その対応は一瞬を争うことがあるゆえに、酸素吸入器、吸引器はいつも手近に欲しい。使用頻度としては吸引器の方が高い。


13. 冷暖房などの空調設備が、全館に設備されていますか。


a.
冷暖房が必要なときは、いつでも各部屋別でコントロールできる
4点
b.
大部分で快適な空調が可能である
3点
c.
一部で快適な空調が可能である
2点
d.
十分とはいえない
0点

(F−13 解説)
  高齢者では体温調節機能が低下しているため、外気温の変化にうまく対応できない例が珍しくない。
また、快適な空調は患者の活動性を高めることができる。


14. 食堂やデイスペースなどが設備されていますか。患者一人当たりに確保されているスペースは、


a.
1.5u以上
10点
b.
1.0u以上1.5u未満
4点
c.
0.5u以上1.0u未満
2点
d.
0.5u未満
0点

・食堂、デイスペースの使用を妨げる物品の専有する面積は除いた部分で計算する


(F−14 解説)
  在来型のわが国の病院ではベッドから離れても過ごす空間がないため、患者は終日ベッド上で横臥し、そのうち自力では動けなくなる例が多かった。食堂やロビー等の形で空間が確保されなければ、人手をかけても寝たきり起こしが患者の苦痛を増すだけということにもなりかねない。


15. 医療相談室が設備されていますか。


a.
独立した相談室がある
3点
b.
事務兼用の相談室がある
2点
c.
特に設けていない
0点

(F−15 解説)
D−5 解説参照


16.患者が家族とくつろげる場所は確保されていますか。


a.
独立した部屋がある
4点
b.
独立したコーナーがある
3点
c.
設けているが十分とはいえない
2点
d.
特に設けていない
0点

・部屋またはコーナーの大きさは、一か所につき少なくとも5u以上であること


(F−16 解説)
  老人病院の場合、患者と家族が一緒に過ごせる場所の確保にはもっと努力が払われてよいし、満足度を高めるのにきわめて効果的である。面会に来ても、ベッドの脇や、会話の内容がすべてもれてしまうような場所で過ごすのではよい思い出を残すことは難しい。持参した食べ物が簡単に温められ、遠慮なく楽しめるような空間と雰囲気があるとよい。


17.スプリンクラーは設置されていますか。


a.
全病棟にある
4点
b.
半分以上の病棟にある
3点
c.
一部の病棟にある
2点
d.
設置されていない
0点

(F−17 解説)
  自力による移動能力の低下している高齢者の著しく多い施設では、災害時、特に火災時の対応は困難をきわめる。ベランダやスロープの設置もさることながら、実際にはスプリンクラーによる初期消火しか効果はないと思われる。(D−12解説参照)


18.霊安室は次の条件を備えていますか。


イ. 10u以上の大きさ
ロ. 清潔で落ちついた雰囲気
ハ. 十分な空調と換気
ニ. 外部から出入りしやすい位置
ホ. 外線の通じる電話の設置


a.
5点とも備わっている
4点
b.
4点備わっている
3点
c.
3点以下である
2点
d.
霊安室は設けていない
0点

(F−18 解説)
老人病院では患者の大部分の人は時期のずれはあっても、死が予測されている。安らかな死の延長として霊安室のイメージもきわめて大切である。入院中の対応はよかったが、霊安室がみじめで病院への印象が悪くなるケースも少なくない。霊安室の整備は死者への、そして家族へのサービスの総決算である。


・個室で死を迎え、そのままお見送りする場合は、その個室の状況について評価する


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