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老人病院機能評価
C 患者、家族の満足と安心に関する項目

1.院内の清潔保持、整理整頓はなされていますか 。

a.
清潔であり、整理整頓されきわめて良い印象を与える
7点
b.
清潔である
4点
c.
放置された物品や汚れが気になることがある
2点
d.
雑然とし、また清潔とはいいがたい
0点

・一時的といえども病院内、通路や廊下等に放置あるいは置いてある物品の状況も勘案する
・床のみならず、壁や天井棚の上の清掃状況等もチェックする


(C−1 解説)
 医療職の間では、清潔、不潔への関心は非常に強いにもかかわらず、病院の施設全体となると、他のサービス業の施設と比べて、清潔さ、整理、整頓の度合いで格段に劣る場合が多い。清潔の保持、整理、整頓は単に病院への信頼を生むばかりでなく、中に働く者の緊張感と誇りも生む。


2.院内の悪臭、異臭、不快臭の除去につとめていますか 。


a.
常時不快臭や芳香剤の臭いは全くないといってよい
10点
b.
オムツ交換時を除けばほとんど臭いが気にならない
4点
c.
オムツ交換時を除き時として気になることがある
2点
d.
常時、臭いが気になる(芳香剤を含む)
0点

・外部から建物内に入った際の異臭、不快臭の状況で決める。芳香剤も臭いとしてカウントする


(C−2 解説)
 老人病院の臭いの程度はその病院の看護、介護の水準の集大成といっても過言ではない。特有の悪臭、不快臭を減らすには、まず、@オムツ使用者を減らす、A失禁があったらすぐに対応する、B頻回の入浴や清拭を行う、C口腔内を清潔に保つ、D衣類やリネンの汚れにすぐ対応する、Eトイレや入浴施設の清掃、等発生源への対応をするとともに、発生した悪臭が周囲にしみこむ前に強制的に換気する、消臭剤を使用する、等の対応も不可欠である。芳香剤による臭いは一見よさそうに思えるが、悪臭との混合によりさらに不快感が増すこともあり、少なくとも悪臭のもとを断つという根本的な努力を怠らせることになる 。


3.夕食の時間は早すぎませんか。現在の開始時間は、


a.
午後6時以降
7点
b.
午後5時30分〜6時
4点
c.
午後5時〜5時30分
2点
d.
午後5時以前
0点

・配膳の時間もチェックする。食事開始表示時間より、15分以上早い場合には、その時間をもって判定する


4.食事の質の向上に向けて、@適温食、A選択メニュー、B良質で多様な食器使用、が実施されていますか。


a.
3点とも実施されている
7点
b.
2点実施されている
4点
c.
1点実施されている
2点
d.
どれも実施していない
0点

・適温食は、保温食器の使用がなくても病棟等での盛り付けがなされていればよい
・良質で多様な食器とは、割れにくさ、洗浄のしやすさを中心に選ばれたという印象のないもの


(C−3・4 解説)
 病院食への関心は高まっているものの、依然として評判は芳しくない。老人病院についていえば、その批判の主なものは、@夕食時間が早すぎる、Aまずい、Bさめている、C食事をせかせる、D形のないものをだす、E食器が貧弱、Fメニューが画一的である、等があげられる。食事こそ入院患者の最大の楽しみであり、残された人生の時間が短い高齢者となれば、一食一食の重みはさらに増してくる。老人病院の場合、食事の介助に多くの人手を確保せねばならぬため、夕食の時間を遅くするにはかなりの困難がともなうが、より日常生活に近づける努力という視点にたてば、夕食は6時以降ということになる。
 また、従来は割れにくい、洗いやすい、コストが安い等、管理する側の都合を優先した食器が多用される傾向があったが、香り高い生活の実現のためには食器への配慮は欠かせない。
なお、適温食は、保温トレイの使用または病棟盛りつけの実施で可能となり、選択メニューは毎日最低一食、副食について選択できることが条件となる 。


5.患者の自立度、QOLに配慮した食事援助ができていますか。


イ.食事に関するケアプランの実施・評価がされている
ロ. 個々に合わせた食事形態が提供できている
ハ. 食事時間の制限がない
ニ. 個々に適した食器類が使用されている

a.
4点とも実施されている
4点
b.
3点が実施されている
3点
c.
2点のみ実施されている
2点
d.
1点のみ実施、あるいは実施されていない
0点

(C−5 解説)
 この項目は看護、介護の姿勢を問うものである。老人患者の側は心身の老化にともない、生活上の動作は緩徐となり、これに疾病や障害が加わればこの傾向はさらに顕著となる。しかるに、看護、介護にあたる職員の側は、人手不足の名残もあって、より短時間に一つの作業を済ませようとする傾向があり、結果としては患者の動作をせきたてたり、必要以上に手をかけることで時間を短縮させようとする。しかし、老人病院の役割は、患者に残された能力を最大限に引き出し、それを活用することで自立度を高め、QOLを向上することにある。となれば、そのような対応が具体化されるべきである。
 食事についても、不自由な手を駆使してでも何とか自分で食べられるように、できるだけゆっくり時間をかけるべきであり、少なくとも時間を短縮するために不必要な介助をするようなことがあってはならない。また、食事の内容についても、歯がないためにうまく噛めない、呑み込みが下手である、等の理由はあるにしても、きざみ食やおかゆの多用は食事介助をしやすい、短時間で終わらせることができる等、介助する側の都合である部分も否定できない。普段、おかゆやきざみ食の老人患者が、家族の持参したお寿司やお弁当を苦もなく食べる光景もよく見受けられるからである。


6.入院前の病院内見学は自由にできますか。


a.
いつでも全病棟を見学できる
4点
b.
いつでも受け入れ先となる病棟を見学できる
2点
c.
病棟の見学に制限をつけることがある
0点

・ 見学受け入れの時間制限等についてもチェックし、判定する


(C−6 解説)
  できることなら住みなれた地で、自分たちで親や肉親の老いを介護したい気持ちは十分にあっても、実際にはお手上げとなって老人病院に入院させるケースが大部分であるが、その際その入院先の状況をできるだけ自分の目で見て確かめたいというのが、本人や家族の本音であろう。しかしながら、患者のプライバシー保護や、作業の都合等を理由に、病室内はおろか病棟内すら見せようとしない病院があることも現実である。本人や家族の期待と現実の姿とのギャップを埋める意味から、また、外部の見学者の目で見てもらうことで、職員にも緊張と意欲をかきたてる意味からも、入院前の十分な説明と見学のもと、できるだけ本人や家族の同意を得るよう心がけるべきである。


7.面会促進のため家族の面会時間に配慮していますか。


a.
原則として面会時間の制限はない
4点
b.
1日12時間以上可能である
3点
c.
1日8〜12時間可能である
2点
d.
1日8時間以下に限られている
0点

8.面会場所の制限はありますか。


a.
面会者の病室立入りは特別の理由のない限り自由である
4点
b.
面会者の病室内立入りは業務に支障のない限り自由である
3点
c.
面会前に病棟の許可が必要であったり、制限されることがある
2点
d.
他の患者のプライバシー保護等のため面会は病室外に限られている
0点

・ C−7・8
・制限の程度についてチェックし、判定する


9.1日の面会者は平均すると入院患者の何%ありますか。


特a. 30%以上
7点
a.
20%以上
4点
b.
10%以上20%未満
3点
c.
5%以上10%未満
2点
d.
5%未満
0点

・各病棟に面会者数をきき、また、印象も勘案して決める


(C−7〜9 解説)
 家族や知人の面会は、老人患者にとって最大の楽しみであると同時に、看護、介護にあたる職員にとっても、家族とのコミュニケーションを通じての対応の改善、あるいは良き対応への動機づけとしての意味は大きい。したがって、面会者の増加に向けて、病院側は時間制限の撤廃や、繰り返し来たくなるような雰囲気づくりを含めて最大限の便宜を図るべきであり、また、理由のいかんを問わず家族の安心を高めるためにも、面会場所の制限等もするべきではない。面会者の多さは病院の質の良さの指標の一つと考えてもよい。


10.診療や対応について患者や家族へ十分な説明を行い、同意を得ていますか。


a.

病状の変化がなくとも、少なくとも1ヶ月に1回は主治医から患者
・家族に対して生活全般について説明し、同意を得ている

4点
b.
診療上のことについてのみ行っている
3点
c.
重大な変化についてのみ行っている
2点
d.
問い合わせがあれば行っている
0点

・職員意識調査によりチェックする


(C−10 解説)
 老人病院の役割は、老人患者のみならずその家族も含めたケアをすることにある。なぜなら、老人医療の現場では単に疾病や障害に対してさえ医学的判断のみでは不十分であり、対応も家族の協力なしには考えられないからである。老人本人の意志や判断能力が低下している際には、利益の代弁者としての家族の役割はますます重要になってくる。医療や対応についてもたえず、本人や家族が最善の選択ができるよう、専門家の良心にもとづいて助言をし、同意を得るようにしなければならない。しかしながら、いくら同意が得られたとしても、結果の悪い時の責任は病院側にあるという覚悟をもつ必要がある。


11.主治医や部署の責任者は、患者、家族にわかりやすく示されていますか。


a.
誰がみてもわかりやすくなっている
3点
b.
慣れた人にはわかるようになっている
2点
c.
聞けばわかるようになっている
0点

12.職員名は患者や家族にわかりやすくなっていますか。


a.
全員が名札をつけ、各部署ごとに顔写真と名前が貼り出されている
4点
b.
全員が名札を見やすい形でつけている
3点
c.
名札をつけているが見にくい
2点
d.
名札をつけていない
0点

C−11・12
・患者や家族からみてのわかりやすさで判定し、表示の小さいもの、わかりにくいもの等はランクを下げる


(C−11・12 解説)
  利用者に対して担当の責任者を明らかにし、また、職員名をできるだけわかりやすく示すことは、サービス業の基本である。この一見単純なことが各職員の自覚を促し、志気を高めるのに大きな役割を果たし、利用者には大きな安心を与える。


13.退院後の満足度調査は実施していますか。


イ.全員に対して行っている
ロ.回収率は60%を超えている
ハ.結果が集計され、院内で定期的に検討されている
ニ.結果が全職員に公表されている
ホ.院外にも公表されている


特a. 5点とも実施されている

7点

a.
4点実施されている
4点
b.
3点実施されている
3点
c.
2点実施されている
2点
d.
1点のみ実施、またはどれも実施されていない
0点

(C−13 解説)
 退院後のアンケートは今後の対応を改善する上で、非常に多くの情報をもたらしてくれる。入院中であれば、患者や家族は不満や意見があってもなかなか本音は言いにくい。しかし、退院、特に死亡退院等であれば対等の立場で答えて下さる場合が多い。この際、回答率、回収率も一つの大きな指標になる。高回答率は病院への評価の一つと考えてよい。回答の内容を生かせるかどうかで病院の将来が決まる。


14.四季感の演出、生活の活性化のためのイベントを実施していますか。


a.
専従の担当者をおき月に1回以上行っている
4点
b.
専従の担当者をおき季節ごとに行っている
3点
c.
担当者はおいていないが行っている
2点
d.
行っているとはいえない
0点

・専従の担当者とは、イベント実施時間内では看護・介護の業務に属さない過剰配置された人員のことである。


(C−14 解説)
 入院生活がきめられた日課の単なる反復であり、周囲に自然が乏しく外界とのつながりもないとなれば、生きる意欲を持ち続けることはおろか、残された機能を維持することすら至難の技であろう。残存能力を引きだし、活用するためには、まず、患者本人の周囲への関心を呼び戻し、生きる意欲を刺激することが肝要である。その手段として、四季折々が実感できるような仕組みや、より本人の興味をそそるようなイベントが有効である。しかし、もっぱら企画する側の嗜好や経験にもとづく企画、あまりにも稚拙な内容のものは、単なる苦痛の時を与えるだけという認識も必要であろう。


15.患者、家族の意見や要望は運営に反映されていますか。


a.

あらゆる手段(定期的アンケート、窓口、投書箱等)で発掘し、文書による回答や、改善の報告などを行っている

4点
b.
意見、要望は全て院長に伝えられることになっている
3点
c.
相談窓口や投書箱を設置している
2点
d.
特別の仕組みはない
0点

・アンケートの実施記録、投書箱の設置状況、窓口の表示等、また、その後の対応の記録等をチェックする


(C−15 解説)
 利用者から寄せられる意見や要望にいかに的確に対応するかこそが、サービス業の将来を決するといっても過言ではない。医療界は、従来はともすると『施してやる』式の発想に立った行動が多かったこともあり、今もって患者や家族の利用者のニーズを発掘することに努力が足りず、また、意見、要望が寄せられたとしても、その声が現場だけで止まったり、種々の理由をつけて組織全体としての対応に高められないことが多い。かくして、利用者は意見や要望を寄せることの無駄を知り、病院は現状に安住する形でニーズから遊離し、社会での地位を低下させることとなる。


16.患者情報について守秘義務は守られていますか。


a.

外部に対してはもちろん、職場の同僚に対しても職務上必要な場合を除き情報がもれることはない

3点
b.
職務以外の場で同僚に対して話題にのぼることがある
2点
c.
外部にもれることがある
0点

・職員意識調査によりチェックする


(C−16 解説)
 守秘義務とは業務の遂行上、他人の個別情報にふれざるを得ない者に課せられている最低の義務である。これがいかに厳密になされるかで、その組織への信頼感が醸成され、より重要な情報がもたらされ、結果としてより効果的な業務遂行が可能となる、といった脈絡のなかにある。どんな形にせよ、業務上知り得た情報は業務以外に使用してはならないと教育し、監視すべきである。


17.本人・家族への費用請求はわかりやすい形でなされていますか。


a.

毎回、個別明細をつけて行っている

4点
b.
入院時に説明し、大きな項目毎に行っている
3点
c.
入院時に説明し、まとめた金額のみで行っている
2点
d.
希望があれば説明している
0点

・請求明細書の実物を入院患者の10%についてチェックし、判定する


(C−17 解説)
  費用請求にあたっては、金額の多寡よりもその妥当性や明朗性が問題となることが多い。たとえば、あらかじめ説明も受け納得している際には、1万円、10万円であっても不満を生じないが、その一方で、説明も受けず予想もしていなかった際には100円の請求でも不満のもとになる。さらに妥当性、明朗性に欠けるとなれば、たちまち思わぬトラブルに発展する。金銭上のトラブルは他のあらゆる努力を帳消しにすると知るべきである。


18.安らかな死に向けて、@十分な説明、A単なる延命のための処置の排除、B単なる重症室でない特別な部屋の確保、C家族の参加の奨励、が実施されていますか。


a.

すべて実施されている

7点
b.
3点が実施されている
4点
c.
2点が実施されている
2点
d.
1点しか実施されていない
0点

・職員意識調査によりチェックする


(C−18 解説)
 安らかな死とは、本人も残される家族も納得できる死であるが、その実践となるとなかなか議論のあるところである。ポイントとしては、@医師や看護師から医学的な経過や今後の見通し、回復の可能性が乏しいこと等を十分伝えること、A単なる延命のための治療行為や処置がなされてないこと、B家族が安心して一緒に過ごせる、あるいは自由に付き添っていられる落ちついた個室が確保されていること、C希望があれば家族が介護や処置に参加できる仕組みにあること、等があげられる。

 

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