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老人病院機能評価
A 運営の基本理念実践に関する項目

1.病院の運営方針浸透のため、次のことが実践されていますか。

イ.明文化されている。
ロ.職員に明示している。
ハ.職員が実践している。
ニ.利用者へ明示されている。
↓ 
イ.明文化→明文化されている文章は具体的な内容である
ロ.各部署に明示→しっかり目につくところに大きな字で貼り出されている
ハ.職員意識調査で60%以上が正しく回答
ニ.利用者に明示→しっかり目につく所に大きな字で貼り出されている

a.
4点とも実施している
7点
b.
明文化されているが、ロ、ハ、ニのうち行われていないことがある
4点
c.
明文化されているが、他のことは行われていない
2点
d.
明文化されていない
0点

(A−1 解説)
 組織がある目的を達成しようとするためには、目指すところ、価値観、手段等について、できるだけ具体的に文章化するとともに、その組織の構成員に十分理解させ、浸透させることが不可欠である。老人病院もその例外ではない。自らの役割、具体的方針、価値観等を明文化し、職員への浸透と同時に患者やその家族といった外部にもそれを伝えるべきである。それが自らを高い目標に駆り立てる力となり、患者や家族には大きな安心となる。

2.自らをサービス業と位置づけて、次のことが実践されていますか。


イ.サービス業であることが明文化されている
ロ.全職員が外来者に挨拶する
ハ.親切を旨とする対応が浸透している
ニ.物事を頼みやすい雰囲気がある

イ.職員向け広報等で確認
ロ.少なくとも3分の2以上の職員が会釈する。こちらからの挨拶等を無視する職員がいない
ハ.院内でトイレや公衆電話の場所を尋ねられた際の対応をみる
ニ.職員意識調査で60%以上がサービス業と位置づけている

a.
4点とも実施している
7点
b.
3点実施している
4点
c.
2点しか実施していない
2点
d.
自らをサービス業とは考えない職員がいる
0点

(A−2 解説)
 医師をはじめ医療専門職の間には、自分たちをサービス業と位置づけることに抵抗を示す者が少なくない。かつての『診てやる、治療してやる』等の施しとしての医療の名残りと考えられるが、医療は自分たちのもつ専門知識、技術を駆使して、患者や社会に満足を与えて収入を得るという形態、あるいは、患者や社会の幸福に奉仕するという精神においても、まさにサービス業である。このことをつねに念頭においた姿勢、対応が重要である。

3.高齢者の残存機能を活かす対応をしていますか。


a.
入院後ADLが明らかに改善する患者が多い
7点
b.
入院後ADLが改善する患者が多い
4点
c.
入院後ADLが改善する患者が少しはいる
2点
d.
入院後はADLが横這いの、あるいは低下する患者が多い
0点

・入院時、入院後定期的にADLの状態チェックがなされていることが望ましい
・なされていない場合は、印象点から1ランクさげる

(A−3 解説)
 老人病院に期待される機能の一つは、疾病や障害の管理を必要とする、いわゆるリスクの高い老人の残存機能を最大限に引きだし活用することで、自立度を高めることにある。したがって、構造設備から医療、看護、介護、リハビリのあり方に至るまで、つねにこの目的を念頭においたものであることが望ましい 。

4. 入院生活上の制限や規制を減らす努力がなされていますか。


a.
生命上の危険がない限り、生活上の制限を加えていない
4点
b.
医学的な不利益のない限り、生活上の制限を加えていない
3点
c.
周囲への迷惑がない限り、生活上の制限を加えていない
2点
d.
安全第一を考えて対応している
0点

・面会時間
・食べものや嗜好品の持ち込み
・身のまわりのもの、衣類の持ち込み
・外泊、外出、散歩等、主として家族と行動を共にする状況に対する制限の有無、ならびにその程度をチェックする


(A−4 解説)
  かつては病院での入院生活は日常生活とくらべて不自由、不便が当然と考えられていたが、入院中といえどもより日常生活に近い生活を望むのは当然といえる。一方、病院側は今もって疾病や障害の管理に都合のよいような制限や規制を行い、入院患者に不便や不自由をおしつけている。老人とは残された人生の時間の短い人と理解するならば、少しでも快適な状況での生活の実現にむけて、病院側は努力すべきであろう。


5. 患者本人ならびに家族の納得できる死を迎えるための対応がなされていますか 。


a.

自分の親であったらそうしてもらいたい、と思えるような対応がなされており、患者家族から感謝されることがしばしばある

4点
b.

自院のもつ重要な機能と考え実践されているが、家族からの評価は今一歩である

3点
c.
病院のもつ重要な機能との認識はあるものの、実践は不十分である
2点
d.
病院であるからには延命を第一に考えるべきである
0点

・職員意識調査を参考にして判定する


(A−5 解説)
  わが国の従来の医療機関、特に病院では、死は単に忌み嫌うもの、医療サービスの対象外というとらえ方がなされてきたが、今や70歳以上の人のうち、その4分の3は病院で死ぬ時代である。なかでも、老人病院はリスクの高い高齢者をその主な対象とすることから、好むと好まざるとにかかわらず、この問題に取り組むことを余儀なくされるばかりでなく、むしろ、積極的に対応することが期待される。ある程度の高齢に達すれば、大部分の人が『安らかな死』を望んでいる。安らかな死とは、本人も家族も第三者も納得のいく死の形であるが、主体はあくまでも本人と家族であり、病院職員はその環境を整えるといった心構えが重要である。効果の期待できない医療行為で、人生の最後の時がいたずらに浪費されること等があってはならない。


6. 患者への対応は多職種が情報を提供し、連携、協力して関わるという思想にもとづいて行われていますか 。


イ.

少なくとも1ヶ月に1回は経過の概要が誰にも分かるように診療記録(カルテ)に記載されている 。
ロ. 診療記録(カルテ)は平易な日本語によって記載され、医療チームとしての記録を一元化する等の工夫をしている 。
ハ. 記載された情報をもとに全患者に対して少なくとも3ヶ月に1回は、多職種(医師、看護・介護職  員、リハビリスタッフ、栄養士、医療ソーシャルワーカー、薬剤師等)討議のうえで対応が決定され、実践されている 。

a.
3点とも実施されている
4点
b.
2点が実施されている
3点
c.
1点のみ実施されている
2点
d.
どれも実施されていない
0点

・診療記録の内容、各職種間の情報交換、意志統一の方法、手段について具体的にきく


(A−6 解説)
 これも老人医療に限ったことではないが、特に老人の場合には、医師、看護師のみならず、介護、リハビリ、医療ソーシャルワーカー、栄養士、薬剤師等、多数の職種が同時に関わり、同じ方針で臨むいわゆるチーム医療こそ、成果をあげるのに不可欠である。対応方針の検討、決定にあたっては、できるだけ多くの職種が参加し、共通の認識をもつことが重要である。
  その前提になるのは情報の共有であり、診療記録(カルテ)が医師等の特定の職種のものであってはならない。場合によっては患者、家族から求めがあった場合は開示することも考えられ、その視点からも的確な記載が必要となる。


7. 老人病院の機能が社会資源という自覚のもとに、有効的活用の視点から、@入院(継続)の可否、A医療適応の可否、B費用対効果、についての検討が行われていますか。


a.
3点とも定期的に、かつ委員会を設けて行われている
4点
b.
委員会を設けているが、定期的には検討されていない
3点
c.
3点とも院長の判断で行われる
2点
d.
そのような検討は特に行われていない
0点

・入退院について検討する場の設置状況、記録をチェックする


(A−7 解説)
  高齢社会の到来に際しては、いかに少ない社会資源の消費で、いかに多くの高齢者やその周辺の人々の満足を生み出せるかが課題である。老人病院もその重要な一端を担っている。老人病院は目先の利益追求に走ることなく、たえず社会資源の有効活用という視点に立って自らの役割を見直すべきである。

 
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